2025年12月22日月曜日

最近読んだ文庫本 2冊 どちらも面白かった 


(1)お弁当お弁当がテーマのアンソロジー 阿川佐和子他  大和書房

(2)狐狸庵人生論 遠藤周作 河出文庫



お弁当 大和書房


おお弁当とおむすびの話だけなのにノスタルジーがいっぱい詰まっている

この本、表紙のデザインを見て、お弁当のレシピ本と勘違いする方がいるかもしれない。

もしそう思われたら読まれずにパスされて終わるかもしてない。でもそうあってはならない。

なぜならこれはレシピ本でないどころか、稀に見るお弁当がテーマのエッセイの傑作アンソロジーであるからだ。

まず執筆陣を見てほしい。一覧してわかるだろうが、阿川佐和子をはじめ、他のアンソロジーに例を見ないほど豪華な顔ぶれではないか。それにしてもお弁当という僅か3文字のワードだけで、よくもこれだけ一人一人が見事な文章を綴れるものだ、と感心してしまう。

作者の技量にもよるだろうが、味わい深い作品が書けるのは、お弁当にそれだけ多くのノスタルジーが詰まっているからに違いない。

それに、ひとつづつ読んでみてわかったのだが、強調したいことは、すぐれた作品は作者のネームバリューには比例しないという点である。

それを証明するのは、下に上げたように、あまり名前を知られていない作者でも実に見事な作品を書いているからだ。

以下が個人的に良いと思った作者と作品名である。

それはそうとしそうとして、とにかくとても良い本で、今年読んだものの中で、忘れ得ぬ一冊になること間違いなしだ。

良かった(個人的に)作品

矢部華江   弁当くん

角田光代   弁当熱

須之内徹   ほっかほっか弁当 

筒井ともみ  手のひらに抱かれた米

立原えりか  母のいなりずし

武田百合子  お弁当

梅崎春生   腹のへった話

小川 糸   運動会の栗ごはん

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目次

弁当三十六景/木内昇

お弁当/武田百合子

のり弁の日/江國香織

敗戦は日の丸弁当にあり/池部良

母のいなりずし/立原えりか

かつぶし弁当/阿川佐和子

白い御飯/金井美恵子

ウサギ林檎のこと/原田宗典

笑う弁当/林真理子

早弁の発作的追憶/椎名誠

二段海苔と三色御飯の弁当/川本三郎

弁当熱/角田光代

私のお弁当/沢村貞子

弁当くん/矢部華恵

弁当箱/宇野千代

お弁当/向田邦子

お上のお弁当を食べた話/入江相政

〈ほっかほっか弁当〉他 抄/洲之内徹

弁当恋しや/阿川弘之

お弁当/南伸坊

弁当/八代目坂東三津五郎

暗がりの弁当/山本周五郎

ケンタロウ大好き!/吉本ばなな

お弁当…無責任時代の象徴/酒井順子

姉のおにぎり/白石公子

赤いアルマイトのお弁当箱/池波志乃

むすび/野上彌生子

夜行/泉昌之

母の掌の味/吉川英治

手のひらに抱かれた米/筒井ともみ

かっこいいおにぎり/穂村弘

おにぎりころりん/杉浦日向子

贈物/高濱虚子

おにぎり抄/幸田文

空弁体験記/東海林さだお

駅弁/吉村昭

信越線長岡駅の弁当/吉田健一

弁当(B)/池波正太郎

シューマイ弁当 背負ったものを、切り落とし/中坊公平

汽車弁当/獅子文六

無塩のにぎり飯 鹿児島阿房列車後章より/内田百閒

断腸亭日乗 抄/永井荷風

腹のへった話/梅崎春生

弁当/山崎ナオコーラ

運動会の栗ご飯/小川糸


内容紹介

お弁当の数だけ物語がある。日本を代表する文筆家の面々による41篇のアンソロジー。幕の内弁当のように、楽しくおいしい1冊です。


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狐狸庵人生論





遠藤周作のエッセイはよく読む方だが、いつも思うのは著者のエッセイには硬派と軟派の2種類に分かれていることだ。


