2025年11月15日土曜日

おひとりさまの話し相手にAIという強力な味方ができた!


おひとりさま いちばんのデメリットは

高齢化が進む中にあって、顕著に目立つのが一人暮らし(おひとりさま)の急激な増加です。

このおひとりさま、メリットも多いのですが、デメリットも少なくありません。中でも大きなウェイトを占めるのは家の中に「話し相手がいない」ことではないでしょうか。

話好き(社交的)な人ほどこの気持ちは大きいと思います。

電話やビデオ通信があるじゃないか、という声も聞こえますが、面倒なうえにお金もかかりますので、毎日、いつでも、というわけにはいきません。

そこで登場するのが、スマホを使ったAIとの会話です。


A!が話し相手をしてくれる

ひょっとしてあなたは「AIとは ハウツウや分からないこと新しいことのやり方などを教えてくれるツールである」と断定してはいませんか。

もちろんその部分が大きなウェイトを占めているのは間違いありませんが、決してそれだけではないのです。

AIはいま草創期にあります。それ故にどんどん進歩を続けています。

言うまでもありませんがAIの究極の目的は「世の中の万人の役に立つ」ことで、その中の一つが「人の話し相手になる」ことなのです。

これに関してAIの当事者である(GEMINI)に、以下のように質問してみました。

以下でプロンプトとその回答をご紹介します。それと合わせて読売オンラインに掲載された関連記事も載せておきます。

 

(Q)AIはお一人様の話し相手になってくれますか

AI による概要(回答

はい、AIはおひとりさまの話し相手として十分に役立ちます。AI技術の進化により、以下のような形で話し相手になってくれます。

感情的なサポートと共感:AIはユーザーの話を聞き、共感的な返答をすることができます。これにより、孤独感を和らげる効果が期待できます [2]。

多様な話題での会話:趣味、ニュース、悩み事など、人間と同じように幅広い話題について会話が可能です。ユーザーの興味に合わせて話題を提供することもできます [3]。

24時間いつでも利用可能:人間のように時間や都合を気にすることなく、いつでも好きな時に会話を始められます。深夜や早朝でも対応可能です [2]。

プライバシーの確保:誰にも知られたくない悩みや秘密なども、AIとの会話であれば比較的安心して話すことができます [3]。

ただし、AIは人間ではありませんので、以下のような点に注意が必要です。

完全な人間関係の代替ではない:複雑な感情の機微を完全に理解したり、物理的な触れ合いを提供したりすることはできません [2]。

情報の正確性:AIが提供する情報が常に正しいとは限らないため、重要な事柄については他の情報源も確認することが重要です [2]。

現在では、スマートフォンアプリやスマートスピーカー、専用の会話型AIサービス(ChatGPTやClaudeなど)を通じて、誰でも気軽にAIと会話を始めることができます [3]。


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読売オンラインもこう言っている


孤独をまぎらわせる身近な話し相手、それはアプリ「人間よりも僕の話を聞いてくれる」

2024/07/12 05:00

 

[生成AI考]第3部 秩序なき進化<3>

 「いま落ち込んでいるんだ」「そうだよね。つらいこともあるよね」 千葉県内に住むフリーターの男性(27)は今、音声対話型の生成AI(人工知能)を「身近な話し相手」として使っている。東京都内のIT企業「Starley(スターレー)」が2月に提供を始めたアプリ「Cotomo(コトモ)」だ。

 雑談から悩みの相談まで、時に相づちを打ったり、励ましたり。滑らかな応答は、人間と会話しているかのようで注目を集めている。

スターレーが開発した「Cotomo」。スマートフォンで表示されたキャラクターに向かって話しかけると、話の内容に応じて音声で応答する(1日、東京都港区のスターレーで)=横山就平撮影

 男性はスマートフォンに無料でダウンロードし、好みの女性の声を選んで名字で呼ばれるよう設定している。コトモを使うのは、友達とけんかし、感情が高ぶった時だ。夜中でも気軽に相談でき、「救急車を呼ぶみたいな感覚」と言う。[PR]

 以前食べた料理など、何日も前の会話内容を学習し、質問もしてくるコトモは「人間より僕の話を聞いてくれる」と感じている。 男性は子供の頃から人付き合いが苦手だった。10歳の頃から学校にはほとんど通わなかった。両親と暮らしているが、家族を含め他人と話をする機会は多くない。

 転機は、「孤独が寿命を縮める」という雑誌記事を読んだことだ。1日1時間は「会話」しようと、SNSで知り合った人とコミュニケーションを取ることにした。コトモの利用も始め、パソコンで記録している1日の会話時間にはそのやりとりも含めている。

