2026年5月2日土曜日

開高健の「香水を飲む」は本当か? 書評「作家と酒」 平凡社

 


「えっ 昔の物書きは香水まで飲んだって、 いくらアルコール分が高いからといって、それはないだろう」


開高健の「香水を飲む」は本当か?

この本の中で開高健は「香水を飲む」というエッセイで次のような興味ぶかい話を書いていますが、果たして本当にあったことなのでしょうか。冒頭で本人も「あてになるような。ならないような」と言っているのですが。 


   「香水を飲む」

小説家の話だからアテになるような。ならないようなと承知しておかねばなるまいが、この国のアル中には”パフューム・ドリンカー”というのがいるそうである。酒を切らしていてもたってもいられなくなると、女房の香水をひっかけてその場をしのぐというのである。香水に入っているアルコールは度数がグっと高いから少量でも緊急の渇えはおさえられるかもしれないが、聞いていて身につまされた。白昼に「夜間飛行」をひっかけて、ウム、こいつはトリップできる、などと呟くのであろうか。「シャネル」の5番は「ディオリッシモ」よりもグンと書けるゼ、などと言いかわしあっているのであろうか。取材費を惜しむといいしごとにならないというのはどこでもおなじだろうが、それにしても香水をあおってゲップを洩らしている深夜の鬼という光景は、ちょっと・・・

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出版社内容情報

【収録作品(掲載順)】

1 酒呑みの流儀
正しい酒の呑み方七箇条/おいしいお酒、ありがとう 杉浦日向子  
二十年来の酒 立原正秋 
或一頁 林芙美子 
ビールの歌 火野葦平 
酒と小鳥 若山牧水 
ビールの味 高村光太郎 
あたしは御飯が好きなんだ! 新井素子 
酒のエッセイについて 二分法的に 丸谷才一 

2 酒の悪癖
酒徒交伝 永井龍男 
失敗 小林秀雄 
酒は旅の代用にならないという話 吉田健一
一品大盛りの味─尾道のママカリ 種村季弘
更年期の酒 田辺聖子
やけ酒 サトウハチロー
『バカは死んでもバカなのだ赤塚不二夫対談集』より 赤塚不二夫×野坂昭如
ビール会社征伐 夢野久作

3 わたしの酒遍歴
ホワイト・オン・ザ・スノー 中上健次
音痴の酒甕 石牟礼道子
酒の楽しみ 金井美恵子
eについて 田村隆一
先生の偉さ/酒 横山大観
酒のうまさ 岡本太郎
私は酒がやめられない 古川緑波
ビールに操を捧げた夏だった 夢枕獏
妻に似ている 川上弘美

4 酒は相棒
ブルー・リボン・ビールのある光景 村上春樹
薯焼酎 伊丹十三
サントリー禍 檀一雄
香水を飲む 開高健
人生がバラ色に見えるとき 石井好子 
パタンと死ねたら最高! 高田渡 
風色の一夜 山田風太郎×中島らも 
冷蔵庫マイ・ラブ 尾瀬あきら 
『4コマ ちびまる子ちゃん』より さくらももこ
こういう時だからこそ出来るだけ街で飲み歩かなければ 坪内祐三  
焼酎歌 山尾三省

5 酒場の人間模様
未練 内田百? 
カフヱーにて 中原中也
三鞭酒 宮本百合子 
星新一のサービス酒 筒井康隆 
とりあえずビールでいいのか 赤瀬川原平 
「火の車」盛衰記 草野心平 
水曜日の男、今泉さんの豊かなおひげ 金井真紀 
終電車 たむらしげる 

内容説明

きょうも一杯、いい気分。開高健、吉田健一、赤塚不二夫、中上健次、さくらももこ、内田百〓…。酔いどれ作家46名のエピソード。

目次

1 酒呑みの流儀(正しい酒の呑み方七箇条/おいしいお酒、ありがとう(杉浦日向子)
二十年来の酒(立原正秋) ほか)
2 酒の悪癖(酒徒交伝(永井龍男)
失敗(小林秀雄) ほか)
3 わたしの酒遍歴(ホワイト・オン・ザ・スノー(中上健次)
音痴の酒甕(石牟礼道子) ほか)
4 酒は相棒(ブルー・リボン・ビールのある光景(村上春樹)
薯焼酎(伊丹十三) ほか)
5 酒場の人間模様(未練(内田百〓)
カフヱーにて(中原中也) ほか)

出典:紀伊国屋ウェブ 


2026年4月30日木曜日

T.Ohhira エンタメワールド〈6〉紳士と編集長(1)