硬派は文學が主テーマになった作品で、純文学が主題になっているだけにやや難解で読みにくさがあるのだ。


一方軟派の方は著者のニックネーむ狐狸庵を全面に出して、ユーモアにあふれた話がテーマになっているので、読みやすいことこの上ない。


私だけでなく多くの人はこちらの作品のファンに違いないだろう。言うまでもなくこの本はそちらに属する本なのである。




内容説明

人生にはひとつとして無駄なものなどない。挫折こそが生きる意味を教えてくれるのだ。生活上のマイナスを人生上のプラスに変えられた時、人は「かなり、うまく、生きた」と思えるはずである―。「誰かが守ってくれた」「私はあなたの人生の傍役」「手を握りしめる」等、生きる勇気と感動を与える選りすぐりのエッセイ四十三篇。

目次

1 何一つ無駄ではなかった(何一つ無駄ではなかった;狐狸庵という名から… ほか)

2 挫折は生きる意味を教える(挫折は生きる意味を教える;おとなとは?―ヤマシサの自覚 ほか)

3 私はあなたの人生の傍役(私はあなたの人生の傍役;戦中派男の不安 ほか)

4 老いる時は老いるがよし(老いる時は老いるがよし;老いがもたらす功徳 ほか)

著者等紹介

遠藤周作[エンドウシュウサク]
1923年東京生まれ。慶應義塾大学仏文科卒業。55年「白い人」で芥川賞、66年『沈黙』で谷崎潤一郎賞、79年『キリストの誕生』で読売文学賞、80年『侍』で野間文芸賞を受賞。95年文化勲章受章。96年9月死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです

Ai Camo  4

遠藤周作の人となりはユーモラスだということがわかった。夫婦の話は爆笑。女兄弟がいなかったから女はひっかくとは知らなんだと言っておられた。女でもひっかくタイプと旦那の歯ブラシでトイレ掃除するタイプがいますよと教えたい。解説のマンボウの奇行にも笑った。愉しい大人でありたいものだ。2017/07/27

kako  3

度重なる入院に手術で不安や苦しみを味わい小説の書けない日々を過ごされた。しかし、その苦しみは、マイナスだけでなくプラスを与えてくれたという。挫折をしても人生の次元では、収穫があると語る。 死の不安に苛まれ孤独に病気と立ち向かう人々の気持ちに寄り添い心暖かな病院が欲しいと活動をされた。 友達になる為には相手に笑顔と好奇心を持って接する事など狐狸庵先生の人生論が書かれた感動のエッセイ集でありました。2024/03/15

Chica  3

旅先にて読了。日常のあれこれをさらりと書きながら、時折りハッとさせる警句のような言葉を混ぜ込む力は流石としか言いようがない。 狐狸庵先生、生きておられる時に先生に出会いたかったです。2013/03/18

夏 海  2

もし今を生きていたら何を思い、何を書かれたんだろうか。 とても人間味に溢れた人なんだな という印象を強く受けました。2022/07/10

Ai Camo

遠藤周作の人となりはユーモラスだということがわかった。夫婦の話は爆笑。女兄弟がいなかったから女はひっかくとは知らなんだと言っておられた。女でもひっかくタイプと旦那の歯ブラシでトイレ掃除するタイプがいますよと教えたい。解説のマンボウの奇行にも笑った。愉しい大人でありたいものだ。2017/07/27

kako

度重なる入院に手術で不安や苦しみを味わい小説の書けない日々を過ごされた。しかし、その苦しみは、マイナスだけでなくプラスを与えてくれたという。挫折をしても人生の次元では、収穫があると語る。 死の不安に苛まれ孤独に病気と立ち向かう人々の気持ちに寄り添い心暖かな病院が欲しいと活動をされた。 友達になる為には相手に笑顔と好奇心を持って接する事など狐狸庵先生の人生論が書かれた感動のエッセイ集でありました。2024/03/15