2026年9月14日月曜日

「日本人は勤勉」は本当なのか? 再掲載シリーズ No.28



初出:2020年11月8日     更新:2026年9月14日

                             


きん‐べん【勤勉】とは 

[名・形動]仕事や勉強などに、一生懸命に

励むこと。また、そのさま。

 

勤勉の英語は

Hard work, diligence

・・・・・・・・・・・・・


「日本人は勤勉 が疑わしい 勤勉なはずなの

になぜ・・・

「日本人は勤勉」よく耳にする言葉です。

でもこれは本当なのだろうか?と疑問に思うことが最近よくあります。 

それは勤勉なはずの日本人の行動の結果として、良くないことがこのところ多々現れてきているからです。 

具体的には次のような点です。

 

・勤勉で一生けんめい働くのに生産性が悪いのはなぜ?

生産性が悪い(低い)というのは、別の言い方をするとコスパが悪いことです。つまりかけた労力や費用に対して得られる効果が悪い(低い)ことを言います。

いま日本はこの生産性が諸外国に比べて著しく低いのです。確か世界で20位以下という位置にあり、あまりに低いのでランキングを目にするたびに気が滅入ってきます。

でもおかしくはないですが、日本人が勤勉なのなら仕事には真面目に一生懸命取り組むはずです。

何事もコツコツ真面目にやれば良い結果が得られるはずです。それなのに生産性が悪いというのは腑に落ちません。一体なぜなのでしょうか。

疑わしい点は2つあります。一つは本当に勤勉なのか、ということ、もう一つは勤勉は勤勉でも体だけよく動かしても頭を使わないことが多いのではないか、ということです。

その結果体の動かし方に無駄が多く効率的でないのでは、という疑問が湧くのです。

 


・勤勉な日本人になぜ他の国より祝日などの休みが多いの?

最近は土日の休み以外に2連休とか3連休がやたら多いとは思いませんか。カレンダーを見るまでもありませんが、毎月のように土日以外の連休があるではないですか。

一体いつの間に誰がこれほど休日を増やしたのでしょうか。

日本人は勤勉でよく働く国民と世界から認められています。それ故に高度急成長があったのです。

そんな勤勉な日本人には無用とも思えるこれほど多くの休日があって良いのでしょうか。

必要以上に多い休日は勤勉とは真逆の仕事や勉学に対して怠惰な気持ちを生むだけではないでしょうか。

 


・勤勉でよく働くのになぜ 他国に比べて給料が安いの?

日本人の給料は長い間ほとんど上がっていません。どれくらい長い間かといえば、バブル終焉以来およそ20年余りです。

そのため賃金の国際ランキングでも日本人の順位は下がる一方です。

これに関してつい最近実にショッキングなニュースが飛び込んできました。なんと韓国に年収で追い抜かれたのです。

韓国は何かにつけて日本をライバル視していて、追いつけ、追い越せと頑張ってきて、ついにその願望を達成したのです。

これを日本人は軽く見ていて、いくら韓国が頑張っても、まさか追い抜かれることはないだろう。と高をくくっていたのです。

でも下のランキングを見て現実を知り愕然とするのではないでしょうか。 

 



勤勉な日本人は過去のこと

勤勉な日本人なのに、生産性が悪い、休日が多い、給料が一向に上がらないなど、およそ勤勉という言葉とは相反する日本の現状を並べてきました。

これを踏まえて冷静に考えてみますと、果たして今でも日本人は勤勉なのだろうか?という疑問が強く湧いてきます。

確かに過去においてはそうだったかもしれません。それは戦争に負けた日本は勤勉でなければ国が立ち直らなかったからです。

それゆえに勤勉だけを全面に出して一生懸命働き続けることができたのです。

 

勤勉ははたして良いことか

ここで考えなければならないのは、勤勉なことは果たして良くて褒められるべきことなのか?という点です。

勤勉を英語でいうとHARD WORKになり、概念としての勤勉は「一生懸命励む」ことです。

でも一生懸命という言葉からは体をよく動かすことはイメージされても、頭をよく使う、という点は思い浮かびません。

要するに日本人のこれまでの勤勉さは、あまり頭を使わず、がむしゃらに体を動かすことだけに重きが置かれていたのではないでしょうか。

それ故に無駄が多く合理的な動き方ができなかったのでは、と思えるのです。

 

