作品が面白くないのは作者が悪いのか、それとも読み手のせいなのか?
期待して読んだ本がそれに反して面白くなかったことはよくあることですが今回がまさにそれです。
こうした場合、面白くない理由は、著者にあるのか、それとも読み手の力量不足なのか、ということをまず考えます。
今回の本「ベストエッセイ2014」および「ベストエッセイ2015」の2冊はいずれも一人の著者によるものではなく、76名の著者によるエッセイのアンソロジーです。
掲載された作品の全部が悪いのではなく、良いものは良いものとして認めています。
したがって良い作品もあったが全体としては良くなかった、と判断したのですが、これは読み手の力量不足とは言えないのではないでしょうか。
選ばれたものなのに面白くない作品が多いのはなぜ?
今回の本のタイトルは「ベストエッセイ2014」&「ベストエッセイ2015」というものですから、誰でも期待して読むはずです。
しかしまったくの「看板に偽りあり」で、失望だけでなく、いろいろ疑問の残る作品です。
この本にはいずれも76編のエッセイが載っています。ベストエッセイ2014&2015の名の通り、前年(2013~14年)に発表されたエッセイの中から優れた作品として選ばれたものばかりなのです。
おそらく膨大な数の中から選ばれたのでしょうから、読者としてはよい作品ばかりだろう、と期待するのは当然です。
それ故に期待が外れたときの裏切られた思いと失望感は大きいのです。しかも1冊だけでなく2冊なのですから。
76×2の作品のうち良かったのは僅か20作品程度
期待外れとはいえ、2冊各々の76編の中には良い作品もありました。でもその数は各10編程度ですから、ベストエッセイ集としては多いとは言えません。
では10編以外がすべて悪いかと言えばそうではありません。それ以外では約30編ぐらいは、まずまずという出来栄えの作品でした。
ということは残りの30以上の先品が面白くなかったということになります。
まったくその通りで、約半数弱の作品は駄作と言ってもいいような、どうでもいいようなテーマのつまらない作品でした。
出版社に問題があるのだろうか
エッセイでつまらない作品を読んだのは今に始まったことではありません。この作家ならと期待して読んだエッセイ集が期待外れだったことはこれまで数限りなくあります。
しかしそれらの多くは個人のエッセイ集で、今回のようなベストエッセイと銘打ったアンソロジーではありません。
個人のエッセイ集なら、小説が上手な作家も、エッセイとなるとそうはいかないのかも、と思ってあきらめがつきます。
しかし今回は違います。なにしろタイトル「ベストエッセイ2014&2015」なのですから。
期待が裏切られたのはいったい何に原因があるのでしょうか。まずその一つとして考えられる問題はこの本を出した出版社です。
これを出版したのは光村図書出版というところです。光村図書、あまり聞かない名前です。
一般的にこうした文芸書は、文藝春秋、講談社、新潮社、集英社あたりが出版するのが普通です。
でもそうではなく、光村図書というあまりなじみのないところなのです。
光村図書は教科書など地味な出版物が多い出版社です。したがって文芸書担当の良い編集者に恵まれていないことも予想できます。
こうした点からもエッセイ集など文芸書の出版には不向きなのではないでしょうか。
選考委員は立派なのだが
次に問題になるのは、掲載作品を選んだ選考委員です。選考委員のメンバーは次のようになります。
編纂委員/角田光代,林 真理子,藤沢 周,町田 康,三浦しをん
いかがでしょうか?このメンバーは、5名とも実力派の人気作家ばかりです。
エッセイの上手な人ばかりですから、選考委員として何ら遜色はありません。
ということは、選考委員の問題ではなさそうです。
ということは、選考委員の問題ではなさそうです。
純文学雑誌や日本経済新聞から選ばれた作品が多い
2冊に収録されたエッセイは発行年の前年である2013年&2014年中に新聞や雑誌などに掲載されたものの中から選ばれています。
各々の作品の後に掲載された新聞名や雑誌名が記されていますが、それらの中で目立つのは日本経済新聞と純文学系の雑誌で、一般紙や大衆文学系の雑誌が少ないのはなぜでしょう。
この偏りにも、面白くない作品が多い何らかの原因があるのかもしれません。