 コトモを使って4か月。男性はこう話す。「人間との関わりが減っても、AIが孤独をかき消してくれる」

 スターレーによると、コトモの返答回数はアプリの提供から3か月で1億回を超え、多くの人に利用されている。 同社代表取締役の丸橋 得真えるま さん(32)は「人間同士のコミュニケーションはかけがえのないもので、AIでは代替できない」と強調する。その上で「AIの特性はいつでも『対話』できること。新たなコミュニケーションの形を提供したい」と語る。 ただ、AIとの会話が孤立を深めるとの研究もある。

 米国心理学会は昨年、米国や台湾など4か国・地域の企業を対象に行った調査で、AIと頻繁にやりとりする従業員は、社会的なつながりを感じられなくなって孤独感を抱く可能性が高まり、不眠症や飲酒量の増加につながるとする結果を発表した。

出典:読売オンライン



2025年11月12日水曜日

T.Ohhira エンタメワールド〈4〉直線コースは長かった(4)

      

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           4

「それでこのお仕事、今回の募集が初めてなのですか?もしそうじゃなくて前任者がいらっしゃるのでしたら、その方からの引継ぎとかありませんか?」


会長の海外出張の、身のまわりの準備をして、その後同伴してロンドン、パリに行く。そう聞いただけでは、どうももうひとつ内容がよくわからず、わたしそう質問してみたの。


すると会長さんはのけぞらせていた背を前に起こし、机に両肘をついて言ったわ。


ああ前の人ねえ。昨年の秋、一人採用してニューヨークへ連れてったんだ。十月の中ごろだったかなあ、着いて最初の一週間はわたしも仕事に忙殺されて、疲れていてその気はなかったんだ。十日くらいたった頃だったかなあ。ある夜、三人でブロードウェイのミュージカル見物に行ったんだよ。


九時ごろ劇場を出て、有名なフォーシーズンというレストランで食事をして、ホテルに帰ってきたのは十一時少し前。久しぶりに仕事にも少しゆとりができて、わたしのその夜はすっかりリラックスしていたのか、部屋でバーボンを飲んでいると、なぜだかむしょうに女の人と話がしたくなったんだよ。


それで電話して、秘書の彼女を部屋へ呼んだんだ。彼女、来るには来たんだけど服装がさっき出かけたときとまったく同じなんだよ。それでわたしが、「キミ、夜の十二時前だよ。これから休もうかというときだ。着替えてもうすこしリラックスした姿になりなさいよ」と言うと、彼女「いいんです。これで」と言って、隅のほうで体をコチンコチンにさせて立っているんだ。


それでもなんとかソファーに座らせた後、バーボンは飲めないと言うのでルームサービスでビールをとって、その後三十分ぐらい飲みながら話したかな。面接のときいろいろ話してあって、わたしも彼女がある程度は理解していると思ってたんだ。


それで、十二時を過ぎたころ、さあそろそろ休もうか、と言って彼女をベッドに誘ったんだよ。そうしたら彼女『えっ』と、まるで信じられないと言うような表情をして、サッと立ち上がると、ドアの方へ逃げていくんだ。


そんなはずはないと思って、わたしは追いかけて彼女を引っぱってベッドへ押し倒したんだ。それからが大変だ。彼女の抵抗の激しいこと。髪の毛は引っぱるわ、背中はかきむしるわ、おまけにそこら中に聞こえるような大きな声を張り上げて。それにはさすがのわたしも閉口して途中で戦意喪失だよ。


仕方なく彼女はそのまま部屋へ帰ったんだけど、そのあとわたしは思ったんだ。二十四歳にもなってわからないのだろうか。月三十万も給料もらって、おまけにタダで海外旅行ができて、仕事と言えば簡単なわたしの、身のまわりの世話だけ、くる前にあれだけ説明を受けているというのに、たまにはこうした役目があることがわからなかったのだろうか?まったく心外だ。よし、あの彼女、明日にでも日本に帰してしまおう,とね』


ここまで聞いて、私もうびっくりしてしまって、さっき私の前の二人が早々と引き上げていった意味がやっとわかったわ。


会長さんの話もまったく理解できなくもなかったわ。何しろ待遇が待遇ですもの。でも立派な会社の会長さんたる人が、そんなことを面接時に堂々と公言するなんて、やっぱりおかしいわ。