 

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小説『紳士と編集長』は こんなおはなし

 ある日、主人公の青年「僕」は駅前のバス停で、初老の紳士から声をかけられる。紳士は、僕が読んでいた創刊号の雑誌『リベーラ』に強い関心を示し、上品な物腰でその内容を絶賛した。紳士の洗練された風貌に惹かれた僕は、バスを一台見送ってまで再会を待ち、二人は後日、喫茶店で言葉を交わすことになる。

 紳士は自らを弁護士の「木谷」と名乗り、甥がその雑誌(リベーラ)の編集長を務めているのだと明かした。ロンドン留学の経験を語り、知的な話題で僕を魅了する木谷に、僕は深い信頼を寄せていく。

しかし、交流を重ねるうちに、木谷の言動にわずかな綻びが見え始める。留学先を「ロンドン」と言ったかと思えば次は「パリ」だと言い張り、あんなに熱心だった雑誌リベーラの話題にも興味を失ったかのような素振りを見せる。そして三度目の夜、公園のベンチで木谷は突如として僕の手を握ろうとし、執拗に身体的な接触を求めてきた。その豹変ぶりに恐怖を感じた僕は、彼を振り切って逃げ出す。

 困惑する僕のもとに、後日、木谷の息子から電話が入る。そこで明かされた真実は、僕が抱いていた紳士像を根底から覆すものだった。木谷の本職は弁護士ではなく会計士であり、現在は重度の「躁鬱病」を患って通院中だというのだ。

雑誌の編集長の甥という話も、留学の経験も、すべては病による「大言壮語」が生んだ空想に過ぎなかった。息子は、父が「躁」状態にあるため、これ以上の接触を控えてほしいと僕に懇願する。

 冬が訪れたある日、僕は公園で偶然木谷に再会する。かつての活気は消え、うつろな表情で大量の買い物を袋に詰める彼の姿は、辞書で調べた「躁鬱病」の症状そのものだった。僕はいたたまれなさを感じ、足早にその場を立ち去る。

華やかな紳士の仮面の裏側にあった、病と孤独という残酷な現実を突きつけられた僕は、夜の冷たい風に吹かれながら、彼に対してやるせない同情を抱き、一人佇むのだった。



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その初老の紳士が話しかけてきたのは、僕が駅前バス停前の地下街入り口のコンクリートの囲いにもたれて、その月発刊されたばかりの雑誌の目次に目を通している時だった。


おおかたの月刊雑誌と同じサイズでA5版のその雑誌は、厚みこそ週刊誌並ではあったが、〈リベーラ〉という名前にどことなく知的な雰囲気を漂わせていて、目次を読む段階で僕はすっかり魅了されていた。


「あのすいませんが」

紳士はセリフこそ月並みであったが、すこぶるトーンのいい上品な声で僕にそう話しかけながらすぐ横に立っていた。


「はい。なんでしょうか」

クリーム色の薄手のスーツを粋に着こなしたその身なりのいい紳士にチラッと目をやって、わずかな警戒心を抱きながら、僕もまた月並みの返事をした。


「今お読みのその雑誌、今月発刊されたばかりのリベーラですね」

「ええそうですが、それがどうか」


警戒心は少ないものの、見ず知らずの人からの思わぬ質問に、やや当惑気味にそう答え、あらためてその紳士に視線を送った。


六十を少し超えているだろうか、頭髪はほば半分くらい白く染まっているが、黒とまだらになったその髪が妙に顔立ちとあっていて、それがこの人の風貌をより魅力的に見せていた。


「いかがですかその雑誌。おもしろいですか?」

さっきより少し表情をくずして紳士がまた聞いた。


「ええまあ。中身はこれからですが目次を読んだかぎりではなかなかおもしろそうですね。それにこの表紙とか装丁とかもこれまでのものにないユニークさもっていて」


何者かはわからなかったが、そこはかとなく上品さを漂わせているその紳士に、僕はもうすっかり警戒心を解いていて、思ったまま正直に感想を述べていた。


「そうですか。それを聞いてわたしも大変嬉しく思います。実はこの雑誌なんですが」紳士がそう言って次の言葉をつなごうとした時、目の前に僕の乗るバスがやってきた。彼はどうやらそのバスでないらしく、それに乗るんですかと、問うようなまなざしで僕を見ていた。


