2023年6月27日火曜日

昨日誰かに読まれていた古い記事2題 どちらも良かった

 毎日欠かさず目を通している自分のブログ生涯現役日記の管理ページ「bloggerダッシュボードですがその中には昨日読まれた記事のタイトルが載っています

それを見ているとつ気になるものがありました

いずれも古い記事ですが読み返してみると両方ともいいなと感じました

そこで気づいたのは今後こうした記事をアーカイブシリーズとして再掲載することでした


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生涯現役日記アーカイブ記事シリーズ


(1)


2017321日火曜日

 

やればできる子・ できない子と親にとっては魔法の言葉か


 



YDKやればできる子

テレビのCMでもよく聞くYDkとも呼ばれるやればできる子という言葉を聞いたことがある人は多いと思います


これについて今をときめくベストセラー作家百田尚樹氏が自著大放言という本の中で面白いことを言っています


それは学校の成績が悪いにもかかわらずそのことを少しも自覚せずに、「自分はやればできる子だから心配しなくてもいいと思っている子どもが非常に多いというのです


やればできる子は実によくできていて聞いても口に出してもすごく語感の良い言葉です


それ故に子どもたちが受け入れやすいのか誰も彼もが自分のことをやればできる子と思っているというのです


百田氏はこうした子どもたちをやればできると思っているバカと切り捨てていますが大胆にこう言い切れるのが彼の凄いところです


とはいえこれを聞いて同感と思う人は多いのではないでしょうか


百田氏が言うにはやればできる子は子どもだけでなく親もそう思っている人が多いそうです


そうなるのもこの言葉が教師にとって非常に都合がよく成績が悪い生徒とその親を落胆させず逆に励ます力を持っているからです


つまり教師は生徒と親を前にしてがんばれよ君はやればできる子なのだからと言いそれを聞いた生徒と親は何の疑いもなくその気になってしまうのです


この落ちには笑わせられた

なおこの話には落ちがありこれが実に面白いのです


何が面白いかと言えば やればできる子という言葉を信じ続けるには間違っても実際にやろうとしないことですと真理を突いていることです


どうですかおもしろい話でしょう


やればできる子この言葉はできない子と親にとってはまるで魔法の言葉のようではありませんか

  

 

(2)

 

202234日金曜日

 

酒井順子 まるで社会学者のような男女格差について


の鋭い考察

 



 


書評男尊女子酒井順子 集英社

 

この著書の作品に接するたびに思うことがありますそれはどの作品も作家が書くエッセイとしてのあるべき姿としての条件を備えていることですそれは以下のつです

・読者が手本にできるような良い文章を書く

・読者の心に栄養剤になるような味わい深いことを書く

・新鮮な知識で読者を啓蒙する


要するに読者が作家のエッセイを読むのは勉強になるような優れた文章に触れ味わい深い文章で心満たされ新しい知識を獲得できることを望んでいるからなのではないでしょうか


なんという名言なのだろうか! 酒井順子が紹介する言葉

 

読者はエッセイを読んで新しい言葉を覚えたいと思っていますしたがってその望みを果たしてくれると満足感を得ることができます

例えばこの本で次のような言葉が出てきます

 

結婚は男のカネと女のカオの交換 》 

 

心理学者の小倉千加子さんが言った言葉だそうですが何という名言でしょうか

これ一つだけでもこの本を読んだ価値があります

 

また著者は男と女の外見カオを偏差値で表しその高低で

 

男のカオ偏差値が低く女のそれが高いカップルが理想的

と表現しているのも非常にユニークです


このことについて著者はこうも付け加えています

カオ偏差値40の男でもカオ偏差値70の女と結婚できるが頭の場合はそうは

いかない

 

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男尊女子 集英社

酒井順子

日本社会の男尊女卑感は男性側だけによるものなのか女性側にも男が上女が下という意識があるのでは? “男尊女卑が今なお続く理由は女性の側にもあることを示す20...

