(この本のサブタイトル)
人類に突き付けられた21世紀最悪の難問
2016年はテロと難民問題で世界中が揺るがされた年でした。
特に中心になったフランス、ドイツをはじめ欧州各国の首脳はひっきりなしに発生するテロと難民受入れ問題の対応に迫られ、息つく暇もなかったのではないでしょうか。
テロはさておき、今回ご紹介する「シリア難民」という本はイギリス人ジャーナリストによって書かれたものです。
難民には政治難民と経済難民がありますが、なんといっても悲惨なのは政治難民の方で、今回テーマになっているのは戦火で住む場所を追われたシリア難民ですから、その悲惨さはことさらです。
本書はハーシムという名の一人の難民を主人公にして、彼が目的の地であるスエーデンにたどり着くまでの苦難に満ちた旅路を追ったものです。
国を追われる人々に密航を煽る悪徳業者たち
難民問題で忘れてはいけないのは難民の渡航に介入する密航業者の存在です。
そもそも今のように難民が爆発的に増加したのは密航業者が国を追われる人々に向けて、脱出のために密航を煽っていることが原因とも言われています。
それをあらわす一つの例は、フェイスブックに徒歩で目的地を目指して移動しようとする人々に対して、密航業者の手による詳細なルートが記載されていることです。
こうした綿密な手配を下す一方、密航業者が難民たちを航海で運ぶ船は、驚くべきかな、単に空気を入れるだけで用を足すゴムボートも少なくなく、しかも30人ほどの定員なのに、倍の60人ぐらいを乗せるのも珍しくないのです。
このように、航海用の船が粗末なゴムボートであることが少なくないばかりか、倍にも及ぶ定員オーバーが日常茶飯事なのです。
これだと航海中に沈没する船が多くなるのは目に見えています。
でも国を脱出する人々はそうした危険を知りながら新天地を目指したいばかりに、あえて航海に踏み切るのです。
密航業者はそうした難民の心情を逆手にとって危険と背中合わせのあくどい商売を続けているのです。
とはいえ、航海中に多くの難民が命を落とす現状を見かねて、欧州各国はこれ以上犠牲者を出すまいと
密航業者の取り締まりに力を入れ始めています。
その甲斐あって、このところ航海中に命を落とす難民は少しずつ減ってきているようです。
それにしても、記事の表題にもしている、この本のサブタイトルである「人類に突き付けられた21世紀最悪の難問」というのは、実に的を得た表現ではありませんか。
とはいえ、それほどの難問であるだけに、今後も簡単には解決できないことは確かなようです。
この本のテーマに関連して、今年に入って米国の新大統領であるトランプ氏が、アフリカや中東など7か国からの入国禁止令を出したのが大問題になっています。
果たしてこの問題は、今後どのように落ち着くのでしょうか。
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