2022年3月21日月曜日

コンビニ人間の村田沙耶香 小説だけでなくエッセイも素晴らしい

 


村田沙耶香といえばなんと言ってもすぐに思い浮かぶのは芥川賞受賞の小説「コンビニ人間」です。コンビニをテーマとしたなんともユニークな作品で、その独特の魅力は万人をひきつけ空前のベストセラーになりました。

人気は国内だけではありません。読者は広く海外にまで及び、今や世界30カ国以上で翻訳出版されブームを呼んでいます。

今回ご紹介するのはその作家が出したエッセイ集「となりの脳世界」という作品です。 

 

  書評 村田沙耶香エッセイ集 「となりの脳世界」 朝日新聞社 

このエッセイ集には著者の20代半ばから現在の30代後半にかけての作品が70数点集められています。

作家はえてして小説だけでなくエッセイにも力を入れれ書くのですが、出来栄えの方は必ずしも評判になった小説同様に良い作品になるとは限りません。

極端な場合は「あの小説家がこんな下手なエッセイとは」と思わせるほどの駄作を出すこともあるのです。

でもこの著者は違います。コンビニ人間で見せたユニークな発想はエッセイでにも生きておりどの作品も読む人をひきつけて放さない魅力に溢れています。

70数編の作品の大半が素晴らしいのですが、ここでは読み終えて特に心に残った3編をご紹介することにします。

 

となりの脳世界 心に残った3つの作品

 

こそそめスープ 

このエッセイを読むのは2度めである。たしか光村図書から出ているベストエッセイ集にも掲載されており、1回目はそれで読んだはずだ。読む機会が2度訪れるのはこの作品が良いエッセイの証拠だろう。さて内容だが、著者はコンソメスープのことを正しい名前はコソソメスープだと長い間信じて疑わなかった。誰もが「こんそめ」と言っているのはわかっていても、それはどこにでもある安物の食堂で出まがいもののスープあり、「こそそめスープ」こそ一流シェフが作る高級店の本物のスープだと確信しているのだ。

 

相撲を夢見た日 

小学校3年生のときの学校での体育の授業の話です。ある日の授業で先生が「今日の授業では相撲をやる」と言います。著者は思います。「相撲だなんて、私は何もわからないし、技も知らない。でも相撲で重油なのは押しのちからなのでは、それなら何となくできると思う」そう考えてクラスの女子との対戦では腰を低くして相手を押しまくったのです。するとどうだろう、気がついてみればトーナメントでクラスの女性を全部破っていたのだ。それで今度は男子生徒に挑戦したのだが、流石に男の子には力及ばず初戦で敗退。その後相撲のことが忘れられないようになり、中学へ進学すると相撲部へ入部しようと、早速部室やメンバーを探したが、残念ながらこの中学に相撲部はなく、諦める他なかった。

 

猿と人 

温泉に入る猿で有名な地獄谷温泉へ友達と行きました。多くの猿が温泉に入る様子は圧巻で、面白おかしく眺めていました。でもさるだけを楽しませておくわけには行かないと人間の自分たちも入ることにしました。温泉の中から猿たちを眺めていると、「あの人間たち、温泉に入って一体何を考えてているのだろうか?」などと、猿の方から人間が観察されているような妙な気持ちになりました。

 

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出版社内容情報 

【文学/日本文学評論随筆その他】デビューから現在まで各紙誌に書いてきたエッセイを一冊にまとめた決定版。小さな頃の思い出から、影響を受けた本や音楽、旅先での出来事、今まで気づかなかった勘違いに、コンビニバイトのこと。Twitterで話題の『「走らせている人」たち』も収録!



内容説明 

読み終えた後、目の前の世界が変わる。芥川賞作家が書き続けてきた日常と想像のあれこれ。デビューから15年、初の決定版エッセイ集。


 

目次

小さい頃について(スーパーの蜃気楼;宙返りの終焉 ほか)
日常について(歌舞伎町の店員;四度目の出会い ほか)
好きなことについて(文庫本が並ぶ本屋の想い出;安らかな爆破 ほか)
散歩、旅することについて(ダイアログ・イン・ザ・ダーク;港区芝公園界隈 ほか)


 

著者等紹介 

村田沙耶香[ムラタサヤカ]
1979年千葉県生まれ。玉川大学文学部卒業。2003年に『授乳』で第四十六回群像新人文学賞(小説部門・優秀作)を受賞し、デビュー。09年『ギンイロノウタ』で第三十一回野間文芸新人賞、13年『しろいろの街の、その骨の体温の』で第二十六回三島由紀夫賞、16年『コンビニ人間』で第百五十五回芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

                          出典:紀伊國屋書店

 

 

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