2026年8月15日土曜日

小説のようなエッセイ シリーズ No.6 (2,730文字)


H市の小学校で出会ったあの女性が懐かしい!

学校回りの「図書セールスマン」だった頃の女教師にまつわるお話


                                       GEMINI


私は40歳になる少し前、訳あってそれまで約20年間勤務したホテルマンとしての仕事を辞め、そのころ「設立後わずか5年で年商300億円超え」というめざましい発展を遂げていたある図書販売会社に営業マンとして入社しました。


再就職先をそこに決めた理由は、急発展していたからだけではなく、本がことさら好きな私にとって、図書販売という仕事に一方ならぬ魅力を感じたからです。それに加え、社長が東大卒というエリートであったことにも惹かれました。


この会社では営業社員(後に営業所長に昇格)の期間を通じて、トータルで4年間勤めました。


本という取扱商品がとても好きだったせいか会社とは相性がすこぶる良く、仕事以外の面でも数々の忘れ難い思い出を作ることができました。


その中で今でも懐かしく思い出すのは、営業で訪れた学校(小、中、高等学校)での教師たちとの出会いです。特に忘れ難いのは大阪市の隣りH市のある小学校での3性教師との交流です。



30歳ぐらいの美人女教師は職員室での商談で高価な文学全集を買ってくれた


その女教師(30代前半)は、大阪市の隣のH市にある小学校で教師として勤めていました。


図書販売の仕事では、訪問先として学校が多かったのですが、これは会社が学校の生活協同組合と契約を結んでおり、一定額の割引と給与天引きのサービスを提供していたからです。同様の契約は、官公庁、電電公社(現NTT)郵便局(現日本郵便)などとも結んでいました。


そのおかげで営業の訪問先には比較的恵まれていました。こうした多くの取引先の中で最もよく(頻繁に)訪問したのが学校です。


学校という場所は部外者の立ち入りには厳しい制限があるのが普通ですが、生活協同組合との契約があったおかげで営業活動は比較的自由にできたのです。


それともう一つの大きな理由は、かねてより憧れの的であった教職の女性教師に会うことができるからです。



文学全集を購入してくれた女教師は「数か月前に離婚した」と話し、なんとデートの申し込みを承諾してくれた


文学全集(新潮日本文学全集 全40巻)の購入契約を結んでくれるまで、その女教師とは商談の合間にいろいろ世間話をしましたが、その中で、彼女は何かのはずみか「私、3か月前に離婚したのよ」と、予期しないことを話したのです。


つい口を滑らせたのかもしれませんが、別に話す必要もない自分の離婚話を口に出したのです。多分離婚後の一人暮らしの寂しい心の内を職場以外の誰かに聴いてもらいたかったのかもしれません。


それに偶然のこととはいえ、私自身も2年前に離婚した身であったせいか、その話には親近感からか、より親しみの感情が湧きました。


今時のことですから、離婚話など別に珍しくはありません。とはいえ、まさか高価な文学全集を購入してくれた大切な顧客である女性教師からこんな話が出るとは思ってもみませんでした。


彼女は私に「二重のよろこび」を与えてくれた


憶測かもしれませんが、上でも書いたように、多分彼女はさびしい胸の内を、職場以外の男性の誰かに聴いてほしかったのかもしれません。


それにさらに深堀して考えると、新しい交際相手を探していて、私をタ-ゲットにして自分を売り込むための作戦だったのかもしれません。


驚きはそれだけではありません。文学全集を購入して私に営業の成果を与えてくれただけでも有難いことなのに、その後、離婚話を聴いて調子に乗った私は勇気を出してデートの誘いを持ち掛けたなのですが、なんと彼女はそれにも応じてくれたのです。


まさに二重の喜びで、これほどラッキーなことは長い人生でもあまりないことです。


デートの日、女教師の激しい性行動に衝撃を受けた


その日大阪梅田で食事をした後、私たちはまるで申し合わせていたように自然な形でホテルへ向かいました。今でもはっきり覚えていますが、扇町プールの近くにあったビジネスホテルです。