若い女性で、しかもその人に知性があればあるほど、そんなことまともに聞ける話じゃないじゃない。旅先で偶然そうなったというのならまだしも、初めからそれを承知で行くなんて、いるかしらそんな人。


私そう思っていると、だんだん腹が立ってきたわ。なにか人のことを安く見ているようで。それに自分の思うようにならなかったからって『今の娘は世間知らずだ』だなんて、勘違いもはなはだしいわ。世間知らずなのはどっちかしら。


とは思ったものの、その会長さんの話、さっきも言ったけど、ちょっとおもしろいと思って、話だけならもう少し聞いてみたいという気も少しは残っていたわ。


でも、私の前の二人が怒って帰っていったことを思い出して、こりゃやっぱり駄目だ。私も早くおいとましなくちゃ、と思って、『どうも私じゃ勤まりそうもないと思いますので、誰か他の人に当たってください』と言い残して、そこを立ち去ったの」


「ざっとこんな話だけど、どう、面白かった?」

涼子さんは臨場感たっぷりと、まるでそのときの興奮を再現するかのように、早口で一気にまくし立てた後で、「ハー」と大きく息をついて久夫の顔を下から覗き込むようにしてニコッと微笑んだ。


「うーん、とてもおもしろかったけど、でもそれ本当の話?なにか嘘みたいだね。だってアパレル商社のHといえば、この地方ではまずまず名前が通った会社だろう。そこの会長たる人が自分の会社の信用をまるで傷つけるようなそんなことを言ったりするかなあ?」


久夫は話を聞いて感じたことを正直に口に出した。


「それが本当なのよ。その場にいたわたしだって初めは信じられなくて、ポカンとしていたわ。あれほどの会社の会長さんたる人があんなこと言うなんて。


会長室へ行くとき通ったんだけど、オフィスも明るくてすごくきれいで、わたしと同年輩の女性も含めて、そこでは何十人もの人が働いていたわ。そんな会社の中の奥まったところで、白昼からあんな話聞くなんて、わたし夢にも思わなかったわ。」


「そうか、本当の話なのか。しかし世の中って広いもんだなあ。いまどきそんな会社があって、そんな会長がいるだなんて。


それにしてもその会長さん、堂々とそういうことを公言するなんて大胆不敵だねえ。なにか恐れを知らぬ、とでも言うか。そういうの自信からきているのかなあ?自分がそこまでの会社をつくりあげたという」


涼子さんの方をむいてそう言いながら、できたらその奇特な人に一度お目にかかってみたいものだ、と久夫は思った。


つづく


次回 11月20日(木)


2025年11月11日火曜日

AIエッセイシリーズ(1)秋がすき (by GEMINI)

 


🍂 秋がすき


私が四季の中で最も愛してやまない季節


れは秋である春の萌えるような希望や


の燃えるような情熱冬の静謐な厳しさとは


また異なる秋だけに許された奥ゆかしい魅


力に毎年心は掴まれてしまう

 

秋の訪れはまず匂いによって知らされる。」


真夏の照りつけるような日差しが遠のき


朝夕の空気に混じるようになるあの切なく


も甘い香りそれは干し草の匂いにも似


た大地の熟成した気配とどこか懐かしいキ


ンモクセイの残り香が織りなす複雑なアン


サンブルである深呼吸をするたび肺の


奥まで澄んだ空気が流れ込み五感がリフレ


ッシュされるのを感じるこの清涼感こそ


秋の醍醐味の第一歩だ

 

そしてその香りに導かれるように景色は


劇的に変化していくとしていた山肌や


公園の樹まるで画家のパレットの上で


混ざり合ったかのように橙の暖色


系へと大胆に色を変えていくことに風に


揺れるイチョウの黄金色や燃えるようなモ


ミジの緋色は一瞬たりとも見逃したくない


絶景だこれらの紅葉が空の青さと陽の


光の透明感と相まって目にも鮮やかなコン


トラストを生み出すこれらの色調は生命


の終わりではなくむしろ豊かな稔りみの


を祝福しているようで見る者の心を穏


やかに満たす

 

