2026年3月6日金曜日

40年前の映画「コンペティション」はやはり良かった

 まず一番下に載せてある表を見てください。これは私のブログ「生涯現役日記」の自己紹介欄にある作者紹介です。

注目していただきたいのは「好きな映画」の欄にある「コンペティション」という映画の題名です。

ブログを開始した16年前に書いたもので、他二本の映画名とともに好きな映画として上げたものです。

この映画を観たのはかれこれ40年ぐらい前のことで場所は当時姫路駅前にあった商業ビルの7階の映画館だったと思います。

入場料が700円とリーズナブルで、しかも話題の映画ばかり上映されていたこともあって月に一度は通っていました。

この映画はピアノコンテストがテーマになっていますが、主人公二人をはじめ、熾烈極まるピアノ演奏競争を絡ませた、コンテスト出場者各々の人間模様が実にうまく映し出されています。

好きな映画にあげた他の2本と共に、機会があればまたいつか観たいと思っていたのですが、最近になってyoutubeで取り上げられているのを知り、再び観る機会が与えられたのです。

感想はといいますと、40年前と変わらず、感動と共に、映画のすばらしさを伝えてくれる作品で、好きな映画に上げたのは正解でした。


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映画コンペティションの解説


ピアニストになるために青春のすべてをかけてきた青年と少女のコンクールをめぐっての競争心と恋の葛藤を描く。製作総指揮はハワード・パイン、製作はウィリアム・サックハイム、監督は「ロンゲスト・ヤード」などの脚本を手がけたジョエル・オリアンスキー。オリアンスキーとウィリアム・サックハイムの原案を基にオリアンスキーが脚色。撮影はリチャード・H・クライン、音楽はラロ・シフリン、編集はデイビッド・ブルーイットが各々担当。出演はリチャード・ドレイファス、エイミー・アーヴィング、リー・レミック、サム・ワナメイカー、ジョセフ・カリ、タイ・ヘンダースン、ビッキー・クリーグラー、フィリップ・スターリング、アダム・スターンなど。


1980年製作/アメリカ

原題または英題:Competition

配給:コロムビア映画

劇場公開日:1981年4月18日




あらすじ

第23回中西部ピアノ・コンペティション(コンクール)に3位で入賞したポール・ディートリック(リチャード・ドレイファス)は、サンフランシスコで開かれる最も権威あるヒルマン・ピアノ・コンペティションでの19回目の挑戦に賭けていた。ピアニストになるために青春のすべてをかけてきたポールは、もう30歳を迎えていた。参加資格は30歳までなのだ。この最後のチャンスに失敗すると、彼はピアニストを諦め、音楽教師への道を歩む他ないのだ。しかし、彼に夢を託してきた父親(フィリップ・スターリング)も病弱でもうあまり長くは働けず、自分の腕にかかっていると思うとポールの気は重かった。サンフランシスコには、各国から選ばれた12人の若者たちが揃い、決戦日をめざして練習に励んでいた。その中に美しい娘ハイディ・スクーノバー(エイミー・アーヴィング)がいた。いくつかのコンクールでポールと顔を合わせていた彼女は彼に親しげに声をかけるが、それを冷たくあしらうポール。彼にとつて、今、ピアノ以外に気をとられることは禁物だったのだ。そして、まず6人の決勝出場者が決まり、ポールとハイディの他に、ソ連から来た16歳のタチアナ(ヴィッキー・クリーグラー)、芸能タレントとして売り出そうとこの場を利用する野心家ジェリー(ジョセフ・カリ)、黒人の金持ちでイタリアに住むマイケル(タイ・ヘンダースン)、カナダから来たマーク(アダム・スターン)らがいた。タチアナのピアノ教師が亡命をはかり、そのショックで彼女が倒れたため大会が1週間延期された。決勝日と音楽教師の面接の日が重なってしまったポールは悩み、やりきれない気持ちのままハイディを訪ねた。泣きながら悩みを告白するポールを、ハイディはやさしく抱きしめた。しかし、ハイディのピアノ教師グレタ(リー・レミック)は、彼女にポールに恋してはいけないと激しく忠告した。グレタも、若い頃同じような経験から苦い思いを味わっていたのだ。悩む彼女に今度はポールが言った。どちらが勝ってもいっしょにいようと。しかし、それはアンドルー・アースキン(サム・ワナメーカー)の指揮のもとですでに決勝曲、ベートーベンのピアノ協奏曲5番変ホ長調皇帝を完璧に弾き終わって絶大な拍手を受けていたポールの優位な立場からの言葉だったのかもしれない。運命の日、ハプニングから、予定曲を返上してプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番ハ長調を見事に弾いたハイディは、ポールを破って優勝した。喜ぶハイディに、しかしポールの言葉は冷たかった。その夜のパーティ。優勝したにも拘らずポールの不在で沈んでいるハイディの前に、1度は帰る決心をして車に乗った筈のポールが微笑みながら現われるのだった。