求められるのは勤勉より要領

若い頃営業の仕事をしていましたが、いつも頭にあったのは、いかにして短い時間で効果を上げるか、という点です。

つまり短い労働時間で大きな効果を出すことばかりを狙っていたのです。

そのためには頭を駆使して営業トークに磨きをかけるのです。

それが功を奏し、たいていは同僚より早い時間に目標とした成果が上がっていました。

要は量(労働時間)より質(優れた営業トーク)に重きをおいたのです。

つまり勤勉より要領を重視したのです。


2026年9月10日木曜日

T.Ohhira エンタメワールド(7)進次と和子の青春グラフィティ(9)

 

                        adobe stock  

 進次はやっと結論を出すと、もうお金に対する不安は消えており、またウキウキした気分を取り戻して、裸のイチョウ並木が続く歩道に沿って軽やかに歩いて行った。


 和子との待ち合わせ場所は梅田の阪急電車の駅の入口手前にある大きな本屋の前だった。

 四時少し前にそこへ来て、一応場所を確認して、まさか一時間も早くからそこへ佇むわけにも行かないと思い、とりあえず前の本屋へ入って立ち読みでもしようと、大阪でも屈指の規模を誇るその大きな本屋へと入っていった。


さいわい入口近くが雑誌コーナーになっており、その前に立つと、「悪いな立ち読みだけで」とは思って多少気おくれを感じたが、その割には次々と雑誌を手にとっていき、ペラペラとページをめくりながら、グラビアを中心に十冊近くも眺めていた。


けっきょく本屋では四十分ぐらい過ごし、待ち合わせ時間の二十分前になってそこを出た。


 先ほど下見をして、その場所で待とうと決めていたコンクリートの大きな柱の前まで戻ってきて辺りをグルッと見渡した。 

和子はまだ来てないだろうと思ったが、でも万一と思って見渡してみたのだ。


スペースが広く、場所的にも分かりやすいせいか、ここは若者を中心にした待ち合わせ場所の一大メッカになっていることもあってか、まだ五時前だと言うのに、辺りはすでに人であふれていた。


 土曜日ということを考えれば別段不思議ではなかったが、進次はここまでの人ごみを予想してはいなかった。


 ―和子さん分かるだろうか、この場所が。

「行ったことあります」とは言っていたけど、この人混みだと探すのも大変だろうし、だからといってこちらが動けばすれ違いが生じ、もっと大変だし― 


進次はそんなふうに考えて少し不安な面持ちを浮かべながら、ムンムンするほどの人混みに取り囲まれたコンクリートの柱の前からいくぶん離れ、その辺りでは比較的すいていると思われる場所を見つけ、そこで目を凝らして立っていた。


 ―一週間ぶりに彼女と会う。三宮で乗った帰りの電車の中で「次の土曜日ぐらいにまた会いたいな」と言ったとき、「えっほんと、嬉しいわ、またすぐ会えるなんて」彼女は目を輝かせて明るい声で応えてくれた。

あの様子だと気変わりするはずもないし、もう少し待つときっと急ぎ足でやってくるに違いない― 


 たぶん約束の時間の五分前くらいには来るだろうと、極めて常識的に考えていた進次だが、その時刻はおろか、時計が五時ちょうどを指したときになっても和子は現れず、進次は少しいらついてきた。


「最初の約束なんだし、五分や十分ぐらいは早く来てもよさそうなのになあ」 

そんな独り言を呟くと、進次はグルッと身体を回転させながら、さっきよりうんと先まで視線を延ばして、また目を凝らした。


身体を半回転くらいさせたとき、三〜四メートル離れたさっきとは別のコンクリートの柱の前に立っているピンク色のレザーコート姿の女が目に入ったとき、進次の視線がピタッと止まった。アッあの人ひょっとして和子さん?  

