なぜ値段の高い専門的?な本ばかりを紹介するのか?
長年にわたる文芸春秋の読者ですが、2017年11月号の書評(文芸春秋BOOK倶楽部)には少なからず違和感を覚えました。
下に挙げたのが今回紹介された本の題名及び価格、それに書評を書いた人の名前です。
まず第一に気になるのは、4冊のうち3冊の値段が一般的な本に比べてすいぶん高いことです。
特に「メコンを下る」と「魅了されたニューロン」は専門書並みで、一般人は手を出しにくい価格です。
「ラボガール」にしても税込みで2,808円で、3,000円近くなりますから、普通の人は購入意欲をそがれます。
4冊のうちで誰でも手が届きそうなのは1,600円の「宿題の絵日記帳」だけです。
・メコンを下る 5,500円(税別)
(評者・角幡唯介⇒冒険家 )
・魅了されたニューロン 3,600円(
同 ) (評者・片山杜秀⇒慶應大学教授 )
・ラボガール 2,600円( 同
) (評者・本郷恵子⇒東京大学教授 )
・宿題の絵日記帳 1,600円(
同 ) (評者・角田光代⇒作家 )
次に書評を書いた評者についてですが、4人のうち、冒険家の角幡氏を除く3名は作家と大学教授で、いわば本を読むのが仕事のような人たちです。
特に片山氏と本郷氏は学者ですから、日ごろから難しい本を読みなれているでしょう。
それをよく示すように今回両氏が選んだ本はいずれも専門的と言ってもいいような内容の書物で、あまり一般受けはしないのではないでしょうか。
それに比べて、角幡氏の「メコンを下る」は専門的とは言えませんが、6,000
ページにも及ぶ大長編であることと、並外れた価格がネックになり、一般の人にはいささか敷居が高い本です。
この点からすると内容、価格とも、紹介に値するのは角田光代氏が書評を書いている「宿題の絵日記帳」だけではないでしょうか。
文芸春秋の読者には本好きの人は多いでしょうが、ほとんどの人たちが求める本は万人に愛されるような内容のもので、専門的なものを求めている人は少ないはずです。
今回紹介された4冊のうち上3冊は、価格面だけでなく内容的に高尚すぎるきらいがあり、それだけに共感を覚える人は少ないに違いありません。
なお、よく行く大型書店の新刊コーナーを覗いてみると、新刊の話題書の棚に陳列されていたのは「宿題の絵日記帳」だけでした。
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