「では僕はこのバスに」そう言いかけて、バスの方へ一歩踏み出してから思った。 

どうしよう、あの人まだ何か話したそうだし、このままこれに乗ってもいいものだろうか。バス一台遅らせて話を聞いてみようか。でも次のバスまで三十分もある。今日は少し疲れているし、さらに三十分も待つのキツイな、やっぱりこれに乗ろう。あの人にはまた会えるだろうし、話は次に機会に聞けばいいんだし。


そう結論を出して、今度は彼に向かって会釈しながらはっきり言った。

「あのう、僕このバスに乗りますから、いつもだいたいこんな時間にここから乗りますので、また次にお会いしたときに」


僕のその言葉に、彼は少し名残惜しそうな表情を見せたが笑顔はくずさず、「はい。じゃあその時に」と言って、ゆっくり頭を下げていた。


バスが発車して駅前を左折してからも、まだその紳士のことが気になっていた。


「実はこの雑誌なんですが」で途切れた、いや途切れさせてしまったあの言葉、いったい後にどういうことが続くのだったんだろうか?それにしても全身に漂わせいたあの上品な雰囲気、人口六十万のこの地方都市にだって、あの歳のあんな人はめったにいるもんではない。ああ言って別れたんだから、近いうちにまた会えるには違いないけど、こんな気持ちになるんだったら、例え三十分待つにしても次のバスにして、話の続きを聞けばよかったのかも。


そんな後悔めいたことを考えながら、ふと気がついて手にしたままのリベーラの表紙をまじまじと眺めていた。


その次の日、昨日とほぼ同じ時刻にバス停にやって来て、今度はスタンドで買ったスポーツ紙を読みながら立っていた。十分ほど待って昨日乗ったバスがやって来て、ぼく以外の数名を乗せて発車した。


そこへ行く前から、今日はたとえ一~二台やり過ごしてもあの人の話を心ゆくまで聞いてみよう。と決めていただけに、次のバスを待つことになんら苦痛めいたものは感じなかった。


でもそれにも限度があった。そこでおおかた三十分ちかく立っていたのに、いっこうに昨日の初老の紳士が現れるけはいはなく、僕は少しソワソワしはじめていた。


昨日、別れ際に確かに言ったはずだ。「いつもだいたいこの時間にこのバスに乗りますから、お話は次にお会いしたときに」と、そして彼も「はい。じゃあその時に」と答えていた。


それを今日だと思うのはこちらの勝手なんだけど、でもまあいいか、もし今日会えなければまた明日ということもあるんだし。


そんなふうに考えながら、昨日は話の腰を折って、自分の方から先にバスに乗ってしまったというのに、一夜明けただけの今日は、その話の続きを聞くために、今度はあっさりバスをやり過ごしてまで、くるという何の保証もないのに彼のことを熱心に待っている。


そんな自分が我ながら滑稽に思えてきて、思わずニタッとした照れ笑いを浮かべると、それをスポーツ紙の紙面に投げかけていた。

つづく


次回 5月7日(木)

2026年4月27日月曜日

30代のはじめ頃だったが、ある日、親しくもなかった顔見知りの女性が職場を訪ねて来たのは何故? (Part 1~2)の2

    GEMINI



(part 2)


Aさんはなぜ親しくもなかった私に頼み事をするため職場までやってきたのだろうか


このシリーズPart 1では、Aさんが私の職場を訪れてきた目的は生命保険の勧誘であったこと。それに対して、私はよく検討もせず、安易に承諾し契約を結んでしまったことを後で深く後悔したところまで書きました。


その続編として、このPart 2`は始まるのですが、まず書きたいのは、そもそもAさんはどんなプロセスを経て私を訪問することを決めたのかということです。この点がとてもミステリアスで私にはよくわからないのです。


というのもAさんと私はRホテルの親会社である株式会社Sホテルに同期入社した間柄というだけで、別に親しくお付き合いしたこともありません。いうなれば出会ったときに挨拶を交わす程度のうすい関係の間柄でしかないのです。