 

商品説明

日本社会の男尊女卑感は男性側だけによるものなのか女性側にも男が上女が下という意識があるのでは? “男尊女卑が今なお続く理由は女性の側にもあることを示す20編を収録する

 

酒井順子とこの本

2004年の負け犬の遠吠えで有名になった著者のエッセイ。“男尊の傾向がある女性で、「男尊女子」。気持ちは分かりますが言葉としては通じにくいのではないでしょうか
本として内容の重複が少し気になりました
男性か女性という差別が薄まっても今度は仕事が出来るかどうかというよりシビアな区別の時代となる感じがします

出典:honto

 

 

2023年6月20日火曜日

小説新人賞応募者にぜひとも伝えたいこと・シリーズ(1)~(5) 11,238文字 一挙掲載


(初出)2020年7月 1日

(更新)2023年6月23日



  


   もくじ


《 その1 》

予選通過率10%の壁をどう突破するか

予選で落ちてもモチベーションを下げないためには発表前に次の応募作品を用意しておく

《 その2 》

下読みさんの目はごまかせない

下読みさんに認められなければ予選は通らない

下読みさんにはこんな人達がなっている

《 その3 》

まずは第一次予選「1割の壁」を突破したい

書き出しが良く(おもしろく)なければ一次予選も通過しない

最初の1~2ページで「おもしろそう」と思わせなければ予選で落ちる

《 その4 》

予選通過率が10%程度でしかないことをしっかり認識しておこう

審査結果が発表される前に2作目を執筆する

ターゲットは一つでなく複数の方がいい

《 その5 》

小説新人賞で最初の応募から3回連続予選通過できたのは

メジャーな新人賞ばかり狙うことにした

落選しても応募が続けられる方法を考えた

まとめ

《 その1 》

予選通過率10%の壁をどう突破するか



数ある小説新人賞の中のメジャーと呼ばれる「オール読物新人賞」「小説現代新人賞」「小説すばる新人賞」などを見てみると


第一次予選の通過率はだいたい10%前後のようです。


つまり通過するのは応募総数の1割程度でしかないということです。


これだと応募作品のうち9割もの作品が落選ということになり、一次予選の時点で葬り去られてしまうのです。小説新人賞はこれほど過酷な競争にさらされるほど厳しい世界なのです。



応募者の9割が1次予選で撃沈という厳しい現実を知れ


大事な点なのでもう一度繰り返しますが、メジャーと呼ばれる出版社の小説新人賞では第一関門の



一次予選を通過するのは応募総数のわずか10%程度でしかなく、その大半


を占める90%の作品は、この時点でシャットアウトされてしまうのです。


作家を目指し新人賞に応募する方々は、この厳しい現実をよく見据えた上で臨むことが必要です。


要はこの厳しさをじゅうぶん認識した上で覚悟を決めた姿勢が大事なのです。


でなければ、第一次予選落選時点で、早晩モチベーションを失って、応募戦線から脱落してしまうこと請け合いです。



応募作品は誰が審査するのか


ひょっとして、あなたは応募した作品の審査は最初から応募案内に載っている一流作家の審査員によてなされる、と思ってはいないでしょうか。


つまり、自分の応募作品が作家の審査員に読まれる、と思っていることです。


でもそれは大間違いです。審査員である作家の先生方に読まれるのは最終予選の勝ち残った数編の最終候補作品だけです。


したがって、この段階までに落ちてしまった作品については、作家の先生方は全く目にすることはありません。


つまり最終審査までは作家の先生抜きに審査されるのです。


ではそれまではいったい誰が審査するのかというと、それは下読みさんと呼ばれる方々によってなされるのです。



下読みさんとは


下読みさんは主として編集者、文芸評論家、ライターなどで構成されますが、この他にも、まだ売れる作品の書けない無名の新人作家なども含まれていることがあります。


作品が売れず収入の少ないこうした人々がアルバイトとして参加するのです。

 

