書評 「こころの風景 なつかしき人々」 遠藤秀作 小学館
「エッセイの名著を挙げよ」と言われたら私はこの作品をその一冊として挙げるのを忘れないでしょう。
このエッセイには著者の渾身の力がこもっていると、私を含めて作品を読んだ多くの人が感じるのではないでしょうか。
このブログでもこれまでに多数紹介していますが、氏は狐狸庵の名のもとにユーモアの溢れた読んで楽しいエッセイを多数書いています。でもこの作品はそうしたものとは一線を画した、いわば後世に残しておくべきエッセイの名著だと思います。
まず下の目次をご覧ください。なんという錚々たるメンバーでしょうか。この作品はこうした人たちとの生前の交友を思い出として書いたものですが、メンバーの名前を見るだけで氏の人間関係がいかに充実していたかがよくわかります。裏返して言えば、氏にはこれだけの人々を引き付ける人間的魅力が備わっていたのです。
この本はシリーズ(1)と(2)にわかれており、まず(2)の方から先に読みました。
これは今から30年まえの氏の没年に出版されたものですが、30年前という古さを少しも感じません。名著というのはやはり息が長いものだと、つくづく感じます。
読書の秋にふさわしい しみじみと味わえる一冊です。
書籍の概要
著者: 遠藤周作
出版社: 小学館
発売日: 1996年10月(または11月)
ページ数: 206ページ
もくじ
1 聖書の中の女性
2 R婦人
3 曽野綾子さん
4 瀬戸内さんの笑顔 ー 瀬戸内晴美
5 安達瞳子さん
6 有島暁子さん
7 深尾須磨子先生
8 ある女性たちの生き方
9 山の神
10 新珠三千代さん
11 テレーズ・デスケルウ
12 佐々木久子さん
13 椎名さんのこと
14 船橋さんのこと
15 錬さんを偲ぶ ー 柴田錬三郎
16 精霊流し ー 丸岡明、柴田錬三郎、原民喜、山本健吉、武田泰淳、梅崎春生
17 北君と怪人マブゼ ー 北杜夫
18 「さむらひ」と「侍」 ー 河上徹太郎
19 芥川比呂氏を思う
20 私の感謝 ー 小林秀雄
21 ある小料理屋と向田さん ー 向田邦子
22 三田、長崎、私たち ー 山本健吉
23 石坂洋二郎氏を悼む
24 三雲夏生教授のこと
25 山本健吉氏をしのぶ
26 思い出、あれこれと ー 山本健吉
27 グレアム・グリーンをしのぶ
28 G・グリーンの魔
遠藤周作
(1923-1996)東京生れ。幼年期を旧満州大連で過ごし、神戸に帰国後、12歳でカトリックの洗礼を受ける。慶応大学仏文科卒。フランス留学を経て、1955(昭和30)年「白い人」で芥川賞を受賞。一貫して日本の精神風土とキリスト教の問題を追究する一方、ユーモア作品、歴史小説も多数ある。主な作品は『海と毒薬』『沈黙』『イエスの生涯』『侍』『スキャンダル』等。1995(平成7)年、文化勲章受章。
