最後のページでやっと蒲団という題名の由来がわかった
「蒲団」は「田舎教師」に並ぶこの著者の代表作です。どうして蒲団というタイトルなのかが読んでいてもなかなかわかりませんでしたが、やっと最後のクライマックスのシーンで「なるほど」と解明できました。
発表当時は問題作と騒がれたが、いま読んでみると?
この作品が発表されてから100年以上もたった今でも読み続けられている理由はいったい何なのでしょうか。
最大の理由は発表当初から問題作品として注目されたからです。
何が問題かといえば、主人公竹中時雄の性にまつわる赤裸々な感情の告白です。
最大の理由は発表当初から問題作品として注目されたからです。
何が問題かといえば、主人公竹中時雄の性にまつわる赤裸々な感情の告白です。
弟子の女性が去ってしまった最後のシーンでは、教え子でもあるにもかかわらず、その女性に対しての押さえ切れない性的感情を一気に爆発させているのです。
しかし、これが問題になったのは、あくまで男女交際に厳粛な明治という時代背景があった故で、人々が性に関してうんと大らかになっている現在では当てはまらないのも事実です。
にもかかわらず今でも人々がこのテーマに注目して読み続けているのは不思議です。
蒲団 あらすじ
34歳という当時としては中年真っ只中の年齢で、妻と3人の子供のある作家の竹中時雄だが、その元に縁あって横山芳子という女学生が弟子入りを志願してきた。見目美しい妙齢の女性ではあったが、時雄はなぜだか始めはあまり気の進まなかった。でもその後芳子と手紙をやりとりするうちに、その才能に将来性を見つけ、師弟関係を結ぶに至り、芳子は郷里の岡山県新見から上京してくる。時雄と芳子、二人の関係ははたから見ると仲のよさそうなカップルであったが、時を経ずして芳子には田中秀夫という恋人ができた。 時雄は並々ならぬジェラシーの感情を抑えることができず、監視するために芳子を自らの家の2階に住まわせ恋人から隔離ることにする。だが芳子と秀夫の仲は時雄の想像以上に進展していき、嫉妬からの怒りを抑えきれない時雄は、恋人から離れさすために芳子を破門し父親と共に帰らせる。
100年以上過ぎた作品なのに、今でもこれほど多くのコメント(書評)が寄せられているのは驚き!
下にご紹介するのは、この作品に対する書評コメントです。
ネットの「読書メーター」というサイトに載った2018から2019年にかけてのごく最近のものばかりです。
文面から若い読者が多いようですが、100年以上前のこうした古い作品を読んで、熱心にその書評を書く真摯な態度には驚かされます。
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日本の自然主義文学を代表する作品の一つで、また私小説の出発点に位置する作品とされる。 内容は簡単にいうと、 文学作家が若く美しい女弟子に片思いする話。 中年男の自分勝手な恋情にイライラしてしまって主人公の気持ちに浸れなかった。笑 けど、ここまで赤裸々に言っちゃうその勇気はすごいね!男気!
ナイス
自然主義の代表作として名前は知っていました。ですから、あまり期待せずに読みましたが、予想に反して、読みやすかったです。いろいろ評価は分かれるのでしょうが、女学生の甘さと主人公の心中のキモさがなかなかに面白いです。本来の味わい方とは違うのでしょうが、妄想、泥酔、奥さんへの八つ当たり、自己欺瞞、自己憐愍に、わー、きもーいと思いながら楽しみました。
ナイス★8
日本の私小説の出発点で、最後の露骨な描写が当時問題になったという事ですが、中年男性が若く美しい女学生に憐れにも翻弄され懊悩する様子がありありと描かれていて『痴人の愛』に通ずるものがあり、一気に読み進められました。男女の交際に対する当時の禁制的な雰囲気、それに反してしまった芳子の態度と、主人公の赤裸々な妄想の対比が面白がったです。
ナイス★2
国語便覧で概要を読んだ時は勝手に、冴えない男のつまらない横恋慕の話なんだろうなと思っていたが、実際に読んでみると色んな事情か絡んでいてとても面白かった。私小説なんてただ自分体験したことをそれっぽく書いただけだろうと思っていたのだが、主人公以外の人物の心情も事細かに書かれていて人間を相当観察していないと書けないなと思った。表現がすっと頭に入ってきて読みやすかった。当時の女性観も知れて興味深かった。男女交際について今では考えられないほど厳しい時代だったなあ…
ナイス★1
★3.0(3.29)1907年(明治40年)発行。私小説の出発点とされ、日本の自然主義文学の代表作とのこと。題名は昔から知っていたが、やっと読み終えました。明治時代の恋とはこのようなものだったんですね。結婚している時雄の元に女学生の芳子が弟子入り。時雄は芳子に恋するも、芳子には、恋焦がれる田中秀夫が・・・。時雄は結局は芳子のいい理解者になろうとするが、本心はなんとか芳子を手に入れたいと苦悩。何で「蒲団」という題名なのかと思ったら、最後で漸くわかりました。男性の心理とはいつの時代でも変わらないと思いました。
ナイス★12
★★★★☆:正直に言うと、主人公だいぶキショイし、hypocriteだし、奥さんが可哀想。作品のテーマは「浮雲」に似てる!要するに近代化しきれていない日本批判。女学生という明治レディに憧れる高学歴女子 v. 保守的な男性たち。日本に於いてのキリスト教受容の難しさもついでに描いてる。女の子がいくら頑張っても結局男の人が勝つということ。
ナイス★16
助平をこじらせて、性癖へと昇華されていく過程が面白い。癖とは結果的に同じであっても、其処に至るまでの景色は多様で複雑であると思います。時雄の助平心、芳子の純情、秀夫のヒモ気質、時雄妻の無個性感と、其々キャラが立っていてとても分かり易い。先日ニュースで、玄関で脱いだ他人の靴の匂いを四つん這いで嗅ぎ、お気に入りを新品と差し替えて持ち帰るという事件が報道されていました。その癖はどのように形成されたのだろうか。
ナイス★10
私は一応 若い女の立場なので、大人の男たちが権力で私欲を正当化しているような態度にとても腹が立った。ホント弱い奴ら!処女信仰とかクソ喰らえ!そもそも個人的に、師匠や先生といった立場にある人を男として見たくないので、こういう生々しい表現は吐き気がする。とはいえ、彼の醜い感情の端っこは 私にとっても覚えのある葛藤だったりもするんだよな。
ナイス★11
妻と子供がありながら、文学を志し自分を慕ってくる芳子の事が可愛くて仕方がない。しかし、妙なプライド?思想?から一線は超えず、でも自分が全てを支配したいと思いその狭間で懊悩する。ある意味すごく人間らしいと感じた。途中で一瞬妻と恋愛していた時の事を思い出すが、矛盾でも無節操でもこれが真実なのだから仕方ない!と開き直るところがまたリアル。
ナイス★7
文学の話などしたことない人から「気持ち悪い中年オヤジの話 なかなかおもしろい」とすすめられました。学校の国語便覧で目にしてはいましたが、未読だったので、ibooksを使って読んでみました。 人ってだいたいこういう気持ちをもっているよね~っと思いながら読み終わりました。
ナイス★7
日本の自然主義が露悪的な私小説となっていくきっかけを作った作品とされている。作品そのものよりも、モデルとなった岡田美知代に興味を持った。広島県府中市にある記念館を訪ねてみたい。
ナイス★3
出典:読書メーター
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