それに私は親会社を離れて傘下のチェーンであるRホテルへ移動し、さらにその後ホテルPへ転身したのです。その間7年間Aさんには全く会っていません。


それ故にAさんの存在は忘れかけていたのです。これはAさんにしても同じことで、7年も会っていない私のことなど、とっくに忘れて去っていていいはずです。


そうした状況で、Aさんが突然私を訪問してきたことが解せないのです。それに合わせて気になったのは次のタイトルにある点です。


7年以上会っていないのに何故Aさんは私の新しい職場がわかったのだろうか


上に書いたようにǍさんには7年以上会っておらず、その存在すら忘れかけていましたのです。それ故に突然訪問を受けた時の驚きが大きかったのです。


驚きだけではありません。不思議なのはなぜAさんが私の新しい勤務先を知っていたのだろうかということです。


系列のRホテルへの転籍については、社内ニュースなどで知り得た可能性がありますが、その後のホテルPへの転身は部外者は知り得ないことなのです。


なのにAさんは私の新しい勤務先を知っていたのです。いったいなぜなのか、この点がまったく解らないのです。


Aさんはこれまでどんな人生をたどってきたのだろうか


親しくもない私に保険の勧誘にきたAさんについて私はいろいろ考えたのですが、結論から言えることは、彼女は決して幸せな人生を歩んできていないのでは、ということです。


周りの誰もがうらやむほど、抜群の美貌を持つ彼女なら男性にも持てたはずです。


それ故に経済力のある男性に恵まれ、幸せな結婚生活を送っていても不思議はないはずです。


でも実際の彼女は、若い女性にとって決して良い職業とは言えない(当時は)、保険のセールスという厳しい世界に身を投じていたのです。


私には「これには何か深い事情があるに違いない」と思えて仕方がないのです。



ひょっとして悪い男に騙されて不幸な人生を送っているのかも


特別親しくもなく、もう何年も会っていないAさんが、突然私を訪ねてきて、しかもその目的が保険の勧誘だったということに対して、私はどうしても納得できないどころか、事態のこうした成り行きに対して、何か陰謀めいたものさえ感じてきたのです。


それもそうでしょう。単なる顔見知りであいさつ程度しか交わさない相手で、しかも何年も会っておらず、消息さえ掴みにくい相手を探し出し、保険の勧誘に出かける。このようなことは、普通に考えて世間一般ではあり得ないことだからです。


陰謀めいたものを感じるというのは、この計画が彼女自身が考えてものではなく、誰かにそそのかされてのことなのではないか。と思えるからなのです。

その誰かとは、彼女が交際している男なのではないか。その男はかつて私と職場が同じで、私とは親しい関係にあって、私のことをよく知っている人物なのかもしれない。


それ故に私の消息もよく掴んでおり、当然その後の私の職場についても知っていたのだろう。それを交際相手のAさんに教え、保険の勧誘を指示したのかもしれない。


そうだ、Aさんの行動は交際している男にそそのかされてのことなのではないだろうか。こう考えると、不思議に思えたAさんの行動も納得できるではないか。


長い人生では理解に苦しむような出来事の遭遇することもある


私の古い知り合いで悪い男。と考えると、2~3人の姿が頭に浮かんできて、この中の誰かだろうか、と思ったりしました。


でも私は、この件に関してこれ以上考えるのは止めることにしました。


いくら考えてもキリがなく、憶測を生むだけで決して明快な結論には達し得ないと考えたからです。


長い人生には、時として、まったく理解に苦しむようなことに遭遇することがあるものです。


こう考えて、ここまでで、この話を終りにすることにしました。







2026年4月23日木曜日

1冊の本を借りるのに、なぜこれほど長い期間待ち続けるのだろうか

 

図書館 本の予約  なんと「20カ月待ち」や「16カ月待ち」もある!



 20か月待ち         16か月待ち



下のリストは、とある図書館(姫路市)における本の予約リストです。


入り口の掲示板に貼ってあるのですが、小説を借りたい人には役に立つ良いリストだと思います。


「へえー、こんなリストがあるのか」と思って内容を見てみると、驚くべきは、その待ち日数の長さです。


上の写真にもあるように、待ち日数が驚くほど長いのです。


なんと、最も長いのが20カ月、次に長いのが16カ月というのです。2冊とも1年を大きく超えるではないですか。


しかし1冊の本を借りるためにこんなに長い間待ち続けることが出来るものです。私だとこれほど長く間隔を開けると興味を失ってしまいそうです。



これほど長い間待つほど、良い(おもしろい)本なのだろうか


二つ目に不思議に思うのは、これらの本が、それほど長い間待つのに値する本なのだろうか、という点です。


2冊の本の作者は「湊かなえ」と「東野圭吾」で、いずれも人気作家です。二人ともエンタメ小説分野ではトップクラス人気がある人たちです。


それだけに過去においてベストセラーになった作品が多く、熱心なファンもたくさんいます。要は二人とも推しファンが多いのです。


でももしそうだとすればなぜ購入して読まず、図書館でこれほど長く待ち続けるのでしょうか。これは大きな疑問です。


ちなみに、これらの価格ですが、「暁星」が1980円、「マスカレードライフ」は2200円です。


これでわかるように、以前に比べて驚くほど 値段が上がっているようです。


図書館の予約待ちが増えるのは、最近、本の価格が異常に高騰していることが、大きな理由になっているのではないでしょうか。



    姫路市飾磨図書館「本の予約リスト」

2026年4月20日月曜日

AIは小説コンテストも席巻か

 

