年中締め切りに追われている作家 書けない時はカンヅメにされる
作家はものを書くのが仕事です。ということは他になにもせず朝から晩まで机に座って何かを書いているのです。
でもいくら仕事とはいえいつも絶え間なくものを書き続けるということは大変なことです。
とはいえ休んだり、怠けたるすることはできず書き続けなければなりません。なぜならすべて締め切りがありそれまでに書き終えないといけないからです。
カンヅメ 正しくは館詰と書くらしい
初めて知ったのですが、カンヅメの正しい文字はなんと「館詰」だということです。
下にあるようにミステリー作家有栖川有栖氏の説ですが、これを読んで少し意外に思いました。
なぜならこれまでカンヅメは缶詰のように缶の中に入れられて出れなくなる状態だと思っていたからです。
作家が執筆のためにホテルや旅館に押し込められることを「缶詰」と書いたら、校閲さんから「正しくは館詰」というチェックが入ったことがあります。
語源が確定していないようでもあるので、ある時期から「カンヅメ」と表記するようにしました。
作家のカンヅメで有名な山の上ホテル
山の上ホテルは客室数の少ないどちらかといえば小さなホテルです。にもかかわらず名前がよく知られているのはなぜなのでしょうか。
それは言わずと知れたことで、有名作家が客としてよく出入りして何かと話題が多いからです。
その有名作家ですが、単なる客として訪れる人ばかりでなく、出版社から予約が入るいわゆるカンヅメとして送り込まれる作家も少なくないのです。
こうした作家は過去の状況から見て自宅では作品を〆切日までに間に合わすのが困難と予想されるため、ホテルで軟禁状態にして、無理やりにでも〆切までに書いてもらうのです。
このホテルが場所柄(神田神保町に近い)出版社の多い地域に建っていることもあって作家のカンヅメに都合がいいため、よく利用されるようになったのです。
カンヅメになっても一行も書けない作家もいる
時代小説で有名な五味幸祐氏もこのホテルにカンヅメになったことがありますが、
たいていの作家がカンヅメになると観念して、執筆に精を出すのですが、五味氏は例外で、この状態になってもも普段の怠け癖が抜けず、なんと1か月の間に1行もかけなかったということです。
出版社もあきれはててカンヅメを解いたのですが、さすがは豪傑作家と言われるだけあって、恐れ入るばかりです。
野坂昭如のようにカンヅメになっても逃走する作家もいる
五味幸祐氏だけではありません。何かと問題の多い作家野坂昭如氏もまた出版社泣かせのひとです。
氏は出版社から締め切り破りの常習犯とマークされていてカンヅメになることが多かったのですが、ある時、新潮社の作品執筆で旅館にカンヅメされたのです。
とはいえこの野坂氏も五味氏同様に、カンヅメ状態でも執筆がまったくできなかったのです。
で、とうとう締め切り日がやってきて、あろうことにカンヅメの旅館から逃走してしまったのです。
出版社の人たちがあちこちと探し回ってやっと見つけたのはいいのですが。原稿はまったく書かれていません。
〆切が過ぎており出版社は困り果てたのですが、苦肉の策として、野坂氏が読者へのお詫びという形で書いた手書きの原稿用紙を記事の代わりの載せて、一件落着としたのです。