下読みさんは初めから終わりまで作品のすべてを読むわけではない


ではこうした下読みさんたちは、どのように応募作品を審査するのでしょうか。


これについて述べる前に、まず小説新人賞に応募される作品の数がどれくらいあるかを知っておく必要があります。


一言で小説新人賞と言ってもピンからキリまでいろいろあります。


今回テーマにしているのはあくまでメジャーと呼ばれる新人賞です。


上でも上げましたが、オール読物新人賞、小説現代新人賞、小説すばる新人賞は文藝春秋、講談社、集英社という我国を代表するメジャー出版社が主催するものです。


したがって小説新人賞の中で最も格式と人気が高く、それだけに応募数も多く、1回の応募に対して1000件以上あるのが普通です。


したがって応募数に関しては毎回1000~1500件ぐらいあると考えておくといいでしょう。


ということは下読みさんはこれだけ多くの作品に目を通さなければいけないことになります。


もちろん少なくても10~20名ぐらいはいると思いますが、仮に1000件の作品を15名の下読みさんが審査するとすれば、1人あたりの作品は70件弱程度になります。


1人で70件だけではピンときませんが、対象が小説と聞けば、その大変さがよく分かるはずです。


なぜなら、小説とは長いものが普通で文字数(ページ数)は大変な量に及びます。それを1編づつ、初めから終わりまで丁寧に読んでいくことが果たして可能でしょうか。


ズバリ、それは不可能です。では、どのように読んで審査していくのでしょうか。



下読みさんが読むのは、書き出しの部分、中程を少し、それに結末の部分


一人の下読みさんが70編にも及ぶ作品を審査するとすれば、長いものでは数百ページにも及ぶ作品を初めから終わりまで丁寧に読みこなすことは到底不可能です。


でもそれほど丁寧に読まなくても作品の善し悪しは分かるのです。


良い作品を書く作者はたいてい初めの部分に全力投球で臨んでいます。


つまりなんとしても初めの1~2ページで読者を引きつけようと、あの手この手でおもしろく仕立てようと仕組んでいるのです。


したがって下読みのプロと呼ばれる人たちはこの部分を読むだけで作品の善し悪しは分かるのです。


それに加えて、確認の意味で、中程少しと、結末の部分を読めば内容を判断するにはじゅうぶんなのです。



どんな尺度で作品の良し悪しが決められるのか


・書き出しで引き込まれるか

下読みさんが最も力を入れて読むのは作品の書き出しの部分です。最初の1~2ページ、多くて3~4ページ、この部分に読者を引き込む力があるかどうかを見るのです。


なぜなら多くの読者はこの部分をチェックして購入するかどうかを決めるからです。


つまり最初の1~2ページだけ見て、内容が良いか(おもしろいか)どうかを判断して購入か否かを決めるからです。


・オリジナリティはあるか

たとえおもしろいと思っても模倣ではいけません。大事なのはあくまでオリジナリティです。過去に何か似通った内容の作品はなかったかをよくチェックします。


・面白いかどうか

小説の大事なポイントはなんと言ってもおもしろさです。「おもしろくなくては小説ではない」と言い切る作家もいるくらいです。したがって、この点が最重要ポイントとして厳しくチェックされます。



