ポジティブな発言も良いのだが
己を知った上での謙虚な発言が大切
夏のスポーツの一大イベント
全国高校野球大会が間もなく始まります。
日本各地で予選を勝ち抜いたチームが甲子園球場に結集します。
この時期、おそらく出場が決まった全チームの選手が胸躍らせた開会式を待っていることでしょう。
ところで、地方予選の決勝戦で優勝したチームのキャプテンのインタビューで少し気になる点があります。
それはアナウンサーが甲子園での意気込みを聞いたとき、ほとんどのチームのキャプテンが「優勝を目指して戦います」と応えていることです。
もちろん決選を前にしたポジティブな発言は意識高揚の意味でも悪くはありません。
でも聞いてる人にとっては、ほとんどのチームの「優勝を目指す」という発言に対しては違和感を感じる人も少なくないでしょう。
なぜならひと昔前だとこうした発言は滅多に聞かず、せいぜい「まず一勝を目指します」とか、「一戦一戦大事に戦います」などというやや控えめな応えがほとんどであったからです。
時代とともに高校球児の意識が変わったと言えばそれまでですが、甲子園では優勝は地方予選の優勝とは訳が違います。
言うまでもなく地方予選とはレベルが格段に高いからです。
とはいえ、その高いレベルに達したチームもないわけではありません。いわゆる優勝候補と目されるチームです。
そうしたチームのキャプテンが「優勝を目指します」というのは納得できます。
しかし、地方のレベルや過去の実績から、どう見ても優勝を口にするのは10年早い、と思われるようなチームに「優勝」という言葉は馴染みません。
したがって身の程知らずの軽はずみな発言ともとられかねません。
こうしたチームは、ひと昔前のキャプテンが答えていたように「まず一勝をめざします」というような謙虚な応えこそふさわしく、好感がもてます。
軽々と優勝という言葉を口に出したチームが、1回戦敗退ということもじゅうぶん考えられます。
そんなことになれば軽はずみで大口をたたいたことが恥ずかしく思われ、屈辱的な思いは一層増すのではないでしょうか。
有名な孫氏の兵法という戦いに関した言葉の後半にこんな一節があります。
「彼を知らずして己を知らざれば、戦うごとに必ず危うし」
チームの指導者はこうした強気一辺倒のインタビューでの発言に対して、謙虚な姿勢を基本にした応答の指導が必要なのではないでしょうか。