脚本家に必要な資質は 胃が丈夫、おしゃべり、嘘つき、の三つである、と著者は言う
テレビをあまり見ない人でもおそらくジェームス三木の名前を知らない人はいないのではないでしょうか。
なぜなら、たまにしか見ないテレビドラマでも、脚本担当がジェームス三木であることが少なくないからです。
80歳を超えた今は一時ほどではありませんが、ジェームス三木は、これまで数えきれないほどの作品を書いてきた売れに売れた脚本家なのです。
そんな売れっ子脚本家が81歳になって始めた書いたのが今回の自伝「片道の人生」です。
なにしろジェームス三木と言えば、テレビを観る人々をいつも惹きつけている人気抜群のシナリオライターです。そんな人の書いた自伝ですから面白くないはずがありません。
この本は伝記とは言え、すべてのテーマをきっちり2ページにおさめエッセイ風に書いていますから、読みやすさという点でも抜群で、テーマ数が多く、ページ数の多い本にもかかわらず何の抵抗なくスイスイ読み進むことができます。
著者は冒頭で脚本家に必要な資質を挙げています。
それは、胃が丈夫なこと、おしゃべり、嘘つき、の三つで、いずれも自分にピッタリ当てはまる、と書いています。
まず胃がじょうぶなことですが、これは脚本が出来上がるとドラマ制作に携わるいろいろな人から意見が百出し、中には批判的なものも多く、それに対抗するには気が弱くては無理で
気が強く胃がが丈夫な人でなければ作品に対する注文や批判に耐えきれず、ストレスで仕事を継続することが困難になる。というのが理由です。
おしゃべりであること、というのは、完成した脚本について会議などで検討会が開かれた際、おしゃべりで口達者でなければ、作品に対してはっきりとした主張ができません。
そうなれば周りの人の批判的な意見に左右されたりして書き直しさせられることが多くなる、ということ。
最後の嘘つきに関しては、ドラマそのものが妄想の産物であり、まことしやかに人物を描き、ストーリーをでっちあげるもの、だからだそうです。
三つとも、なるほどと納得できました。
確かな感性が人をひきつける
人を惹きつける面白いドラマを書き続ける人気脚本家ともなれば、鋭い感性がないと務まるものではありません。
読んでいて著者の卓越した感性を随所に感じましたが、多くの中から一つだけ具体的な例を書いておきます。
テレビなどの天気予報について触れていた文章にこう書いてありました。
「日本の天気予報ではお天気キャスターが天気の予報だけでなく、傘の持参や服装まで助言しているが、あれはおこがましいことだ」。
これについては私自身もかねがね感じていたことで、傘の持参や服装について助言するキャスターに対しては、「要らぬことを言わなくても良い」と、いつも呟いていましたので、偶然とはいえ、高名な脚本家と感性が一致したことを、すごく喜ばしく思っています。
抜群のユーモアセンスは外国人をも魅了する
著者は海外旅行が好きで、これまでに世界のあらゆる国を回っていますが、その行く先々で現地の人々を惹きつけ、好感を持たれているようですが、それは著者の持つ抜群のユーモア感覚のおかげに違いありません。
この本の中でもユーモアあふれた多くのダジャレを紹介していますが、素晴らしい出来のものが多く、読んでいて何度も噴出してしまいました。ここでそんなダジャレの一部をご紹介することにします。
●ダジャレを言うのはダレジャ?
●スェーデン食わぬは男の恥
●旧中山道(きゅうなかせんどう)を「1日じゅうやまみち」と読んだ人がいた
●高齢者は帽子をかぶって廊下を歩くと老化防止になる
●遺産を多く残すと、胃酸過多で相続人の胃が悪くなる
0 件のコメント:
コメントを投稿