 背丈も髪型もよく似てる。 でも服装と全体の雰囲気がこの前とは随分違う。なんと言うか、この前はあんな派手さはなかったはずだ。

そう思って進次はいったん目をそらせたが、また振り返って女のほうを見た。


横向きになっていて、こちらには気づかないようだったが、前方を目を凝らすようにして眺めていて、誰かを待っているのは間違いないようだった。


 やはりあの人は和子さんかもしれない。一度しか会ってなく、まだそれほどよく顔を覚えているとは言えないんだし、そうだ、近くへ行ってよく確かめてみればいいんだ。

 進次は女のほうへ向かって十歩ほど歩いて、手前一メートルぐらい前で立ち止まると、「あのう、ひょっとしたあなたは」とまで言ったところで女がくるっと振り向いた。


 「進次さん、進次さんですね」

さっきまで目を凝らして真剣に前方を見つめていた女の表情がパッと明るい笑顔に変わり、まじまじと進次の顔にそそがれた。

 「わたし十分前から来てたのよ。でも人が凄く多いし、それにわたしの目も少し悪いし、キョロキョロ探し回るより一ヶ所でじっとしてたほうが良いと思って、ここで待ってたの。進次さんいま来たのですか?」 

そう聞かれて進次は一瞬迷った。「いや、二十分も前からまっていたのだ」と答えようかどうかと。


 「五分ぐらい前かな、ここへ来たのは。ここ凄く広いし、あちこちまわって見たりしていて」

またつまらぬ見栄を張って事実とは違うことを言ってしまっていた。

 「でも和子さん、この前とは凄く感じが違っていて、まるで別人みたいだよ」

 色鮮やかなピンク色のコートを羽織った和子をしげしげと見つめながら進次が言った。 

 「ああこのコートねえ、目立つかしら。去年母に買ってもらったのだけど、着たのは今日が初めてなの。普段はこんなは派手な色のもの着ないんだけど、今日は特別」


 今日は特別と聞いて、進次はなんとなく嬉しく思った。彼女がこの日のことを大切に思っていてくれた証であると思えたからだ。


つづく

次回 9月17日(木)


2026年9月8日火曜日

「おもしろくてためになる本」をお探しの方にお勧めしたい一冊

 ネットで、紙の本で、ファン急増殖中の異能作家・辛酸なめ子が円熟期に放った会心の一作




書評:「おしゃ修行」辛酸なめ子  双葉社


2017年に出た本ですから決して新しくはありません。でも9年経った今でも、斬新さが失われていません。「おしゃ修行」というタイトルからは、ファッションのノウハウ本のイメージがわきますが、それはそれとしてしっかり内容を伴っていて読み応えあります。

でもそれだけで終わらないところが現代日本サブカル界に君臨する著者のすごいところです。


とにかく出だしから面白いのです。


まず冒頭の章ではクローゼットを整理して、古い衣服をまとめて売ろうと古着屋に持ち込むのですが、一軒目の評価は「申し訳ありませんが値がつきません」と、ゼロ円回答。


それにもめげず2軒目に挑むのですが、「査定の結果、発売年代や、品物のコンディションやセール品の関係で値段がつきませんでした」と、またもや非情な回答。


少なく見積もっても元手に約数十万円もかかった衣類が、古着屋2軒ともゼロ円評価という無残な結果に終わったのです。


でも仕方ないとしぶしぶあきらめて、一部だけ残して、他はすべてチャリティ団体へ寄付することにし、切なく寂しい気持ちを抱えながらとぼとぼ帰途につく著者でした。


著者辛酸なめ子のバーゲンセールに向かうすごいエネルギーに感服


またstep1の「セールの反省と対策」の項もおもしろい。とにかくこの著者の買い物に対するエネルギーはすままじく、バーゲンセールに対しては、まるで物欲の鬼のようなエネルギーで、いったいどれだけ買えば気が済むのかと、その散財ぶりに読者はハラハラドキドキの連続です。このように、冒頭からエキサイトさせられ、一気に引きつけられること必至です。