スタッフ・キャスト

監督

ジョエル・オリアンスキー

脚色

ジョエル・オリアンスキー

原案

ジョエル・オリアンスキー ウィリアム・サックハイム

Paul_Dietrichリチャード・ドレイファス

Heidi_Schoonoverエイミー・アービング

Gretaリー・レミック

Andrew_Erskineサム・ワナメイカー

全てのスタッフ・キャストを見る

受賞歴

第53回 アカデミー賞(1981年)

ノミネート

編集賞 デビッド・ブリューイット

主題歌賞

第38回 ゴールデングローブ賞(1981年)

ノミネート

最優秀作曲賞 ラロ・シフリン


出典:映画 com.



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ユーザー情報

性別

男性

職業

freelance worker

場所

姫路市, 兵庫県, 日本

紹介

いつも前向きなスタンスで、心身ともにいつまでも若々しく

ありたいと願っています。マイブログでは幅広い年代層に

支持されるようなバランス感覚を保ったテーマで記事を発表

できたらいいなと思っています

趣味

writing,typing,walking,クラシック音楽、 古本屋めぐり

お気に入りの映画

昼下がりの情事, さよならジョージア, コンペティション

お気に入りの音楽

モーツアルト, ・ピアノ協奏曲21,23番 / ショパン ・夜想曲:/ メンデルスゾーン ・バイオリン協奏曲第1番

お気に入りの本

藤沢周平、山本周五郎、 吉村昭、宮本輝の作品





2026年3月5日木曜日

T.Ohhira エンタメワールド〈5〉下津さんの失敗・ナイトボーイの愉楽②(6)

 

                 

                  adobe stock 


           6


 エレベーターまでもう少しのフロアの真ん中あたりまで歩いてきて、貰ったチケット入りの封筒を手に持ったままだと気がついて 「そうだ。しまわなくちゃあ」と、ユニフォームの内ポケットへ念入りにおさめた。それをさらに上からなでて、ゆっくりと感触を味わい、その後で道夫ははたと考えた。


 コマ劇場特別席の切符二枚か、でもいったい誰を誘ったらいいんだろう。 エレベーターの中でもずっとそのことを考えていて、一階へ下りてボーイの詰所で小山に「浜田さん、トイレ長かったですねえ」と言われたときにも 「ちょっとトイレに行ってくる」と言って席をはずしたことなどとんと忘れており、あわてて「う、うん。ちょっと腹具合が悪くてなあ、おかしいなあ今日なにか悪いもの食べたかなあ」と出まかせのセリフを発していた。


 それからもずっと切符のことばかり考えており、最終的に相手としてはやや不足だとは思ったが、 この際、普段お世話になっている下宿のおばさんでも誘うとするか、と結論を出そうとしたとき、ふと頭に別のことがひらめいた。


 そうだ、池上さんを誘ってみたらどうだろう。あの人ついこの前の朝、ぼくに向かって言ったんだ。「夜中のお仕事はたいへんでしょう。眠たくありませんか?」と、やさしく微笑んでくれたのだ。


