図書館のアウトローには苦情を言わなければいけない
人に静かな場所を一ヶ所あげてください、と聞くと、いったいどんな場所が出てくるでしょうか。
映画館、人のいない公園、夜の港など、いろいろあげられるでしょう。
もし、わたしにその質問が向けられたら、間違いなく「図書館」と答えます。
なぜなら図書館こそ、もっとも静けさが要求される場所だからです。言い換えれば、図書館は静かであることが絶対条件なのです。
したがって、もしこれを破る人がいれば、そうした人たちのことを、わたしは<図書館のアウトロー>と呼ぶことにしています。
とはいえ、アウトローと言われるだけに、それほどよく出くわすことはありません。
月に5~6回は図書館に通っていますが、こうした人たちに遭遇するのは、せいぜい3ヶ月に1度ぐらいではないでしょうか。
ところが、今週に限っては、そうした人たちが3人もいたのです。それも2回連続でした。
前述のように、わたしが図書館のアウトローと呼ぶのは、図書館の絶対条件である「静けさ」を破る人たちです。今週出会った3人がそうした人たちだったのです。
まず1回目は若いカップルでした。そのカップルは4人掛けのデスクに向かい合って座っていました。
わたしはそこから5メートルぐらい離れた一人がけの簡易デスクが付いたパイプ椅子に座っていました。
この椅子は座り心地がよいだけでなく、小さいとはいえデスクが付いていて、使い勝手がいいこともあって、いつも愛用しています。
長い間話し続けるカップルと、ムシャムシャとパンを食べる若い女性
その席でいつものように新刊コーナーで見つけた、ペーパーバックを読んでいました。
すると、しばらして、静かでなければならない館内なのに、どこからか人の会話の声が耳につきました。
でもすぐ終わるだろうと、最初はあまり気になりませんでした。ところが、会話はいつまでたっても終わらず、延々と続くのです。
どうやら若い男女の会話のようでした。それほど大きな声ではありませんが、静寂さに慣れた図書館では、小さな声でも気になるものなのです。それが長く続くとなると、なおさらです。
それでも5分間ぐらいは、そのうち止めるだろうと、我慢していました。でも5分過ぎても止まないのです。
そして10分ぐらいたちました。男女の会話はまだ続いています。
そのときになって私はこの2人をアウトローと断定しました。そう思った以上放っておくことはできません。なぜならわたし以外の人も迷惑していると思ったからです。
そう思ったわたしはその二人のほうへ行きました。声から予想していたとおり、若いカップルでした。
わたしは 「ちょっと、やかましいですよ。話は止めてください」 とだけ言いました。
すると相手は、意外に素直で 「どうもすみません」 と言って、それ以来一言もしゃべらなくなりました。
案外物分りのいいアウトローでしたが、たぶん「館内でのおしゃべりはよくないこと」 だということを、知っていたのではないでしょうか。
2回目は私のすぐ隣に座っていた、これも若い女性です。
最初はどんな人が座っているか、まったく気にしていなかったのですが、しばらくすると、そちらの方向からなにか物を食べるような音が聞こえてくるのです。
それが気になったので、振り向いてみると、その女性は菓子パンをムシャムシャ食べているではないですか。
この人もまたアウトローです。なぜなら図書館での飲食は「絶対禁止」になっているからです。
そこでまた注意をしました。「ちょっとあなた、図書館で物を食べてはいけませんよ。規則ですから」
するとその人もまた 「すみません」 といって、食べかけのパンをバッグに入れていました。
立て続けに3人いたとはいえ、このたびのアウトローたちは、意外に素直でしたが、本人たちに図書館というところがどういう場所であるか、を知ってもらうためにも、やはり注意してよかったと思っています。