内容説明

買っても買っても服が足りない、店員に気を遣って購入、パリピに敗北感…だけど、おしゃれになりたい!奮闘する姿に共感&笑い溢れるファッションエッセイ。

目次

1(クローゼット整理術

ファストファッションのカルマ

コンフォートシューズを探して

巻きものに挑戦

時計購入逡巡記

セールの反省と対策

フリーマーケットのカルマ)
2(店員さんとの心理戦について

ハイブランドと運気の関係

着回しマイルール

バッグ欲について;服を作ってみる

アクセサリーへの欲求)
3(商業施設は物欲のるつぼ

おしゃれタウンの視察;服買い過ぎ防止策

おしゃれピープルにあこがれて

パーティーピープルになりたくて

モテ服と萎え服)
番外編 セレブとおでかけ(妄想)

著者紹介

辛酸なめ子[シンサンナメコ]
東京都生まれ。埼玉県育ち。漫画家、コラムニスト。芸能界やスピリチュアル、オカルトなど多数のジャンルを独特な目線で描き人気を博す(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。


出典:紀伊国屋ウェブ


2026年9月4日金曜日

ブログ「生涯現役!!日記」 掲載 T.Ohhira エンタメワールドPV数公開 No.2

 

(青)前月 (赤)当月




小説ごとのPV数を公開します


先月に続きブログ「生涯現役日記」掲載「T.Ohhiraエンタメワールド」のPV数を公開します。


今回注目すべきは「マンハッタン西97丁目」PV数の先月比171アップという大幅な伸びです。これは他の5作品と比べて約4倍の数字になります。


理由を上げてみますと次の2点に絞られます。まず1点目は掲載回数が51回と、他と比べて4倍に及んでいること。2点目は回数ごとの掲載日をもくろくとして「生涯現役!!日記」に載せており、読者が容易にアクセスできることです。


その他の作品も平均して40〜50PVの伸びを記録していますから、1か月の成績としては決して悪くはありません。

この状態が続くと各々が年間500PV近い伸びを記録することになりますから、これから先が楽しみです。



(No.2) 2026/9/04現在 ( )内は前回(8/07)の数字

小説タイトル

PV数

連載(掲載)期間

マンハッタン西97丁目

3,668

(3497)

14/5/28~9/21

噂 台風 そして青空

867

( 822)

25/4/17~

7/10

ナイトボーイの愉楽

657

(618)

25/7/17~

10/09

直線コースは長かった

573

(526)

25/10/23~

01/08

下津さんの失敗(ナイトボーイの愉楽part 2)

498

 (457)

26/01/30~

4/16

紳士と編集長

282

(227)

26/4/30~

7/02

進次と和子の青春グラフィティ


掲載中

編む女


‘26/11月~掲載予定

Total

6,545

(6197)






2026年9月3日木曜日

T.Ohhira エンタメワールド〈7〉進次と和子の青春グラフィティ(8)

 

                     adobe stock


                                            8

睡眠不足にも関わらず、戻ってからずっとウキウキしていて、早く誰かに聞いてもらいたいと思っていた矢先の紀子からの橋渡しで、和子は昨夜の電車の中からのいきさつを残らずしゃべってしまった。

最初は止めておこうと思ったホテルのこともすべて話した。


 「へえー、和ちゃんおとなしそうな顔していて、案外やるじゃない」

 「だってわたし、今度こそ、と賭けていた初恋の人に会えなくて、もう必死だったんだもの。願かけまでして今年こそはボーイフレンドを作ろうと」

 「今年こそって、まだ四日たっただけじゃない。それなのに幸先よすぎるわ。願かけってやはりやってみるもんね。でもょかったわねえ和ちゃん」


 和子の部屋のコタツの中で、二人は進次のことを話題の中心に据え、夕食の支度のことも忘れて長い間話し込んでいた。


けっきょく紀子とは二時間以上話していて、疲れたといって彼女が自分の部屋に戻り、その後で家から持って帰ったお餅で雑煮を作って食べ、おなかが膨れたら急に猛烈な睡魔が襲ってきて、いつの間にかコタツの中で眠ってしまい、目が覚めたのが対先ほどで時計は既に九時半を指しているではないか。