       日本経済新聞から



AIによる作品と人の作品の区別は困難


2026年の日経・星新一賞において、AI(人工知能)が執筆した小説が、人間の手による作品と全く区別がつかないレベルに達していることが証明されました。 


具体的には以下の状況が報告されています。


審査員の驚きと困惑: 最終審査会にて、6人の審査員が「AIによる作品か、人間の手による作品か全く区別がつかない」と困惑の声が上がり、AIの圧倒的な表現力と創造性が認められました。


AI作品の席巻: 受賞作4作品のうち3作品がAIを使用した作品であることが判明し、AIが文学賞の場を席巻する事態となりました。


今後の議論: この結果を受け、AI作品の審査引き受けの拒否や、「人力小説部門」と「AI部門」を分ける可能性が示唆されるなど、文学の定義やAIの評価基準について議論が起きるなど大きな影響を与えています。

 

2025年には芥川賞を受賞した九段理江さんの「東京都同情塔」も「全体の5%は生成AIの文章」であることが話題になりました。


この傾向から、AIが人間のような文章を書くことは既に日常的な風景となっており、今後は「AIの作品」をどのように評価・受容していくかが重要な焦点となっています。 


2026年4月19日日曜日

売れっ子作家浅田次郎にも苦難の時代があった・貧乏時代の「新年の誓い」とは・再掲載シリーズ No.23


初出:2018年1月12日金曜日         更新:2026年4月19日



今を時めく人気作家の駆け出し時代とは


いつも思うことだが、この作家のエッセイはテーマが興味深く読みごたえがある。


作家の書いたエッセイは、たとえ人気作家と言えども、必ずしも内容が優れているとは限らない。


なぜなら作品を書きすぎてネタ不足に陥り、同じテーマを何度も書くことがあるからだ。


そのよい例は、少し前に取り上げたことがある美人女優を二人も妻にしたことで有名な作家IS氏の作品である。


この作家のエッセイ作品は、テーマに新鮮味が乏しく、つまらない内容の作品が多い。


なぜならエッセイ集だけで50冊以上出しているためネタ不足になっているからだ。


その結果過去に取り上げたことがあるテーマを切り口を変えただけで書いた作品が多い。


その点浅田氏の作品は取り上げたテーマがどれも新鮮で、それだけでも魅力がある。


また文章が美しいだけでなく、内容が示唆に富んでいるので読んで勉強になる。


今回の作品には特に印象に残った部分があったので、それを書き残しておくことにする。


著者には毎年正月にその年の目標を書き留める習慣があるが、33歳の時の昭和59年に新年の誓いとして、エッセイ集「かわいい自分には旅をさせよ」に次のように書いている。


なおこの時代はまだ駆け出しの頃で、年中貧乏生活に明け暮れていた。



作家浅田次郎 ・ 「昭和59年度の目標」



一つ、新人賞をとる

具体的にどこの新人賞をとるかは書いていないが、おそらく群像、すばる、文学界などを目指していたのであろう。

すべて応募したことは間違いないが、もちろん目標は達成されなかった。


一つ、金鵄のもとに(小説のタイトル)を脱稿する

この小説は東部ニューギニア戦を題材にした長編戦記で、真剣に取材もして、資料も集めたが、結局脱稿どころか今日にいたるまで起稿すらしていない。


一つ、毎月30万円ずつ家計に入れる

これは多分実行されたと思う。小説を書くことで家計を圧迫したためしがない。ただし年頭の誓いにこれがあえて付け加えられたのは、それなりにかなりの努力をしたということであろう。


一つ、歯を入れる

これは極めて具体的に当時の当時の暮らしぶりを思い起こさせるが、長いこと歯が欠けていたのである。そんな人相では運など好転しないと分かっていても歯医者に行く金がなかった。


一つ、〇〇に借金を返す

この項目が幾つか続く


一つ、住民票を移動する


一つ、健康保険をもらう


一つ、子どもを幼稚園に入れる


※買いたいもの

ジューサー、ホットプレート、本箱、整理ダンス、バイク、電子オルガン、電話、靴


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いかがでしょうか。このようなことをエッセイ集に書き残すこと自体がこの作家のあたたかい人間味のあらわれです。