あの時はぼくの方がうまく応えられなくて会話は長く続かなかったけど、分かれるときの彼女のあの表情、もっと何かを語りかけたそうだった。


そうだ、いいチャンスではないか。二歳上の僕でさえ、コマ劇場へなんか一度も行ったことがないんだし、あの人だってきっとそうに違いない。そうだ、そうしよう。


いいだろうなあ、あの人の横に座って芝居を見たりしたら。


でも待てよ、話すとしたら明日しかない。明日うまく彼女に会えるだろうか。もしや休みということはないだろうか。 


そんなことを考えながら、道夫は期待と不安でしだいに興奮を高めながら、四時の仮眠時間がやってくるまで、ずっとそのことばかり考えていた。


 翌朝、勤務が終わる少し前にようやく意を決すると彼女の勤務場所である七階のメイドステーションへと足を運んだ。


そこへ行くすこし前に、なにか引継ぎ事項はないかと、他のボーイたちにもたずねたりしたが、あいにくその階のメイドに引き継ぐ業務は何もなかった。


 えい、こうなったらしょうがない。出たとこ勝負だ。そう腹を決めてエレベーターに乗り、さっき勤務についたばかりのエレベーターガールの椎野さんに「七階お願いします」とていねいに告げた。


それを聞き「はい」と返事しながらチラッと道夫を見て会釈した椎野さんのことを、この人もまたかわいいな。コマ劇場の芝居、もし池上さんがだめだったら、かわりにこの人を誘ってみようか、などと、一瞬とはいえ、ずいぶん場当たり的なことを考えたが、 でも無理か、この人、噂ではフロント係の西山さんとつきあっているらしいから。


おっといかん、いかん。こんなことを考えていては、池上さんだ。彼女いっぽんに絞らなくては。


 道夫が頭を少し振って胸の中でそうつぶやいたとき、エレベーターは七階に止まり音もなくゆっくりとドアが開いた。


椎野さんに「どうも」と頭を下げ、あちこちからドアのバタンと閉まる音が聞こえるあわただしげなフロアへ出て行った。


 池上さん、うまくメイドステーションにいてくれるといいんだけど。


 フロアの真ん中あたりにあるメイドステーションのサービスカウンターに向かいながら、祈るような気持ちで歩いていた。 


サービスカウンターにはその階のメイドのキャプテン、中村さんが座っており、背を丸めて何やらせわしげにペンを走らせていた。


 「あのう、すいません。ナイトボーイの浜田です。池上さんはいますか? 昨夜、親戚の方から電話でことずかった伝言があるのですけど」 


下を向いたままだった中村さんに一気にそんな作り話を告げて返事を待った。


「あら浜田くん、もうお仕事終りなの? どう、このごろは。なにか変わったおもしろいことない?」 


道夫の声でペンを置いて顔を上げた中村さんはしげしげと道夫の顔を見ながら用件には答えずそんな質問を浴びせてきた。


 「ないですねえ。毎日が平々凡々ですよ。ただやたら日が過ぎていき歳をくうばかりで」


 そこまで言って、このセリフはまずかったと思った。なにせ、この中村さんは三十半ばのハイミスで、歳のことは人一倍気にしているはずなのだから。


でもそんな心配もどうやら杞憂に終わったようで 「でもいいわよ。その平々凡々が、半年前のように客室内でたて続けに二人も自殺者が出るようなことがあるより、でも、いいことだったらいくらあってもいいんだけど。


あっそうそう、ごめんなさい。池上さんに用だったのね。中にいると思うわ。待ってて、呼んできてあげるから」


 中村さんはさばさばとした調子でそう言うと詰所の控え室へ入っていった。 


よかった。池上さんいるんだ。 道夫はホッとしながら胸のポケットに入れてあるコマ劇場の招待券一枚と手紙を入れた封筒を制服の上からそっと押さえてみた。


 「あら、浜田さんでしたの、お久しぶり。お元気ですか? ところでこの私に伝言ですって、いったい誰からかしら」 


池上さんは透きとおった涼しげな声でそう言いながらカウンター越しにじっと道夫の顔を見つめていた。


その目を正面から見返したとき、道夫は心地よさからフラフラッと軽いめまいのようなものを感じたが、極力平静をとりつくろって言った。


 「は、はい。これなんですけど、読んでいただいたらわかると思います」

 カウンター越しに指のきれいな白いきゃしゃな手が差し伸べられ、差し出した封筒をゆっくりつかんだ。


 「じゃあ僕はこれで」 渡した瞬間、道夫は間髪をいれずそう言ってさっと踵を返してエレベーターの方へ向かった。


でもその前は通過して、左手奥の鉄のドアを押して、非常階段へと出て行った。


エレベーターを待ったりしていて、封筒を開けて中を見た池上さんに何か言われるのがこわかったのだ。


つづく


次回 3月12日(木)