休みだとはいえ、こんな時間まで朝寝坊したことは記憶になかった。 


 ―わたし疲れているのかしら、こんなに寝坊してしまって、でもまあいいか、学校はまだ休みなんだし、今日は一月五日の月曜日、学校があさって始まって、そうだわ、その三日後にまた進次さんに会えるんだわ。ああ、早く来ないかなあ土曜日が―


 和子はコタツの中でまだハッキリしない意識のまま、進次との次のデートのシーンを思い描いて、また心を弾ませていた。


 心が躍ったせいか、次第に目も頭も冴えてきて、ふと、二日続きで布団の中で寝てないことに気がついて、慌ててコタツを出て立ち上がり、「さお、正月気分も終わり終わり」と独りごとを呟きながら、洗面へと元気に立っていった。


 その週の土曜日の午後、進次はソワソワと落ちつかない気持ちを持て余しながら、その日最後の授業に臨んでいた。

「LC」とか「Shipment」などの用語が頻繁に出てくる、あまり気乗りしない貿易英語の時間であった。

英会話とか英文読解だとそうでもないのだが、この科目だと、眠たくなくても、なぜかあくびばかり出てくるのだ。

 この日夕方五時には梅田で和子と会う約束があり、気もそぞろで、授業の内容はさっぱり頭に入らず、終了時間ばかりが気になっていた。


 あの朝九時過ぎに目が覚めて、二人で三宮まで歩いていき、前の晩閉まっていた駅前の喫茶店で十一時まで話していて、その後阪急電車に乗り、和子とは芦屋川の駅に着いたとき車中で分かれたのだ。


そして、その日の夜からまたバイトが始まって、木曜から学校の授業が開始になり、正月気分吹き飛んでまた忙しくはなっていたが、何故だか何をするにも気はそぞろで、朝からいったい何度時計を見たことだろうか。


待ち侘びた授業終了のベルが鳴ると進次は誰よりも速くノートを片付けて、真っ先に教室を飛び出した。


 とは言え、約束の五時までには一時間以上あり、それまでどうして時間をつぶそうかと思案した。


外は思いのほか寒く冷たい北風が頬を刺すようで、和子と会った一週間前の夜の暖かさがウソのように思えた。

この日まで落ち着かない気分の毎日であったが、それもみな土曜日の和子とのデートの約束のせいだった。


 その土曜日がやっとやって、進次は梅田のほうへ向かって歩きながら、しきりに懐具合を気にしていた。


 ポケットの有金すべてで1万三千円。

先週末までは三万円ほどあったのだが、あの夜の出費がホテル代を含めて1万二千円、それに月曜からの食費などに五千円、併せて一万七千円で、差引き一万三千円というわけなのだ。

 アルバイトの給料日は二十日だが、それでも残り十日となれば、少なくとも七~八千円は残しておかなければならない。


そうだとすれば今日出費できるのは五〜六千円ということになり、デートの予算はこの前の晩の半分くらいしかない。

 十時ごろまで一緒にいるとして五時間か。喫茶店だと長く粘れたとしても二時間ぐらい、あと三時間はどこへいこうか。

こんなに寒くては屋外の公園などで過ごすのも無理だろうし、時間が時間だけに夕食も引っかかってくる。

できたら素敵なレストランにでも行ってムーディな雰囲気で食事でもしたいものだが、この予算ではそれは無理だし、うーん、どこにしようか。


そうだ、居酒屋なんかはどうだろう。決してムーディとはいかないけど、彼女はこの前なんかラーメン屋だって嫌な顔ひとつせずついてきて、それなりに楽しそうに過ごしていた。

その後ホテルでビールを飲んだけど、アルコールにも弱くはなさそうだった。居酒屋だと食べものも多く、別の食事にいく必要もないではないか。


 そうだ、そうしよう。ちょっとこぎれいな居酒屋に。


つづく

次回 9月10日(木)


2026年9月1日火曜日

窓際の客は外見(見栄え)で選ぶ・パリのレストランの話・再掲載シリーズ No.27

 

