(故)大平元首相に関する取っておきのエピソード
(その1)チャック開いていますよ
今はもう無くなりましたが、大阪の中の島に、大阪グランドホテル(2009年閉館)という老舗ホテルがありました。国内のVIPや外国の要人がよく泊まる大阪屈指の高級ホテルでした。
余談ですが作家の森村誠一氏は若い頃ホテルマンでしたが、その彼が一時期働いていたのがこのホテルです。
わたしは20代前半、このホテルでフロントクラークとして勤務していたのですが、ある年の春ごろでしたか、その頃はまだ外務大臣であった大平正芳氏が宿泊のためにやってきました。
実は氏の家と私の父の家は、互いの祖父が兄弟という本家と分家の関係の遠縁にあたります。
翌日の朝、出発前にロビーで挨拶しました。初対面の私が自己紹介すると、彼はいきなり「五郎は元気か?」と尋ねました。五郎とはわたしの父の名前です。
彼は長い間(何十年も)会っていない父の名前をちゃんと覚えていてくれたのです。
父は「子供の頃はよく一緒に遊んだ」と話していましたが、彼の言葉はそれが事実であることを証明してくれました。
それはさておき、そう言った彼の姿に目をやると、なんとズボンの前のチャックがぽっかりと開いたままになっているではありませんか。
そんな姿のまま、人の多いロビーを堂々と歩いていたのです。
私がすかさず「チャック開いていますよ」というと、彼は「あっそうか」と少しも悪びれた様子もなく、おもむろにチャックに手を伸ばしていました。
(その2)天井から頭上に刀を吊るして
私の父はかつての大平正芳氏について、こんな話をしていました。
香川県の旧制観音寺中学から東京商大(現、一橋大学)に進んだ彼は、すごい勉強家だったそうです。
何がすごいかというと勉強に対するその姿勢です。
勉強を長く続けるためには中断しないことが大切で途中でむやみに立ち上がらないことです。
とはいえ、立ち上がって中断することを止めることは簡単ではありません。
彼はどうしたら立ち上がらないようになるか工夫を凝らしました。
その結果、天井から頭上の位置に刀を吊るすことを思いついたのです。
うっかり立ち上がると刀が頭に刺さるので怖くて立ち上がれなくなるからです。
それほどまでして彼は勉強に打ち込んでいたのです。
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