誤字脱字はそれほど気にしなくても良い

原稿には誤字脱字がつきものです。大事な小説新人賞の応募となると応募者の多くの人は、この誤字脱字に大変気を使うでしょう。


つまり、せっかくの力作が誤字脱字が原因で落選したらたまらない。と思うからです。


もちろん誤字脱字はないに越したことはありません。しかし、これについてはそれほど神経を使わなくても構いません。通常のチェックをこなせばそれで十分です。


仮にいくつかの誤字脱字があったとしても、それが審査に決定的なマイナスを与えることはありません。誤字脱字より大事なことは小説としての内容の魅力です。



予選で落ちてもモチベーションを下げないためには発表前に次の応募作品を用意しておく


小説新人賞応募者にとって、せっかく書いた小説が、あえなく一次予選で落選してしまったらその落胆は小さくはないはずです。


なにしろ長い日数をかけて書きあげた大事な作品です。それが一次審査だけであえなく葬り去られてしまうのは実に忍び難いことです。


落胆のあまり、もう新人賞には応募したくないと、すっかりモチベーションを失ってしまうかも知れません。


でもそれでは作家への道は開けません。一度の失敗ぐらいで諦めてしまっては何事も始まりません。


とはいえ、落選のショックでしばらくは新しい作品執筆の手が止まるかも知れません。


それを避けるためには、予選結果の発表前に次の作品を執筆しておくことです。


幸い、応募締切から発表までは、少なくても半年ぐらいはあるはずです。それだけあれば次の作品はじゅうぶん書けます。


落選しても何度でも挑戦するためにはこうした準備が大切なのです。


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《 その2 》

下読みさんの目はごまかせない

小説新人賞の応募規定などを見て、最初に注意が行きがちなのは審査員です。たいていは有名作家が名を連ねていることが多いのですが、その顔ぶれを見て応募を決める方も少なくないはずです。


つまり、この作家は好きで作品もよく読んでいるので、作風も合い理解してもらえるのではない

か、などという淡い期待を抱くからです。


しかしこういう方々にあえて申し上げますが、それは「もし読んでもらえたら」の話で


そこに至るまでには、まず下読みさんと呼ばれる方々によってなされる厳しい予選の審査を通過してからのことなのです。


そうなのです。小説新人賞の審査は最初から審査員である作家によってなされるのではなく、予選(一次審査、二次審査)は出版社に所属する下読みさんと呼ばれる人たちによってなされるのです。



メジャーな新人賞には実力ある下読みさんがそろっている


小説新人賞の応募者の中には、応募した作品はすべて審査員である作家によってなされるものと思っている方もいるかも知れません。もしそう思っているとすれば、それは大きな勘違いです。


もちろん審査員として名を連ねているのですから審査をしないわけではありません。しかし、その審査とは最終審査のことを意味します。


小説新人賞の審査は予選段階の一次審査二次審査を経て、受賞候補作として数編に絞られます。作家の審査が行われるのはこの候補作に対してだけなのです。


つまり作家の先生方が目にするのはこれら最終候補に残った数編の作品だけで、一次審査、二次審査には参加することはないのです。したがって、応募作品のほとんどは作家の先生方の目に触れることはないのです。


では第一次審査、第二次審査は誰が担当するかといえば、ここで登場するのが下読みさんと呼ばれる方々なのです。


下読みさんと聞けば、その名のごとく、なにか下仕事にあたるような響きがあり、大事な審査をまかせて良いのだろうか、と不審に思う向きもあるかも知れませんが、ズバリ心配にはおよびません。


なぜなら、少なくてもメジャーな小説新人賞(例えば。オール読物新人賞。小説現代新人賞、小説すばる新人賞)などの下読みさんは優秀な編集者などからなる、力のある人たちばかりで構成されているからです。



下読みさんに認められなければ予選は通らない


大手出版社の運営するメジャーな小説新人賞(オール読物新人賞、小説現代新人賞、小説すばる新人賞など)では、一次審査、二次審査という予選があり、それに通過した作品が受賞候補として最終審査に回ります。


この場合審査に当たるのは一次と二次は下読みさんと呼ばれる担当者、最終審査は審査員に任命された作家の先生方とされています。


これで分かるように、応募作品のすべてが第一次審査、第二次審査において、下読みさんと呼ばれる担当者によって行われます。したがって当然のこととして、この段階では作家の目にはまったく触れません。


ということは最終審査に残って作家の目に届くためには、下読みさんによる一次、二次審査を通過しなければ始まらないのです。つまり下読みさんに「よい作品だ」と認められなければ、予選段階で葬り去られてしまうのです。