2026年3月2日月曜日

AIがあっという間に長文を作成してくれるのを目の当たりにして、これでは「自分で記事を書くモチベーションが下がってしまう」と嘆く私



今や全盛時代を迎えつつある昨今のAI事情だが、「自分は頼るつもりはない」などと高みの見物を決め込んでいても、世間はAIの話題で騒々しすぎる。その誘惑に負けたわけではないが、「AIって、それほど便利で役立つものなのか」と、つい要約やリライトなど、手持ちのタスクを任せてしまう。

結果を見て「これいいじゃないか!」と、感心のあまり「とりあえず1度だけ」のつもりが2度3度となり、気がついてみればサイトの履歴に利用状況がズラッと並んでいるではないか。

この体験により、「あっという間に長文記事が出来上がる」のを目の当たりにしたせいか「今後は自分で記事を書くモチベーションがうんと下がる」ことを実感せざるをえないのも、偽りのない事実だ。


AIによる概要

そのお気持ち、非常によくわかります。AIが「情報処理」として記事を量産する姿は、まるで執筆の喜びや苦労を追い抜いていくようで、空しく感じてしまうこともありますよね。

 

しかし、AIがどれだけ速く書けても、「あなたにしか書けない価値」はむしろ高まっています。モチベーションを再燃させるための視点を整理しました。 

1. 「情報処理」はAIに、「情報化」は人間に 

AIが得意なのは、すでにある膨大なデータを整理・要約する「情報処理」です。一方で、あなたの心に芽生えた感情や、実際に体験した「生の声」を言葉にする「情報化」は、人間にしかできません。 

  • AI: 一般的な正解、平均的なまとめ

  • あなた: 独自の視点、失敗談、揺れ動く感情 

読者が本当に心を動かされるのは、綺麗に整った一般論ではなく、書き手の体温が宿った言葉です。 

2. 「対決」ではなく「役割分担」

全文を自分で書こうとすると疲弊しますが、AIを「下書き担当のインターン」と捉えると楽になります。 

  • AIに任せる: 構成案の作成、データの下調べ、誤字脱字チェック

  • 自分でやる: 結論の決定、具体的なエピソードの挿入、読者への語りかけ 

Googleの評価基準でも、AIによる低品質な量産記事ではなく、「独自性や付加価値」のあるコンテンツが重視されるようになっています。 

3. 書くこと自体の「プロセス」を楽しむ

「記事を完成させること」だけを目標にすると、AIの速さに負けてしまいます。しかし、文章を書く過程で自分の考えが整理され、新しい発見があるという体験は、あなただけのものです。

AIは結果を一瞬で出しますが、執筆を通じて思考を深める贅沢な時間を奪うことはできません。 

もしよろしければ、今書こうとしている記事のテーマを教えていただけませんか?AIには出せない「あなたらしい切り口」を一緒に探すお手伝いができるかもしれません。


2026年3月1日日曜日

世界トップ、ハーバード大学の「知られざる正体」—日本の常識を覆す驚愕の舞台裏 ・NotebookLM 記事分析シリーズ No.4

 

                 ハーバード大学

1. 導入:名門の虚像を剥ぎ取る「ビジネスモデル」の正体


「ハーバード大学」と聞いて、私たちが想起するのはどのような姿でしょうか。マイケル・サンデル教授の「白熱教室」に見られる知の応酬や、Facebook創業者マーク・ザッカーバーグ氏のような異能を育む土壌。しかし、その華やかなブランドの深層には、日本の教育界の常識を根底から覆す「巨大企業としての冷徹な経営戦略」が横たわっています。


世界大学ランキングのトップ10を眺めると、ハーバードを筆頭に米国の大学が6校、残る4校をケンブリッジやオックスフォードといった英国勢が占めています。


この「英米覇権」はなぜ揺るがないのか。そこには、単なる教育の質を超えた、知と資本を循環させる圧倒的な仕組みが存在します。世界を牽引する名門校の、知られざる「経営の力」を解き明かしていきましょう。