ホテルで彼女は自分の職場の教師たちの醜聞(スキャンダル)についていろいろはなしてくれました。


その内容は、「50代の教頭先生は新人女性教師の〇〇と不倫している」とか、「同期の男性教師〇〇は独身をいいことに相手をとっかえひっかえ女性教師たちとみだらな交際を続けている」などいうもので、それは学校教師としてあってはならないような男女の乱れた関係についての内容で、聴いた私が「まさか!」と思うほどの話でした。


その後のベッドでの彼女は、「これが教師という女性の姿か」と思わすほどの、大きな喘ぎ声と大胆な体位を伴う激しい性行動には度肝を抜かれる思いでした。 


離婚してしばらくの伴侶のいない寂しい生活が彼女を一気に奔放な女へ変身させたに違いありません。私にとっても夢のようなひとときでした。


彼女との出来事は職場の同僚ははもちろん、その他の誰にも話していない


一人の女性と付き合い始めたら、たいていは一定期間交際が続く私ですが、なぜか彼女とはこの一度だけのデートで終わりました。


理由はよく覚えていないのですが、たぶんちょっとした倫理観がそうさせたのではないでしょうか。つまり仕事上で知り合った女性(しかも学校の教師)という立場の人と、こうした関係を続けるのは良くない、と感じたからかもしれません。


それが証拠に、えてして男性は過去の女性との付き合いの話しを、同僚などに自慢したくなるものですが、彼女との付き合いに関しては、誰にも話したことはありません。


たぶん「教師としての彼女のプライバシーは守らなければならない」と固く心に誓っていたからかもしれません。


あの日以来彼女には逢っていないが、再婚して幸せに暮らしているだろうか


彼女は私にとって忘れられない良い思い出を残してくれた女性です。かねてより私は「こんな女性と関係を持ってみたい」と、願望を抱く分野がありました。六つありましたが、その一つが「女性教師」だったのです。


ちなみにその六つを上げてみますと


・素人の外国人女性(欧米系)

・トラックドライバー

・看護師

・学校教師

・社長の奥さん

・政治家


どうでもいいことかもしれませんが、目下のところ、トラックドライバーと政治家の2分野については願望が果たせていません。


学校の女教師との付き合いも、一時は「手の届かぬ願い」と思って、半ばあきらめていたのですが、彼女の出現で思いがけず実現できたのです。その意味でも彼女には深く感謝しています。


今頃になってこんなことを云うのもおかしいのですが、どうか、その後良い人と巡り会って再婚を果たし、幸せな人生を送っていることを心より願っています。


おわり




2026年8月13日木曜日

T.Ohhira エンタメワ--ルド〈7〉進次と和子の青春グラフィティ(5)

     

                     adobe stock

    5

 それからベンチへ近づく十数歩の間に、二人の手は次第に強く握り合わされていった。

 横一列に三つ並んだベンチのうち、いちばん左に腰掛けた二人は、今度は何も言わずに手を握り合わせたまま、暗闇の中で探るように互いの目を見つめあった。 

 進次の胸がまた高鳴って、そのうち次第に息苦しいほどになってきて、もうこれ以上我慢できないと、左手で女のうなじに軽く触れながら、耳元で「キスしていい?」と、そっと囁いた。女は何も答えず目をそらして下を向いた。  

 

進次は女より頭を低くして下のほうからそっと女の唇に口をつけた。ブルッと両肩が震え、体中に戦慄が走った。身体を硬くして、わなわなと震えている女の様子が伝わってきた。 


 決して進次の唇を避けようとはしなかったが、口元はキッと閉じられたままで、その先への侵入は許さなかった。でも進次の背中に回した手には幾分か力が込められてきて、決してその行為を嫌がっていないことがはっきりわかった。

ただ慣れていないだけで、唇を開かないのはそのせいだと思った。

ぎこちないキス、まさにそれそのものであったが、進次には甘美この上なく、頭の芯がぼぉーとかすむような、まるで天にも昇るような心地よい気分であった。


 五分、いや十分ぐらいも二人は抱き合って唇をくっつけていただろうか。姿勢がやや窮屈になり、どちらからともなく身体を離した。でも手と手はまだ握り合ったままであった。


 今いったい何時だろう? 進次はふとそう思い、街頭の薄明かりの中で腕の時計を見た。暗くてよく見えなかったが、長い針は十五の少し手前にあるようで、二時を少し回った時間であることがかろうじて分かった。

