2025年9月2日火曜日

アマチュアによる優れたエッセイ作品2点ご紹介


図書館にはいろいろな本があるが、時々目にするのは、アマチュアが書いた本である。

いわゆる名の通ったプロの小説家や作家のモノではなく、物書きを生業としない素人の人の作品である。

寄贈という形をとって図書館に寄せられたもので、作品としては自伝風のものが多いようだ。

目にしたものの、こちらとしては名も知らない素人の人が書いた作品を読んでみようという気は起こらない。したがってすべてスルーしてしまうのがこれまでだった。

だが今回は違った。目に留まったのは素人の作品には違いないが、ありきたりの伝記ではなく、テーマに魅力があり、読んでみたいという気にさせられたのである。

偶然にも2冊見つけたのだが、1冊目は「終の棲 ホームの日々」という作品である。いわゆる老人ホームの生活体験記であり、テーマとしてはそれほど珍しくはなく、よくあるジャンルである。

では何に惹かれたかといえば


(1)いわゆるお金持ちだけが入ることができる超高級老人ホームが舞台になっている

(2)入居一時金数千万円、これほどの高級老人ホームにはどんな人たちが入居するのか

(3)高級老人ホームでの日常生活はどのようなものか


などの点である。


で、読んでみての感想はというと、


(1)であるが、高級老人ホームにもランクがあるが、今回舞台になっているのは最高級に属するところのようである。それは食事のメニューによく表れている。たとえば節分の日のメニューをご紹介すると、



どうですか、節分特別料理とはいえ、高級ホテル顔負けの豪華さではありませんか。


(2)男性入居者は女性の3分の1程度のようだが、現役時代の職業を見てみると、医師、大手企業重役などがざらで、お金持ちが頷ける。


(3)入居者はお金持ちだから、当然インテリが多い。だが、すでに認知症にかかっている人が少なくなく、一部を除いて、日常生活からはそれほど知性を伺うことができなかった。


終の棲 ホームの日々

北沢美代・著




「わたしは、人生の終末に、なぜ家族の介護より、

有料介護老人ホームでの最後を選んだか。」


自分の老後を考えはじめた時、私は家族の介護ではなく老人ホームを選んでいた。それで、取り寄せたカタログを読み、見学し、説明を受け、自分で決めて入所した。


「社会性を持った大きな家族」これはホーム長から聞いた言葉だ。「みんなで頑張れ!」これは九十歳に近いおばあちゃまから聞いた言葉だ。「(介護を)かっこいい」これは新人スタッフから聞いた言葉だ。「人それぞれ、その人らしさに寄り添う介護、その理念がボクは好きだったんです」これは今朝廊下を小走りしていたスタッフの言葉だ。これらの言葉、思いがスタッフと入居者の「ホームの生活」に具現化していった、そう確信して、願っている。




(内容説明)

高齢者福祉の現状と未来を考える。施設の日々から浮かび上がる「老後」の課題と、介護に携わる若者世代の諸問題。社会の縮図としての介護を見つめ、我々が直面する問題と解決の糸口を探る、終の棲(ホーム)の記録。


(目次)

第1章 介護は一方的に提供されるものではない(人生一〇〇年時代;幸せの循環型ホーム)

第2章 これが老いなのか、誰もが迎える不確かな世界(時代が停まったのね;腰がぬけちゃうわよ ほか)

第3章 老人ホームを終の棲に決めたのは(ひとりの思いから;この転倒が家で起こっていたら ほか)

第4章 入居して見た、平均年齢九十歳の生活(老人ホームはけんちん汁そば;追稿 八十年余を生きた人と出会える家、ホーム ほか)

第5章 ありがとうの循環、自己肯定感を共に育む老人ホームへ(再び「あしなが育英会」;時代と共に世相、生き方が変わる ほか)

著者等紹介

北沢美代[キタザワミヨ]

1941年生まれ。早稲田大学教育学部卒。龍口直太郎教授研究室秘書、翻訳業、家庭教師などを経て、1971年株式会社アサヒ健康事業部入社、1975年ミズ(MYS)株式会社取締役、1988年株式会社エコロジーヘルスラボ(EHL)代表取締役、1995年同辞任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

出典:紀伊国屋ウェブ


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さて続いて2冊目であるが、こちらは「書くべきこと-統合失調症の俺が歩んできた道ー」という作品であるという作品である

サブタイトルでわかるように、統合失調症という精神病を抱えた人の自伝である。


一般的に見ず知らずの素人の自伝には興味はわかないが、今回は重い精神病との闘いがテーマになっている点が普通の人の伝記とは異なる。


統合失調症は以前は精神分裂症と呼ばれ、精神病の中では最も症状が重いものの一つで、本人はもとより家族に重大な悩みを与える深刻な病気である。


とはいえ、筆者の症状はそれほど重篤とは言えないが、それでも日常的な些細なことから起こる他人に対しての、激しくて攻撃的な暴言に長い間悩まされ続けている。



書くべきこと  ― 統合失調症の俺が歩んできた道 ー

澤光邦 著





(内容説明)

生きている今をこそ大切にして、生きた証を残したい!―すべての人に伝えたい、病気の真実。


(目次)

悟おじ

日野を怒鳴り、和解したこと

日々悩まされる自意識過剰

映画を見に行った日の出来事

おもちゃへのこだわり

高校野球に侵食されてきた人生

校歌

コミックとマンガ描き

書道をとりあげられたこと

元気だった三十代の頃〔ほか〕

著者等紹介

澤光邦[サワミツクニ]

1961年長野県生まれ。2001年『ガラスの壁―分裂病になった俺』(晩聲社)を出版(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

出典:紀伊国屋ウェブ