どれだけの作品が落とされるかといえば全作品の90%です。つまり1000編の応募作品があるとすれば、そのうち900編が一次、二次の予選で消えてしまうのです。


その判断を下すのが下読みさんなのです。とすれば第一次、第二次予選でなんとしても下読みさんに認められなければ先はないのです。



下読みさんにはこんな人達がなっている


上で「下読みさんは実力者ぞろい」と書きましたが、大事な初期審査である下読みという役目を果たしているのはいったいどんな人達なのでしょうか。


小説新人賞では、予選にあたる第一次審査、第二次審査が非常に大事なプロセスであることは言うまでもありません。


なにしろ1000編にも及ぶ大量の応募作品の中から受賞作品の対象になる最終候補作品を選ぶ作業を担当するのですから、熱意と根気、それに小説を読む確かな目を持っていなければ務まる役目ではありません。


見方によっては、看板になっている審査員の有名作家より大事な役目を果たしている、といっても過言ではないかも知れません。


こうした大切な役目を務める下読みさんは、主として編集者、出版評論家、所属ライターなどで構成されますが、更にスタッフ陣を充実させるために、まだ日の目を見ていない(売れていない)無名の作家なども動員されることがあります。


いずれにしても小説を読んだり、書いたりすることにおいてはベテランの実力者ばかりです。したがって「優秀な応募作品を見逃す」などということはまずありません。



小説新人賞応募では、まず予選突破を目指そう


いかがでしょうか。小説新人賞の審査と下読みさんについて少しはご理解いただけたでしょうか。


新人賞に応募される方々に申し上げたいのは、いきなり賞を狙うのではなく、まずは、第一次の予選突破を目指すことをおすすめします。


第一次予選突破とはいえ、10分の1の厳しい関門を通過することになるのです。これを通過した作品は、小説として下読みさんの厳しい審査に認められたことになるのですから、ある程度の自信を得ることができ、次のステップへのはずみがつくはずです。


登山と同じで、いきなり頂上を目指すのではなく、2合目、3合目と順次ステップを定めて進んで行くことがなの得策ではないでしょうか。




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《 その3 》


まずは第一次予選「1割の壁」を突破したい


メジャーと呼ばれる小説新人賞(オール読物新人賞、小説現代新人賞、小説すばる新人賞)などの審査は予備審査と本審査に分かれているのが一般的です。


こうした審査では予備審査には下読みさんと呼ばれる審査員、本審査には審査員として選ばれた作家の方々が当たります。


予備審査には第一次、第二次、本審査は最終候補作品の選出、最終候補作品から受賞作決定の2段階よりなります。


これで分かる通り、大事なのはまず予選である第一次予選を通過することです。でなければその後の道は開けません。


ひとことで第一次予選通と言っても、それは決して容易なことではありません。なぜならこれを通過するのは応募作品の1割程度でしかないからです。


つまり、応募作品が1000件だとすると、通過するのはわずか100件程度でしかないのです。


メジャーの小説新人賞は第一次審査からしてこれほど厳しいのです。でもこの厳しい関門を通過しなければ小説家への道は開かれないのです。


ではどうすればこの最初の関門を通過することができるのでしょうか。



書き出しで惹きつけらるかどうかが審査の評価を決する


前回のこのシリース(その2)でも書きましたが、小説新人賞の応募作品は予選の段階ではすべて下読みさんと呼ばれる審査員によって優劣が評価されます。では下読みさんはどのようにして作品を審査していくのでしょうか。


メジャーと呼ばれる小説新人賞の応募作品は、大抵は1000~1500件ぐらいに及びます。


一言で1000~1500件と言っても、それが小説となれば大変な量に及びます。なぜなら小説とは長いのが普通ですから、仮に応募作品の平均の量を400字原稿用紙100枚程度としても、応募数が1000件なら、トータルではその量は10万枚に達するのです。


