毎年一冊出るシリーズ本 光村図書の「ベストエッセイ」
ベストエッセイシリーズを知ったのは多分2012年頃でした。ということは全部読んだとして今年で14冊になります。でも読書記録を見直してみると記録は10回程度しか残っていません。あと4冊は未読なのでしょうか、それとも記録忘れなのか、記憶になく定かではありません。
一年に一冊づつ出るこのシリーズ、総じていえば良い出版物だと思います。何しろ著名な作家5名の選考委員があらゆる出版物に前年発表されたエッセイの中から秀作を選び出し、一冊にまとめているのですから、良くないはずはありません。ただ、難点がないわけではありません。それを下に並べてみました。
光村図書「ベストエッセイ」シリーズに対する疑問点
1)なぜ人々になじみの薄い出版社が出しているのか
ベストエッセイは出版物としての重要度はかなり高いのでないだろうか。なにしろエッセイは小説の次によく読まれるジャンルであり、それだけに読者も多い。そのエッセイ一年分という膨大な数の作品の中から秀作だけを集めた極めて貴重な本であるのだ。だがこれを出版しているのは人々にあまり馴染みのない光村図書という教科書専門の出版社であるのはなぜだろう。今回取り上げる3つのうち最も大きな疑問点である。
2)掲載媒体が偏っているのでは(雑誌は純文学系が多い)
ベストエッセイに掲載される作品はあらゆる出版物から選ばれると言われているが、例えばエッセイが多く載っている雑誌の一つに文藝春秋がある。どれくらい載っているかといえば、まず巻頭にレベルの高いエッセイが10編ぐらい、また巻末にはジャンル別(例えばオヤジ、おふくろシリーズ)など数種の連載記事欄にも掲載されている。これらを集めるとエッセイは全部で30作品ぐらいあるのではないだろうか。ということは年間で300以上になる。それなのに今回の「ベストエッセイ2024」に選ばれているのはわずか1作のみであるのは、どう考えても解せない。それに作品の多くが、純文学系(群像、文学界、新潮など)から選ばれているのはバランスを欠いているのではなかろうか。
3)選考員にエッセイストが一人もいない
小説家が良いエッセイの書き手であることは認めるが、小説家以上に重視したいのはエッセイのスペシャリストと呼ばれる「エッセイスト」である。ところがこのベストエッセイの選考委員には彼、彼女らが一人も入っていないではないか。いったいこれはなぜだろう。エッセイの有名な賞である、例えば「講談社エッセイ賞」などの受賞者は小説家以上にエッセイストの中から多く選ばれている。
掲載作品はどのように選ばれているのだろうか
AI による概要
光村図書の「ベストエッセイ」に掲載される作品は、毎年新聞や雑誌などに発表されたエッセイの中から、編集委員が特に優れた作品を選定します。選考基準は、心に響く文章であること、時代を超えて読み継がれる普遍性を持つことなどが考慮されます。具体的には、編集委員が多数のエッセイを読み、議論を重ねて最終的な掲載作品を決定します。
詳細:
選考主体:
光村図書出版の編集委員が選考を行います。
選考基準:
心に響く文章であること
時代を超えて読み継がれる普遍性を持つこと
多様な視点やテーマが盛り込まれていること
文章表現の質が高いこと
読者の心に感動や共感を呼び起こすこと
選考過程:
新聞や雑誌に発表されたエッセイを幅広く収集します。
編集委員が多数のエッセイを精読し、候補作品を選びます。
選ばれた候補作品について、編集委員間で議論を重ね、掲載作品を決定します。
編集委員:
光村図書出版のウェブサイトによると、編集委員は、国語教育や文学の研究者、作家、小学校教諭など、様々な分野の専門家で構成されています。
つまり、「ベストエッセイ」は、単に優れた文章を集めるだけでなく、編集委員の目を通して、時代や読者にとって意味のある作品を選び抜いていると言えます。
今回(2024年)特に良かった作品(個人的な好みかも)
・「時折タイムスリップ」 たなかみさき イラストレーター 群像
・「AIと連歌を巻く」ながたかずひろ 歌人 京都新聞
・「爪を塗る」たかせじゅんこ 小説家 日本経済新聞
・「当たり前の幸せ」ズラータ・イヴァンシコワ 作家 JAF Mate冬号
・ 「親父が倒れた」 加納愛子 お笑い芸人 小説新潮
・ 「偽の気持ち」 もとやゆきこ 女優 暮らしの手帳
・「下げて上がる一言マジック」 俵万智 歌人 朝日新聞
・「あの人はだれ」 西川美和 映画監督、脚本家 文藝春秋
・「寄り添ってくれる感覚」 なかむらふみのり 小説家 毎日新聞
・「男性と化粧の五十年」 やまむらひろみ モデル 群像
・「おっぱい足りてる?」 燃え殻 小説家 週刊新潮
・「いま暇ですか、時間ありますか」 堀江敏行 小説家 すばる