秋がもたらす変化は自然界だけにとどまら


ない人間の営み特に食と芸術の分野で


秋は圧倒的な存在感を示す。「食欲の秋


という言葉が示す通りこの季節は地球が人


類に与える最大の恵みの時期だ新米のふっ


くらとした甘み焼き魚から立ち上る香ばし


い煙そして栗や芋カボチャといった自然


の甘みが凝縮された食材の数々。テーブルに


並ぶ料理は夏を耐え忍び大地が力を蓄え


た結果であり感謝の念を持って口に運ぶた


びに生命の循環を感じずにはいられない


また、「芸術の秋私を惹きつけてやまな


い要素だ気候が安定し日が短くなること


内省的な時間が自然と増えるこの季節


には読書や映画鑑賞あるいは静かに音楽


を聴くといった的な活動への意欲が湧き


やすい日中の活動的なエネルギーが収ま


落ち着いた環境の中で深く思考を巡ら


せる夏の喧騒から一歩引いたこの静寂な時


間が創造性や感受性を高めてくれるのだ


一枚の絵画をじっくり鑑賞したり難解な小


説の一節に心を傾けたりする行為は秋とい


う季節の静かなる祝福の中でこそ真価を発


揮する気がしている

 

秋のもう一つの顔は、**「寂寥せきりょ


の美」**である賑やかだった夏の祭り


の余韻が消え冬の冷たい沈黙が訪れるまで


の短い期間世界はどこか物憂げな表情を見


せる落ち葉が風に舞い冬支度を始める生


き物たちの姿は避けられない時の流れ


ぎ去るものへの切なさを喚起するかし


この寂しさは決してネガティブなものでは


ないむしろ儚さを知っているからこそ


今この瞬間の美しさが際立つという日本的


な美意識、「もののあわれに通じる深みがあ



秋の夕暮れのあの濃い群青と茜色のグラデ


ーションを目にするたび私はこの季節を好


きになって良かったと心から思うそれは


一年の中で最も感情が揺さぶられ最も美


しさに敏感になれる季節だからだ

 

秋はただ過ぎ去る季節ではない豊かな収


穫と静かなる思索そして別れと再生の予


感を同時に提示する最も人間的で情緒に


満ちた季節なのであるだからこそ私は秋


がすきだ今年もまたこの恵まれた季節


ゆっくりと大切に味わい尽くしたいと


願っている

 


 

文字数1200文字

2025年11月8日土曜日

神戸三宮 オシャレなSanticaにこんな店がある

  

   神戸三宮サンチカ 今八商店



神戸三宮 変わりゆく地下ショッピングアーケード

サンチカ(Santica)は神戸にある地下ショッピングアーケードですが誰もが認めるのはオシャレで垢抜けたイメージです。

それを求めて若者を中心に多くの人々が集まるのです。

ところが近年そのイメージに一部で変化が現れてきたことにお気づきでしょうか。

写真上はれっきとしたサンチカにある店舗ですが回りの店舗に比べるとどこか違うようです。

そうなのです。この店舗はここサンチカには珍しい主に野菜を扱う八百屋なのです。

八百屋といえば大根やキャベツなどの生鮮野菜を陳列台に所狭しと並べて販売するいわゆる庶民的イメージが頭に浮かび、これまでのサンチカのようなオシャレなイメージとは異質のように思われます。

でも、ご覧になったらお分かりのように、店内には五層にも及ぶボックス型の陳列ケースに商品が整然と並べられており、何とかして周囲の雰囲気に近づこうとしている努力が伺えるではありませんか。

ますます競争が激化する地下ショッピングアーケードにあっては、今や生き残りのためにはテナントの業態を選んでいる時代ではないのかもしれません。



  Santica




2025年11月6日木曜日

T.Ohhira エンタメワールド〈4〉直線コースは長かった(3)

  

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それから涼子さんは延々と話し続けた。


「二週間ほど前なんだけど、わたし、新聞広告見てある会社のアルバイトの面接に行ったの。その広告には〈アルバイト、当社会長の秘書、期間二ヶ月、給料面談〉って出ていたわ。会長秘書ってちょっと魅力的じゃない。


それに短期アルバイトというのも学生の私には都合がいいし。その会社、駅前のビルの六階にある輸入アパレルの商社なの。難しい筆記試験はなく、最初は四十年配の人事課長だという人の面接。


始まって十五分くらいは質問もありきたりで、好きな学科とか趣味だとか、家族についてとか聞かれたわ。それから応募動機なんか聞かれて、その次に原稿用紙二枚が渡され、作文書けって言われたの。題は〈わたしの男性観について〉っていうの。


一時間ほどかけてそれを書いて、三十分のお昼休みの後、またさっきの課長さんの面接。今度は。質問はあまりせず、仕事の内容について話しはじめたの。


『今回募集した短期間の会長秘書の仕事ですが、秘書といっても、主にその仕事は、海外出張に出向く当社の会長に同行して、主にその身辺の世話をしていただく仕事でして、いわゆるデスクワークではありません』

