あの人との出会いが人生を決めた
自伝や回顧録などで、「あの人との出会いが私の人生を決めた」とか「あの人との出会いが無かったら今日の自分はない」などという言葉をよく目にします。
これは人との出会いがいかに貴重なものであるかかを言い表すときによく語られる言葉です。
日常で会えない人にも本の上では出会うことができる
手元に一冊の本があります。あまり新しいものではありませんが、タイトルは「教養脳を磨く」というもので、有名な脳科学者・茂木健一郎氏と作家で書誌学者である林望氏による対談集です。
対談集ということは二人が面と向かって話したことが本にまとめられているのですが、本のタイトルのごとく、いずれも教養人としてよく知られている学者二人が教養について語っているのです。
ということは、この本を読めば高名な方の教養についての考えが分かるのです。
考えてみればこれは凄いことではないですか。なぜならお二人とも日本を代表するような立派な学者であり、学生ならいざ知らず、市井の一般人が簡単に会える方々ではありません。
でもそんな方々にでも本の上だと楽々会えるのです。誌上でこの方々が本気で語ったことを直に聴くことができるのです。
質問こそできませんが、これはその人に直接会って話を聞くことと大きく変わるものではありません。
人に会うことの価値は、話を聞くことによりその方の人としての考え方を知ることです。
それを自分の考えに照らし合わせて、共通点や異なる点を比較することです。
こうすることによって自己を改善したり、改革することによって人としての進歩を図っていくのです。
読んだ本の数だけ著者との出会いがある
人生で出会うことのできる人の数は限られています。ただ会うだけならある程度の数が可能でしょうが、上で書いたように大きな影響を受けた、という程の出会いは稀です。
ところが本の方はどうでしょうか。本に出会うためには、まず図書館か書店に行きます。そこにはあなたとの出会いを待つ多くの本が待ってくれています。
ここで本とのお見合いが始まるのです。とはいえ、人とのお見合いと違って、選ぶのはこちらからだけで、相手がこちらを選ぶことはありません。したがってこちらの好み次第で好きなものを選ぶことができるのです。
だからこそ出会いの数が大きく広がるのです。言い換えると選んだ本の数だけ作者との出会いのチャンスがあるのです。
人を知るには小説よりエッセイの方が良い
本との出会いは作者との出会いです。つまり本を介して、それを書いた著者その人に出会うことなのです。なぜなら本に書いていることを通して、著者の人間としての考え方、生き方が伝わってくるからです。
このことにこそ本を読むことの最大の意味があるのです。私たちが本を読む目的は、自分を改善したり改革したりするためです。つまり今の自分をもっと進歩させようとするために読むのです。
ではこうした目的のためには、どのような本を読めばいいのでしょうか。
本の種類は多様です。小説、伝記(自伝)、評論集、エッセイ、歴史書なと、挙げるときりがありません。
こうした多種多様な本の中からいったい何を選ぶとよいのでしょうか。
もちろんどれを読んでもそれなりに有益なことは間違いありません。でもここでは「人を知る」という目的があります。そのためには、ズバリエッセイがおすすめです。
なぜかと言えばエッセイには書いた人の人となり(人間性)が最もよく表れるからです。つまり書いた人のものの考え方、生き方がストレートに現れるのです。それ故に、まるでその人に直に会うような体験ができるのです。
エッセイだけでなく自伝や回顧録なども良いのですが、これは誰もが書いているわけでなく数に限りがあって選択肢が少なくなります。
ではば小説だとどうでしょう。もちろん小説には私小説という分野があり、これなら作者自身の体験がテーマになっていますから、ある程度人間性に触れることができます。
でも小説で圧倒的に多いのは物語です。これは著者自身の体験を語ったものではありません。したがって著者の人間性に直接触れることはできません。この点はエッセイと比べるとよく理解できるのではないでしょうか。
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