審査員はこの膨大な量の原稿を審査しなければならないのです。はたしてこれだけの量を1件1件をはじめから終わりまで読んで行くことは可能でしょうか。


いや、それは不可能です。仮に15~20人程度の下読みさんがいるとしても、応募作品が1000件なら一人あたり50~70件にもなるのです。


これだけの量の原稿を初めから終わりまで読み通すのは到底不可能です。では審査員はどのように審査をしていくのでしょうか。



書き出しが良く(おもしろく)なければ一次予選も通過しない


上で書いたように小説新人賞の審査員は応募されたすべての作品に目を通さなければなりません。とはいえ、1000件にも達する大量の作品をはじめから終わりまで読むことは到底不可能です。


ではどうするかといえば、はじめの部分と、中程、それに結末の部分だけを読むのです。


こう聞けば、それで良し悪しが判断できるのか、と疑問に思う向きもあるかも知れませんが、心配には及びません。この方法で審査しても、優れた作品を見落とすことはまずないのです。


その理由は優れた作品の書き手は、書き出しに最も注意を払い、中程のストーリーの展開にも留意し、終わりの方のクライマックを持ってきて締めくくるからです。それ故に三ヶ所を重点的に読むだけで、優秀作品の見落としはないのです。


このことは読者の書店での購入作品選びを見てもよく分かるはずです。大抵の読者は、購入する本を決めるときは、まずタイトルを見て、カバーや表紙のの宣伝文を見て、次は最初の1~2ページを読んでみます。


この一連の行動で、その作品が引きつける力(面白み)があるかどうか見分けて購入の有無を決めるのです。下読みさんが審査でやることは、こうした読者の行動を反映したものなのです。



最初の1~2ページで「おもしろそう」と思わせなければ予選で落ちる


小説新人賞の予選通過率は1割程度と上で書きましたが、1000編に及ぶ多くの応募作品のうち、わずか100編程度しか予選を通過しないということは、9割の作品は新人賞通過の基準を満たしてないことになります。


つまり最初の1~3ページで読み手を引きつける力がなく、中程のストリーの展開も上手くなく、最後のクライマックスの盛り上がりにも欠けるというような作品なのです。


9割が予選で落選するということは、こうした作品が9割もあるということになります。


これで分かるように最初の部分で読者をひきつけ、中程でストーリーの展開を充実させ、最後のクライマックスで盛り上げる、というのは簡単にできることではないのです。


これが小説の難しい点なのです。でもそう言って書くことを諦めたら小説家へ道は断絶してしまいます。


なんとしても書き出しを読者を引きつけるおもしろい内容にすることに精魂を傾け、是が非でも第一次予選に合格する強い決意を固めなければなりません。


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《 その4 》

予選通過率が10%程度でしかないことをしっかり認識しておこう

このシリーズ(3)でも書きましたが、メジャーと呼ばれる文藝春秋、小説現代、集英社などの出版


社が主催する小説新人賞の応募者は1回の募集につき、だいたい1000~1500編程度の作品の応募があります。


この中で予選を通過するのは1割程度の100~150編ぐらいでしかありません。これで分かる通り小説新人賞応募者を待ち構えているのは狭くて厳しい門なのです。


これを冒頭に書くのは、応募者にこの数字をしっかり認識して現実をよく踏まえておいてほしいからです。


つまり、こうした現実を知っておかないと落選した時のショックが大きく、次の応募のモチベーションを失ってしまうことにもなりかねないからです。


でも応募者の90%もの人が落選という事実を知っておけば、落選の際のショックも小さくてすみ、諦めもつきやすいのではないでしょうか。


それだけでなく《もう一度挑戦してみよう》という意欲も湧いてくるのです。


応募後に心しておくべきこと


これから述べることは非常に大切なことですから是非とも覚えておいて実行に移してほしいことです。


前項で書いたように小説新人賞に応募しても、応募者の90%は一次審査でふるい落とされてしまいます。


何事に於いても落選にはショックが伴います。中でも小説新人賞応募での落選のインパクトはかなり強いと言えるのではないでしょうか。なぜなら、小説作成には長い日時がかかるからです。