2. 「資本集約型教育モデル」の衝撃—3.5兆円が支える知の独占


ハーバードが世界首位に君臨し続ける最大の原動力、それは他の追随を許さない圧倒的な「財力」です。同大学が保有する基金は、その時価総額が、2024年度で約532億米ドル (1米ドル149円換算で約7兆9,000億円) いう、天文学的な資金を保有しています。


教育機関において、これほどの資金は何を意味するのでしょうか。それは「資本集約型教育モデル」の確立です。潤沢な資金は、他国からノーベル賞級の頭脳を「引き抜く」ための破格の待遇を可能にし、最新鋭の研究施設を整備する原資となります。


さらに、家庭環境に左右されない「ニード・ブラインド(経済力不問)」の奨学金制度を支え、世界中から最も優秀な若者を独占する。この圧倒的な資金力こそが、世界一の知性を集め続けるための絶対的な参入障壁となっているのです。


3. 「機関投資家」としての大学—170人のプロが動かす1兆円の果実


特筆すべきは、この巨額資産を運用する「プロフェッショナリズム」の徹底ぶりです。ハーバードの学内事務局には、資金運用を専門とするスタッフが170人も配置されています。


日本の大学では、わずか2〜3名の経理担当者が一般事務と兼務しながら運用に当たるのが通例ですが、ハーバードはもはや世界屈指の「投資集団」と言っても過言ではありません。


その実績は凄まじく、資産の平均運用益は年10%。特に、2005年まで運用部長を務めたジャック・メイヤー氏のチームは、10年間で1兆円以上の利益を叩き出しました。この利益額だけで、日本の多くの国立大学の年間予算を遥かに凌駕しています。


ハーバードの資金運用スタッフ数は170人、対する日本の大学は2〜3人の兼務。この差がそのまま世界ランクの差となっている。


4. インスティテューショナル・アドバンスメント—450人の「戦略的資金調達」


運用と並び、米国流の「攻めの経営」を象徴するのが「インスティテューショナル・アドバンスメント(大学推進事務)」、すなわち寄付金調達の組織力です。ハーバードには寄付金獲得のためだけに、実に450人もの専門スタッフが配置されています。


これは米国の一流大学では決して異常な数ではありません。彼らは単に「寄付を待つ」のではなく、卒業生や篤志家との関係を戦略的に構築し、大学のビジョンを売るマーケターとして機能しています。この「寄付を呼び込むインフラ」への巨額投資が、さらなる研究資金を呼び込み、大学の競争力を高めるという強固なレバレッジを生み出しているのです。


5. 「AO入試」の真実—全米を駆けるエリートスカウト部隊


日本で「AO入試」と言えば、書類と面接による人物重視の選考というイメージが強いですが、本場米国における「Admission Office」の本質は全く異なります。それは、大学のミッションに基づき、未来のリーダーを能動的に獲得するための「スカウト専門部署」です。


アドミッション・オフィスのプロフェッショナルたちは、全米、ひいては世界中を駆け巡り、大学が求める才能を直接「発掘」します。この高コストなスカウティングを可能にしているのは、前述した170人の運用プロと450人の調達プロが稼ぎ出す圧倒的な原資です。


「豊富な資金で最強の経営スタッフと教授陣を揃え、その成果がブランド価値を高め、さらに優秀な学生と寄付を呼び込む」。この**「知と資本の好循環(バーチャス・サイクル)」**こそが、米国名門校が頂点に君臨し続けるエコシステムの正体なのです。


結び:教育の質を決定づける「経営という武器」

倉部史記氏は著書『文学部がなくなる日』(主婦の友新書)の中で、現代の大学が直面する厳しい現実を示唆しています。ハーバード大学の事例が私たちに突きつけるのは、「教育の質は、冷徹なまでの経営戦略によって支えられている」という現実です。


「資金運用」「寄付調達」「学生獲得」の三位一体となったプロフェッショナルな経営体制。これこそが、現代の高等教育における真の「強さ」の源泉にほかなりません。


私たちが大学に求める「純粋な学びの場」という理想と、世界を席巻する「エンタープライズ(企業体)としての大学経営」。この巨大なギャップを直視したとき、日本の大学が生き残る道はどこにあるのでしょうか。教育を支える「経営の力」の重要性について、今こそ真剣に議論すべき時が来ています。


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元記事:アメリカの大学・知られざる一面

https://tuneoo.blogspot.com/2011/03/blog-post_06.html