書評「韓国社会の現在」春木育美・著 中公新書
若者の就業率、教育費負担、男女の賃金格差など先進国の中で"最悪"の数値を示す韓国。
「圧縮した近代」の結果、特に1を切った出生率、60%が無年金者という高齢者の貧困率・自殺率は深刻だ。
他方で問題解決のため大胆な政策を即実行し、デジタル化などは最先端を行く。
本書は少子高齢化、貧困・孤立化、デジタル化、教育、ジェンダーの5つを柱に、深刻化した現状と打開への試行錯誤を描く。韓国の苦悩は日本の近未来でもある。
出典・Amazon
もくじ
第1章 世界で突出する少子化―0.92ショックはなぜ
第2章 貧困化、孤立化、ひとりの時代の到来
第3章 デジタル先進国の明暗―最先端の試行錯誤
第4章 国民総高学歴社会の憂鬱―「ヘル朝鮮」の実情
第5章 韓国女性のいま―男尊女卑は変わるか
終章 絶望的な格差と社会―若者の活路は
(著者紹介)春木育美[ハルキイクミ]
1967年東京都生まれ。韓国延世大学校大学院修士課程修了、同志社大学大学院社会学研究科博士課程修了(博士・社会学)。慶應義塾大学研究員(PD)、東洋英和女学院大学准教授、東京大学非常勤講師、米国アメリカン大学客員研究員などを経て、早稲田大学韓国学研究所招聘研究員、(公財)日韓文化交流基金執行理事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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《 これが韓国のシビアな現実(内容紹介 本書より抜粋)》
驚くほど低い高齢者の年金
平均受給額5万円 50%は3万円以下
貧困と聞けば、子どもの貧困、女性の貧困、そして高齢者の貧困などがよく耳にするキーワードだが、韓国で特に問題になっているのが高齢者の貧困である。
65歳以上の高齢者が頼りにするのは年金であるのは万国共通であるが問題は受給額であり、その多寡が幸せ度を測る尺度になると言っても過言ではない。
言うまでもなく受給する年金額が多いほど幸せの度合いは高くなるのだ。
では韓国の場合がどうかというと、はっきり言ってこの数値は極めて低い。
最新のテータによる韓国高齢者の平均年金受給額は5万円強でしかない。
とはいえこれはあくまで平均であり、データによればこの内50%が3万円以下になっている。
つまり全高齢者の半分が月にわずか3万円以下で生活をしのいでいるのである。
これを高齢者の貧困と言わず、他になんと言えるだろうか。
まさに今の韓国は貧困にあえぐ高齢者で満ちているのだ。
日本以上に進む晩婚化
日本でも結婚しない若者が次第に増え、いま晩婚化が深刻な問題になっているが、驚くなかれ韓国はその日本の上を行っているのだ。
近年の日本と韓国の初婚年齢は次のようになっている。
(日韓 平均初婚年齢比較)
日本男性 ⇒ 31.1歳
日本女性 ⇒ 29.4歳
韓国男性 ⇒ 33.2歳
韓国女性 ⇒ 30.4歳
出生率低下で急ピッチに進む人口減少
人口の増減を決める最大の要因は出生率である。なぜなら「出生者数-死亡者数」で人口増減が決まるからである。
ところが近年の韓国は出生者数を死亡者数が上回っているのである。言うまでもなくその結果生じるのが人口減少なのだ。
日本と韓国 出生率比較
日本 ⇒ 1.42
韓国 ⇒ 0.96
労働力確保を南北統一に期待
晩婚化が大きな原因になっている韓国の急激な出生率低下だが、人口が減少すれば当然のごとく労働力が不足してくるがその解決策にについて意外なところに目をつけている。
それは将来的な南北統一に望みをかけているのである。つまり、韓国より若年層が多い北朝鮮を統一することにより労働力不足を補おうという魂胆なのである。
しかし南北朝鮮が冷え切った状態にある今、たとえ将来的なこととはいえ、こんな楽観論の実現が可能なのであろうか、疑問が多い。
街は仕事がない若者で溢れている
労働力不足が心配される一方、いま韓国は若者の失業者で溢れている。
これはひとえに求職者と求人者のミスマッチが起きているからだ。
いま韓国は世界有数の高学歴国家になっている。したがって求職者の圧倒的な数が大卒の高学歴を持つ若者で、それ故に職業に対する選択眼が厳しい。
要するに高学歴にふさわしい高収入職業の選択意識が強いのだ。
とういうことは当然のごとく一労働力として安易な妥協はせず、希望する職種に就けないのなら失業もいとわないのである。
かくして街には高学歴の若者の失業者が溢れるのだ。
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