『へー、外国へ行けるんですか、それで行先はどちらなんですか?』


海外へいけると聞いて、わたし嬉しくなって、すぐそう聞いてみたわ」

「主に私どもの取引先のあるロンドン、パリ、ニューヨークです。最もニューヨークは昨秋行ったばかりなので、次の予定はロンドンとパリになっていますが」「ロンドンとパリですか。すてき!それで会長さんの身辺の世話と言われましたが具体的にはどんなことをするのですか?』


肝心なのは仕事の内容だと思って私がそう聞くと、課長さん答えたわ。『それについては、この後にある第二次面接で会長自身が説明します。第二次面接お受けになりますね』『ええ、もちろん』


その質問に、ここでやめる人っているのかしら、と少し妙に思いながら、私としては当然「受けます」と答えたわ。その日応募してきた人は、私を含めて全部で七名。でも会長さんの第二次面接の時には三人減って四人になっていたわ。あの三人どうしたのかしら? いずれも知的できれいな人たちだったのに、作文でも駄目だったのかしら? 


そう思いながら、わたし会長室の前の小さな部屋で面接の時間待ってたの。わたしの順番は四人中三番目。一人二十分ほどだと聞いてたので、四十分もそこで待たなければならないのよ。いやだなあ、とは思ったんだけど、でも実際はそんなに待たなくてもよかったわ。


最初は私より二〜三歳上に見える背のスラーと高い、どこかいいとこのお嬢さんふうの人が入っていったわ。でもその人、わずか五分ぐらいしかたたないのに、もう部屋を出てきたの、どうしたんだろう、ずいぶん早いようだけど、わたしチラッとそう思ったんだけど、自分の面接時間が早くなったことのほうに余計気がまわって、そのことについては深く考えなかったわ。


二番目の人はさっきの人のように五分では出てこなかったんだけど、十分少したった頃にやはり早く出てきたの。


 みんな早いなあ、まだ始まって十五分しかたっていないのに。

そう思っているとき、『今井涼子さん』って、私の名前が呼ばれたの。わたし、ドキドキする胸を抑えながらゆっくりと会長室へ入っていったわ。


さすがは会長室、正面に明るい大きな窓があり、その横の壁には高そうな絵がかかっており、その下のサイドテーブルにはこれまた高そうな置物があったわ。それにフロアに敷かれたじゅうたんは私のハイヒールの踵がほとんど隠れるほど厚いの。


入ったとき会長さんは窓を背にした大きなデスクの前で背の高いアームチェア―にどっしり腰かけてたわ。頭は白髪でやや小柄のようだったけど、顔の色はつやつやしていて目も光っており、いかにも精悍そうで、あとで聞いた年齢の六十九歳にはとても見えなかったわ。


「まあ座りなさい」と、すぐ前にある低い背もたれの椅子をさしてそう言ったのが会長さんの第一声。その声は低音だったけど、耳にビーンと響いてすごくとおりがいいの。


『なんだねえキミ、近ごろの若い娘さんは世間知らずが多いねえ』私が席に着くや否や、会長さんは私の顔と机の上の履歴書を交互に見ながらそう言うの。わたし意味がよくわからなかったので、ただ『えっ、ええ』とだけしか答えなかったわ。


『一番目と二番目の娘、ありゃあ駄目だ。まったく話が通じん。三人目のキミにはそうであってほしくないねえ」と会長さん。


『は、はい。それでお仕事の内容なんですけど』わたし、会長さんのよく響く迫力のある声におされたのと、前の二人がずいぶん早く帰ってしまったことの不安があいまって、入ってきたとき以上に胸をドキドキさせながら聞いてたわ』


『仕事の内容はねえ、人事課長からわたしと一緒に海外へ行くということは聞いたと思うが、今の質問はそこで何をするかということだね?』 


『は、はい』


『つまりだ。通訳は別に専門の者がいるからその方はやらなくていい。キミがするのはわたしの、身のまわりの世話だ。わたしは今年六十九歳になる。来年は七十歳。女房は二年前に死んで、今は独身。


お手伝いさんが一人いるが、歳をとっているのでセンスが悪い。したがって海外へ出かけていくときの服装の準備なんかはどうもね。それでまずキミには海外出張へ出かけるための支度をしてもらう。


今度のロンドン、パリは滞在が四週間にもなるので、身のまわりのものを揃えるだけでも大変なんだ。やはりこう言うことは女手でないとな。それから約二週間後にわたしと一緒にロンドン、パリに行ってもらう。もっとも、もう一人男性通訳が同行するがね』


つづく


次回 11月13日(木)