初出:2020年1月8日水曜日   更新:2026年9月1日


パリのレストランで窓際の席を断られても人種差別とは言えない

あるブログに載っていた話ですが、パリの中心部にある有名ホテルのレストランで一人のアジア人中年男性が訪れたときのことです。

男性はできることなら外が一望できる窓際の席を希望していました。ところがその席に付こうとしていると、おもむろに男性店員が近づいてきて、「奥の席へ移動してください」と言うではありませんか。

残念とは思ったものの、たぶん予約席か何かなのだろう」と思い、諦めて窓際から離れた入り口側の席につきました。

それからしばらくして、地元のフランス人らしい白人女性が入ってきて、窓際の席に着きました。

「ハハーン、あの人が予約の人か」と思ったのですが、しばらくしてまた白人男性客が、同じように窓際の席につきました。

その後も白人客が続き数人が窓際に席に付いたのです。アジア人の彼が断られてから、もう5人以上がその席に付いたことなるではありませんか。

ここまできて、彼は「これはどうもおかしい、予約席というのはひょっとして嘘ではないのだろうか。私が日本人だから断られたのではないだろうか。そうだとすると人種差別なのでは?」と疑い始めたのです。

アジア人を希望した席に付かせないのは人種差別に当たるだろうか?

人種差別、いやな言葉です。でもパリのレストランでアジアの客が窓際の席を断られたことは、果たして人種差別に当たるのでしょうか。

それを考える前に、なぜアジア人だと窓際の席を断られるのでしょうか。

理由はこうです。窓際の席は客が外を見ることができるいわば特等席ですが、外の通行人にもレストランの客を見ることができます。つまり外から仲の客が観察されるのです。

この際、外から観察する人は当然窓際に座った客をみることになります。そして座っている人の様子から店のことを判断するのです。

外からの見栄えを重視するレストランのマネージャー

外から見る人が窓際の席に座った客で店を判断するとすれば、その店のマネージャーはどういった行動をとるでしょうか。

簡単なことです。窓際にはなるべく外見の良い客を座らせようとします。そうすることで外の人からは「客筋のよい店」と判断されるからです。

その結果店は評判を呼びどんどん繁盛していくのです。では逆の場合はどうでしょうか。つまりマネージャーが窓際の席の客層に無頓着で、来る客の外見などにかかわらず順番に席に付かせた場合です。

そうすると必ずしも外見のいい客ばかりが席に付かずに、中には?が付く人も混じっているかもしれません。

そうした場合、外から眺めた人は、客層について良い判断を下さず、店に評判が下がり、結果として店が繁盛しなくなるのです。

いかがでしょうか。店の繁盛のために窓際の席の客を選択するマネージャーの行動を人種差別と呼べるでしょうか。

はっきり言えば、これはホテルレストランの売り上げを増やすための方策であり、外見的な美醜で人を差別するルッキズム(lookism)には当たらないのではないでしょうか。


(注)ルッキズム(lookism)とは

外見的な美醜を重視して人を評価する考え方容姿による差別をいう

窓際の席はショーウィンドウの役目をする

カフェやレストランなどでは、店のグレードが高ければ高いほど客の質に気を配ります。

その対策の一環として外から眺められる窓際の席に座る人は厳しく選択します。なぜなら外から見る人は客層によってランキングするからです。

つまり、窓際の席に見栄えの良い人が座っていれば、グレードの高いレストランだと判断し、見栄えの良くない人を見れば、低ランクに評価するのです。

これがレストランの売り上げに直結するのです。

これでわかるようにレストランの窓際の席はショーウィンドウの役割も果てしていますから、マネージャーは、できるだけ見栄えの良い客をそこへ座らそうとするのです。


(ツイートより)

パリのホテルの件、ひどいと思うけど、人種差別では無いと思う。だいたい飲食店はフランスでも日本でも 「窓際の席は見栄えのいい外国人やモデルのいわば指定席。店のイメージアップにつながる人を意図的に座らせる」 ことが行われていて、そのホテルの見栄えの基準が白人だっただけだと

2015