振込サギの実態を分かりやすく解説した本
振込サギという犯罪がこの世に出てきて久しくなりますが、啓蒙活動や厳しい取り締まりが続いているにも関わらず、被害は一向に減ることなく逆に増加しているのが現状です。
こうした中にあっても、「私は絶対に引っかかることはない」と自負している人は多いようです。
しかし犯罪者の手口は次第に巧妙になってきており、昨今ではそうした過信した人たちも次々に巻き込まれています。
もはや自分の知恵だけで巻き込まれるのを防ぐのは困難です。
ではどうしたらいいか?そう考える人には、ここでご紹介する本の購読をお勧めします。
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この3冊の本を読んで振込サギから身を守ろう
●振り込め詐欺秘密結社(宝島社 )鈴木大介著
振り込め詐欺が初めてマスコミに取り上げられた当時、ある警察の高官は「放っておけば日本社会がめちゃくちゃになる」とコメントしていた。窮地に陥った肉親のふりをして老人に電話をかけて現金を騙し取るという非情な手法が、日本人の心を根底から危うくしかねないのだと、警察の幹部たちは素早く察知したのだ。
振り込め詐欺は、それほどの破壊力を秘めているのだ。何といっても、現代の日本人の心性に精通しつつ、それを金のために踏みにじることを躊躇しない。いったいどんな人間が実行犯なのか、被害者はどうやって選ばれるのか、あるいは誰が詐欺話の筋書きを練っているのか等々非常に気になっていたし、設定を次々と変えつつ、同種の電話越しの詐欺が後を絶たないことも不思議だった。
本書はそうした疑問の数々に、明快かつ丁寧に答えてくれる1冊だ。著者は、世間的には「不良」と一括されるであろう少年少女の生を追いかける傑作ルポを、すでに何冊か著している。振り込め詐欺も、実行犯の多くが若者なので、著者の取材の網に引っ掛かったことが本書の執筆の発端なのだろう。
読んでみて驚きだったのは、詐欺結社といいつつも、それは暴力団のようながっちりした組織ではなく、被害者の名簿、詐欺話のシナリオ、演技力のある電話部隊、そして注意深い管理者さえ揃えば誰でもできてしまう、流動的な集団。いわばフランチャイズ式なのである。これは欧米の麻薬組織と同じ理屈で、いつでも末端を切り捨てられるようにしてあるのだ。
そうしたドライな組織なだけに、著者が実行犯の不良少年たちに密着して得た証言は、凶悪でこそあるがどこか醒めている。
「俺自身、元々は結構太いとこで、振り込めのプレイヤーやってたんですよ。融資保証金詐欺とオレオレですよね。それで3年ですけどプレイヤーでモシモシやって、それから番頭任されるようになったんですよ」ここでいう「プレイヤー」が、実際に電話をかけて(=モシモシやって)人を騙す役であるのは明白だ。“番頭”などという言葉を使っているところからもわかるように、実行犯たちにとっては、詐欺は仕事なのである。いや、学歴社会から落ちこぼれた不良少年たちにとっては、数少ない経済的な上昇の回路なのだ。そのためか、極めて不愉快な読み物のはずの本書には、上質の青春小説の味わいすら漂っている。その一方で、詐欺に「投資」して収益を吸い上げる“金主”の正体が最後まで明かされないところなど、なかなか不気味だ。一つ間違えると取材者が消される、本当に恐ろしい世界なのだということが伝わってくる。そして何より、才覚豊かな少年たちが心優しい人々を騙す詐欺に向かわざるをえない理由の一端が、現代日本の若年者雇用の惨状にあるという著者の結論には、首肯せざるをえない。
出典・インターネットブックレビューより
●「職業」振り込め詐欺 (ディスカバー新書)
●「老人喰い」、高齢者を狙う詐欺の招待 (ちくま新書)
大きな誤解を解いておきたい。高齢者を狙う犯罪とは、高齢者が弱者だから、そこにつけ込むというものではない。圧倒的弱者である経済的が、圧倒的経済的強者である高齢者に向ける反逆の刃なのだ。
この一文についてこれる人とついてこれない人がいると思う。おれはついていける。義賊とまではいかないが、有り余る富を蓄えて安泰の老後を送っている人間から、老後どころか明日をもしれない人間が金を奪ってなにが悪い。富の再配分ではないか、とすら思う。おれは「老人喰い」のメンタリティを備えている。
が、備えていないのは老人喰いをする「若者たち」が持つ圧倒的な上昇志向、そしてその志向のために払う努力というものである。本書に紹介されている詐欺師(という言い方は古いし的を射ていないような気もする)たちの、体育会的な部分、ぬるくない部分というものには、正直ついていけない。本を読んでついていけないのだから、実際の詐欺グループ研修の現場に放り込まれたら、一番先に脱落してしまうであろう。何千万円のプレイヤーの世界を目指す、その能力ややる気におれはまったく縁がない。だからこんな底辺の暮らしをしている。人格形成セミナーを手本としたという詐欺グループの研修で「毎日お好み焼きしか食えない人間になりたいか」と実例として挙げられるような暮らしをしている。おれは老人にとっては無害だし、意識の高い「老人喰い」のプレイヤーからすれば「なんで生きてるの?」と蔑まされるというか、眼中にない人間なのだ
。 彼らがとてつもなく優秀で、とてつもなくモチベーションが高くて、その現場には彼らを「そのように育て上げる」システムがあり、加えて彼らには「老人喰いに情熱を注ぐ理由」があったからだ。
うむ、そうなのだろう。その「彼ら」は、与えられた時代や立場が違えば、資本主義社会の真っ当なプレイヤーとして真っ当な報酬を手にすることができたのであろう。おそらくそうだろう。だが、希望格差社会だかなんだかしらぬが、この現代において「彼ら」……真っ当な出世街道から外れながらも、マイルドヤンキーなどのぬるさをも嫌う…
の行く先は、たとえばこの「老人喰い」の世界なのである。おそろしい、おそろしい。
して、「え、オレオレ詐欺なんてとっくに世間の常識になってるでしょ?」と思う人もいるかもしれない。本書を読めばそれは甘い考えだと気づくだろう。標的の名簿はより洗練され、手口は強化され、プレイヤーたちのモチベーションも能力も高い。これにはかなわんな、というところがある。さらに面白い、といってはなんだが、興味深いのは、被害者が「これは詐欺だ」と感づいても、自分の家族の事で細かな情報を握られている(基本的な個人情報から親類関係、勤め先の上司の名前まで……)ことに恐怖をいだき、報復の暴力を恐れて金を出してしまうというケースもあるというのだ(もっとも、徹底的に合理化、分社化している詐欺グループはそんな足のつくようなリスクは負わないらしいが)。いやはや。
出典・ブログ「関内関外日記」
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