面白いエッセイを読みたい、という読者の意に反して、世に出ているエッセイ集なるものは必ずしもその期待に沿うものばかりではありません。
面白いどころか、なんでこんな下らないことを書くの?と思うようなつまらない作品も珍しくないのです。
エッセイ集は当たり外れが大きい ・ 10冊のうち6~7冊はつまらない作品
常々思っていることですが、エッセイ集には当たりはずれがあり、いつも良い作品に当たるとは限りません。
著名な小説家の作品だからと言って必ずしも面白いわけではありません。なぜなら小説とエッセイの才能は異なっており、両方とも才能を備えている作家は少ないからです。
つまり、芥川賞や直木賞を受賞した上手な小説が書ける作家が、エッセイも上手かと言えば、決してそうとは限らないのです。
それ故に読者は、あの人気作家が書いたエッセイなのに面白くない、と失望することがしばしばあるのです。
ということは面白いエッセイを読むにはどうしたらいいのか、ということが問題になります。
つまりエッセイの上手な選び方ですが、これが案外簡単ではないのです。なぜなら作家(小説家)のネームバリューだけで選ぶことはできないからです。
その理由は上述のように上手な小説を書く作家でも、エッセイも上手だとは限らないからです。
図書館のエッセイコーナーには数千冊のエッセイ集が並んでいるが
上のようなことが書けるのも、わたし自身がこのところのエッセイ選びで失敗続きだからです。
どのくらい失敗したかというと、最近読んだエッセイ10冊中、良かったものは4冊で、残り6冊はハズレだったのです。
ということは良いエッセイに当たる確率は40パーセントしかないのですから、選ぶのが難しいのは当然かもしれません。
早いはなし図書館にはエッセイコーナーがあって、有名作家のエッセイ集ばかり所せましと並んでいます。
数を数えたことはありませんが、コーナーの広さと棚の数からして数千冊に及ぶのは間違いないでしょう。仮に5千冊としてみても、そのうち良い作品は2000冊で、残り3000冊は読む価値のないくだらない作品なのです。
良いエッセイ集の条件とは
では良いエッセイとはいったいどんな作品を言うのでしょうか。人によって評価は異なるかもしれませんが、わたしの場合は次の3点を評価の基準にしています。
・感性がすぐれている
良いエッセイには読んでいてハッとさせられることがあります。心を動かされるのです。感動と言ってもいいかもしれませんが、心が洗わられたような新鮮な気持ちになるのです。これをもたらしてくれるのは新鮮なボキャブラリーや巧みな表現力です。
作家(小説家)にまず必要なのはボキャブラリーの力です。読み手はいつも新鮮な言葉を待っています。手あかのついたありきたりの言葉でなく、みずみずしくて新鮮な言葉づかいを求めているのです。
また表現は説得力に満ちたものでなければなりません。それであってこそ読者に感動を与えることができるのです。
読む人に感動を与えるには書き手の感性が優れていなければなりません。その感性は人や物事を深く観察し続け、絶えず良い書物に接することによって培われるのではないでしょうか。こうして身につけた卓越した感性こそが読ませるエッセイを書く力になるのです。
・示唆に富み、学ぶ点が多い
本を読むことは学ぶことです。ひとは暇つぶしや娯楽のためではなく、何らかの知識やノウハウを知ろうとして本を読むのです。
小説に比べてエッセイを読む人には特にこのニーズが強いのです。ということはこのニーズに応えるに足る作品でなければならないのです。
その点を忘れて作者だけが自己満足して書いている作品が多いのです。
示唆に富むとは学ぶ点が多く勉強になることです。エッセイはなんとしても読者のそうした要望に応えなければなりません。
それを忘れて、安易な日常的なことばかりをテーマにした作品が多いのが現状です。それ故に10冊のうち6冊はつまらない作品ということが起こるのです。
日常的なことは誰にでも似通っており、それだけに珍しくなくつまらなく思えるため読者の共感を呼ばないのです。
エッセイはなるべく非日常で珍しく貴重な事柄ことがらをテーマにしたいものです。
・ユーモア、機知(ウイット)に富む
エッセイでもう一つ大事なことがこれです。つまりユーモ、機知(ウイット)に富んでなければ良いエッセイとは言えません。
ユーモアの語源は言う迄もなくヒューマン(人間)です。ということはユーモアに富んでいるこよこそ、人間らしいのです。読者が好むのは人間らしいエッセイなのです。
機知(ウイット)は、その場で即座に働く才知のことで頓智のようなものです。これもユーモアと同じように人間性に通じることです。
日常的な事柄をテーマにする場合は切り口とセンスが大事
エッセイには非日常なテーマが良いとは言え、人気作家のように大量にエッセイを執筆する人にとっては無限にテーマがあるわけではありません。
書き尽くしてネタ不足に陥ることが往々にして起こります。そうした場合は、仕方なく身のまわりの日常的なテーマを用いることもあるでしょう。
でも日常的なテーマは、読者にはえてして退屈なものになりかねません。しかし優れた作家は日常的な事柄のテーマでも、切り口と持ち前の優れた感性で読み手をぐんぐん惹きつけます。
書く人の力によっては平凡な日常の出来事が、読む人に感動や共感を与えることができるのです。
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