作品の長さにもよりますが、短くても1ヶ月、長編だと数ヶ月~1年以上に及ぶこともあるでしょう。


これだけの期間、頭をしぼりながら苦闘して生み出されるた作品です。それが一次予選であえなくボツになってしまったらショックを受けるのは当然のことです。


それに、審査結果は予選通過作品が月刊誌で発表されるだけで、落選に対しては何の通知や連絡もありませんし原稿も返却されません。


こうした冷酷とも思えるような厳しい現実をしっかり認識しておくことによって、なるべくショックを小さくし、気を取り直して次の応募に備えてください。


審査結果が発表される前に2作目を執筆する


小説新人賞は一次審査を通過するのは10%程度の狭い門です。ということは一度の応募だけで一次予選を通過するのは難しいかも知れません。


確率から考えても応募回数が多いほうが予選通過の確率は高くなるに違いありません。1回の応募だけで済ますのでなく、2回、3回と応募回数を増やしていくのです。


幸いターゲットにする募集媒体は少なくありません。例えば1回目の応募が文藝春秋のオール読物新人賞だとすると、2回目は小説現代の新人賞、3回目は集英社の小説すばる新人賞というふうに対象を変えていくのです。


こうして次々応募していけばいいのですが、大事な点は、1回目の応募から次の応募までの期間です。


大切な点は1回目の応募が終わると、その結果発表がある前に2回目の応募を終えることです。

理由は、1回目の審査結果を待ってからでは、運悪く落選した場合は、ショックからモチベーションを喪失して2作目の執筆の意欲を失う恐れがあるからです。


3作目も同じです。2作目の結果発表の前に執筆するのです。


この方法だと、たとえ前の応募作品が落選しても、その発表前なら執筆意欲を維持できるのです。



ターゲットは一つでなく複数の方がいい


いま小説新人賞の数は少なくありません。もちろん作家へ直結するようなメジャーな賞に限って言えば数は限られますが、準メジャーやネット小説も含めればおそらく十指では間に合わないほどの数があります。


もちろんメジャーだけ狙って応募を続けることも悪くはありませんが、準大手やネット小説も意識すれば、それだけターゲットは増えてくるのです。


それに応募媒体によって選考基準や作品のテイストなどが異なってきますから。その分予選通過確率が高くなります。


1回の応募で落選しても、すぐ諦めるのではなく、ターゲットを変えて、2回、3回と応募を重ねていくことが大事なのです。


応募者の中には10回以上予選で落ちても、それでもへこたれずに応募を繰り返している人もいるのです。



経験者が語る大事なこと・たとえ予選通過しても油断してはいけない


上の項では落選した場合のことばかり例を上げて書きましたが、ここではその逆の場合、つまり運良く10%の壁を破って予選通過した場合のことを書いていきます。


人間誰しも、物事が自分が思ったように運べば気を良くし自信もつきます。それも1回だけではなく、2回、3回と連続してうまく行けば、喜びようも半端でなく、ともすれば有頂天になるほど喜ぶかも知れません。


その結果、鼻高々になり舞い上がってしまうかも知れません。実はこう言っている筆者がかつてその状態になったのです。


それは人生で初めて応募したオール読物新人賞で、みごと予選通過しただけでなく、その発表前に応募した小説現代新人賞では1次予選はおろか2次予選まで進み、さらに3回目に応募した小説すばるが、またまた1次予選を通過したのです。


いずれも応募作品は1000~1700編という狭き門を突破したのです。そんな厳しい戦線で、初めて応募した1回目から連続3回も予選を通過することができたのです。


しかもいずれも入賞すればプロ作家へ直結というメジャーな出版社のものばかりなのです。これを喜ばないはずがありません。それどころか、すっかり舞い上がったのぼせてしまったのです。その結果はどうなったでしょうか。