 「わー、もう二時を過ぎてる。どうしよう、こんなに遅くては姉の家にもいけないし」

 握った女の手をやっと離し、進次が独り言のように呟いた。もともと姉の家には行く気はなかったのだが、電車の中で女に伝えたことをふと思い出し、辻褄あわせのために言っただけで、本当は女の同情を引きたいだけだった。


 「お姉さんの家に行かないって、それじゃあどこかに泊るんですか? 大阪までタクシーで帰るわけにはいかないでしょうし」 長いキスの後で、しばし放心したような表情を見せていた女だったが、恥じらいを含んだ小さな声で、そう聞き返してきた。

 どこかへ泊る? そうなんだ。でも1人じゃいやだから、できたら君と一緒に泊りたいんだ。返す言葉でそんな風に一気に言えたらなんと良いことだろう。でもそんなこと、まだ言えやしない。会ってまだ三時間しかたっていないというのに。いや、でも待てよ。彼女はこんなに遅くまでぼくに付き合ってくれて、おまけにさっきのキスは少しも拒みもせずに十分間も許してくれた。ひょっとして、彼女としてもこのままずっと一緒にいたいのかもしれない。


そうだ、きっとそうに違いない。その証拠に駅の待合室で誘いに応じたときは「少しだけなら」と言っていたはずなのに、二時間以上たった今でさえ、自分のほうからは少しも「帰る」などとは言わないではないか。だったらこのまま別れてしまう手はない。男だったら勇気を出して「一緒にどこかへ泊ってください」と言うべきだ。そうだ、そうしよう。


 そう思った進次は思い切り勇気を振り絞って女に言った。

 「ねえ、ぼくこのままあなたと別れたくないし、それに1人だけでどこかに泊るのもわびしいし、変なこと絶対にしませんから明日の朝までどこかで一緒に過ごしてくれませんか」

 それだけ言うにも、興奮したせいか額に汗がにじむほどで身体も熱くなってきた。


 進次のその突飛な申し出に、女は少したじろいた様子であったが、「でもわたし」と言っただけで、そのままうつむいて、その後何も言わなかった。

 「一緒にいてくれるだけでいいんです。何かしたりは決してしませんから」 

 女に不安を抱かせないようにと、さらにそう付け加えた。

 「でもわたし、外泊なんかしたことありませんし、それに着替えだって駅のロッカーの中だし」 着替えと聞いて、進次の身体がまたブルッと震えた。着替えということは服を脱ぐことだ。すると女の裸が脳裏をなまめかしい想像が駆け巡った。

でも必死にそれを振り払ってから、また言った。

 「着替えって、朝まで数時間一緒に過ごすだけだし、そんなのいりませんよ。そのままいればいいんだし、それに下宿の人には、今日帰るって言っていないんでしょう?」

 ラーメン屋で女が言ってたことを思い出して、今度はそんなことも付け加えて言ってみた。

 女はまた黙って下を向いた。進次も次のセリフが見つからず、言葉の代わりに女の肩をそっと抱き寄せて、またキスをした。でもさっきと違って今度はすぐ離した。 

「ねえ、いいでしょう。一緒にいるだけだから」


つづく

次回8月19日(木)




2026年8月7日金曜日

ブログ「生涯現役!!日記」 掲載 T.Ohhira エンタメワールド


小説ごとのPV数を公開します

下の表とグラフはブログ「生涯現役!!日記」へ掲載中の「T.Ohhira エンタメワールド」の記録です。表の方は各々の小説のPV数と掲載期間です。数字の集計は今回が初めてなので、ここには1回目のデータだけしか表示していません。グラフも同様です。これで見ると「マンハッタン西97丁目」とその他の作品の数字に大きな開きがありますが、掲載期間にあるように、この作品のみ2014年スタートで、その他は10年以上後の2025年掲載開始であるためです。なお、表の後ろ2作品については、掲載中と未掲載であるため、今回は数字が入っていません。今後順次発表していく予定です。