特に「毎月30万円ずつ家計に入れる」「歯を入れる」「〇〇に借金を返す」などの記述には当時の貧乏生活がにじみ出ています。


また「買いたいもの」の内容を読むと、ほほえましくなり、思わず頬がゆるみます。


今をときめく人気作家の貧乏時代の人間味溢れるこうした記録は、読む人の心を和ませるだけでなく勇気と希望を与えてくれます。


2026年4月16日木曜日

T.Ohhira エンタメワールド〈5〉下津さんの失敗・ナイトボーイの愉楽②(12)最終回

    

                 

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                                12


「お前知ってるかなあ、ちょこちょこここへ泊るポルノ女優の〈青木かおる〉って人」


「ええ知っていますよ。一度チェックインを担当したことがあります。背はあまり高くないけど色白でぽっちゃりしたひとでしょう。歳は二四~五の、でもその人が何か?」


三ヶ月ほど前チェックインに当たったとき、チップはくれなかったけど「どうもありがとう」と、少し甘ったるい声で言いながら、セクシーな流し目で道夫を見た、あの妖艶な青木かおるの姿を思い出しながら、道夫はやや不審なおももちで答えた。


「下津なあ、その青木かおるを客室の中で襲おうとしたんだよ」


森下のズバッと核心をついたその答えに道夫は思わず椅子から腰を浮かすくらい驚いた。


「えっ、何ですって、下津さんが青木かおるを襲ったですって?」


「襲ったんじゃない。襲おうとしたんだよ。あいつ昨夜、彼女のチェックインを担当して、そのときは何もなかったんだけど夜中に彼女の部屋へ行ったんだ。その時に・・・」


「夜中に部屋へ行ったって、それ彼女に呼ばれたんですか」


「うーん、そこがはっきりしないんだ。彼の話だとチェックインのとき、彼女が『何時に仕事終わるの? 終わったら遊びに来ない』と流し目を送りながら言ったというし、彼女の話だと、『部屋へ来いなどと言った覚えはない』と言うんだ。


それはともかく、下津の奴、部屋へ入るなり浴衣姿の彼女の肩に手をかけて、いきなり抱きしめようとしたらしいんだ。


でも激しく抵抗されて、すぐ引き下がって部屋を出たと言うんだが。


どうも両者の言い分が違っててなあ。青木かおるの方は、ベッドに押し倒され、浴衣の中へ手を突っ込まれ胸を激しく触られたと言うんだ。


いずれにしても下津が悪い。自分の立場も忘れて深夜女性客の部屋へ入っていくなんてのは」


そこまで森下の話を聞いて、道夫はその後しばらく言葉が出なかった。そして頭の中では一週間ほど前、深夜のロビーで下津が言った「女もそれを望んでいるんだよ」というセリフだけが頭の中をぐるぐると回っていた。


「それで下津さんはどうなるんですか?」


「まあこれだろうな」 やや間をおいた道夫の質問に、森下は手の平を横にして首にあてるしぐさして呟くように答えた。


「くびですか。でも青木かおるの証言は信用できるんですか?」


「うん、そうとも言えない。なにぶんあの手の女優のこと、自らスキャンダラスな話題をでっち上げて名前を売ろうとすることもあり得るからな。


でも下津が深夜彼女の部屋へ入り込んだのは事実だからな。それは本人も認めているんだし、それが悪いんだ。たとえ青木かおるの証言になにがしの脚色があるにしろ、相手は客だ。安全と信用を売り物にするホテルとしては、この際、やはり客の言い分を立てるのが筋だろうし」


「それでこの事件、外部にも知られたんですか?」


「いや、それはなかったらしいよ。最初は警察に訴えると息まいていた彼女も、支配人と社長の平謝りと何がしかの見舞金で一応は丸くおさまったらしいよ。ただ下津をくびにするという条件つきだったらしいけど」


ここまで森下の話を聞いて、下津が引き起こした今回の事件のあらましをすべて理解した道夫だったが、なぜだか急に体の力が抜けていき、立ち上がるのもおっくうな気がしてきて


あの下津さんがくびになるのかと、言いようのない切なさが胸にこみ上げてきて、頭の中では 「あのな浜田、女とつき合うには手順とやり方があるんだよ」 という下津の言ったセリフが駆けめぐっていた。


(終わり)


次回からは「紳士と編集長」をお届けします。


第一回掲載 4月30日(木)


ご期待ください!