苦労して書きあげた小説とはいえ、三作が連続してすべて予選を通過するなどとはまるで夢のように思えたのです。


そして、これだと小説家になるのも間もないことだ、というような慢心めいた思いが胸をよぎったのです。


それだけではなく、作家になるのがこんなに簡単なことなら、何も急ぐことはない、という考えが芽生えてきて、その後しばらくは何も応募しないだけではなく、小説を書くことすら止めてしまったのです。


そして気がつけば年月だけ経て、いつの間にか小説家になる夢は消えてしまっていたのです。


こうした経験があるからこそから言えることですが、たとえ応募作品が1度や2度予選を通過したからと言って、決して気を緩めてはいけないのです。


小説家への道は新人賞の予選を通過してからが更に厳しくなるのです。


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《 その5 》

小説新人賞で最初の応募から3回連続予選通過できたのは


小説新人賞には良い思い出しかありません。なぜなら最初の応募から連続して3回ともすべて予選を通過できたからです。


予選通過の確率が10%程度ということは知っていましたから、まさか3回とも通過するとは思っていませんでした。


3回応募すると1回は予選を通過できるかもしれない。こんな厳しい予想をもって応募に臨んだのです。


だからこそ、いろんな対策をたてて挑戦することにしたのです。その対策とは次の4点です。



メジャーな新人賞ばかり狙うことにした


小説新人賞と言ってもピンからキリまでいろいろあります。でも何にでも応募するわけにはいきません。なぜなら目的は作家になることだからです。


作家になるには名のあるメジャーな新人賞を取ってこそ可能で、キリに属すものではムリです


とすれば応募の対象にはメジャーなものを選択しなければいけない、そう考えて対象になる数は少なくてもメジャーな新人賞だけを狙うことにしました。


とはいえメジャーなものは、それなりに敷居は高く、予選通過だけでも相当厳しいことを承知していなければなりません。


でも厳しい方が、覚悟もできて作品作りに対する気合の入りようも違うだろうと思ったのです。



複数の出版社に応募することにした


メジャーな新人賞の予選通過が厳しいものだと予想すれば、当然応募回数のことを考えます。


つまり1回だけでなく、複数回の応募で予選通過を狙うのです。下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる、の精神です。


この考えに従って、まず最初は結果は考えず連続3回応募することに決めました。



落選しても応募が続けられる方法を考えた


3回連続で応募することは決めたのですが、これに対しても作戦が必要です。なぜなら最初の応募で落選すれば2作目以降の執筆意欲が失われる恐れがあるからです。


そうなると連続3回応募が難しくなります。それを防ぐにはどうしたらいいかと考えました。


その結果実行したのが、第1作の選考結果が発表される前に2作目を書き終えることです。


こうすれば、たとえ最初の作品が落選してモチベーションが落ちても2作目の執筆に影響することはありまっせん。


3作目も同じで、2作目の結果が出る前に執筆を終えてしまうのです。これで3作を無事書き終えて応募することができたのです。



とにかく面白い作品を書こう、という決意


「面白くなくては小説ではない」小説に対してはかねてよりこうした思いを強く抱いていました。


したがって自分が書く小説は面白いものにしなければいけない、と考えていました。


またそれでなければ新人賞に応募しても予選さえ通らないだろう、と確信していました。


それ故に何が何でも面白い小説を、という強固な自覚をもとに執筆に臨みました。


この思いが功を奏して3回連続予選通過に繋がったのに違いありません。




まとめ


小説家になろうと思うのなら小説新人賞応募では、賞を取ると小説家に直結するようなメジャーな新人賞をねらうべきで、間違ってもマイナーなものへ応募すべきではありません。


また1回だけの応募でなく、複数回応募するほうが予選通過する確率が高くなるのは言うまでもありません。


とはいえ複数回応募しようと思っても、最初の作品が落選するとモチベーションが下がって次の応募への意欲を失うかも知れません。


それを避けるには先の作品の結果発表の前までに次の作品を仕上げて応募を済ましておくべきです。


もう一つ大事なことは、とにかく面白い作品を書かねければいけません。


読者はハラハラ、ドキドキする面白い作品しか期待していないのですから。


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