                        (No.1) 2026/8/07現在

小説タイトル

PV数

連載(掲載)期間

マンハッタン西97丁目

349714/5/28~9/21

噂 台風 そして青空

 82225/4/17~
7/10

ナイトボーイの愉楽

 61825/7/17~
10/09

直線コースは長かった

 52625/10/23~
01/08

清水さんの失敗(ナイトボーイの愉楽part 2)

 45726/01/30~
4/16

紳士と編集長

 22726/4/30~
7/02

進次と和子の青春グラフィティ


掲載中

編む女


‘26/11月~掲載予定

Total6197




2026年8月6日木曜日

T.Ohhira エンタメワールド〈7〉進次と和子の青春グラフィティ(4)

 

                     adobe stock

               

         4                                                                   進次が女にそう聞いている最中に後ろ向きに立ってラーメンの支度をしていた主人が不意に振り向いてジロリとこちに視線を向けたので、別に悪いことを話しているわけでもないのに、それからは声のトーンを少し落として話したりした。

 「学生といってもデザインの専門学校です。服飾関係の」 女はなぜだか少し恐縮したような声で答えた。

 「へえー、デザインの学校。じゃあぼくと同じじゃないですか。電車の中で言ったでしょう。今は英語の専門学校へ行ってるって、ジャンルは違うけど二人とも専門学校の学生で。

それに歳は二つ違いでちょうどいいし。ねえ、ぼくたちはなんとなく合いそうですね。そう思いませんか」 

進次は女の目を見ながら精一杯の笑顔を作ってそう言い、相手の反応を待った。


女が笑顔を浮かべて何か答えようとしたとき、「はいお待たせ、味噌とワカメ」主人が両手に持った二つのどんぶりをカウンターの上に置いた。

そのせいで、女は次のセリフを飲み込んでしまったようだが、表情からして決して悪いものではなかっただろうと進次は確信していた。 例えばそのセリフは 「そうかもしれないわ」とか「だといいのですけで」というふうなものであったと。


 けっきょく二人はその店に四十分ぐらいも長居した。その間、誰一人として客は入ってこず、主人は退屈そうに何度もアクビを繰り返していた。

 ラーメンを食べ終わって、オレンジジューズを注文して、専門学校の学生同士ということが分かってか、二人は急速に意気投合していき、電車で出会ってからその店に入るまでに比べると、数倍も多くの会話を交わしていた。


 時計が一時十五分を指したとき、主人が外へ出て暖簾を下ろし始めた。それを見て二人はやっと立ち上がった。

「わたしも払います」という女を制して、進次の方が千四百円払って二人は店を出た。


外は前より一層人影がまばらになっており、少し風が出てきたようだったが、今しがたの温かいラーメンのおかげで寒さは微塵も感じず、頬に当たる風がむしろ心地よいくらいであった。


 「ねえ、温まったことだし、ちょっと港のほうへ行ってみませんか」

 次第に人影のなくなる街の様子からして、この先いくら探しても開いている喫茶店などないだろうと、その代りになるものとして、ふいに頭に浮かんできたことを、とっさに女に伝えたのだった。

 「歩いてですか?」 ラーメン屋へ入る前より、うんとハッキリした口調で女が聞いた。

 「はい。いやタクシーで」

ほんとうは三十分ぐらいかけて徒歩で行き、その間に女の手でも握って歩きたかったのだが、聞かれてとっさにそう返事してしまった。

 「ラーメンのおかげでもう寒くなくなったことだし、行ってみましょう」

 女は今度は躊躇することなく答え、話は案外すんなりと決まった。


 来た道を戻って交差点を曲がって港のほうへ通じる大通りへ出て、それほど多くない車の流れに向かって進次は手を上げた。ものの一分と立たないうちに中型のタクシーが二人の前にピタリと止まった。

「すいません港まで」 「港?港って神戸港のこと?」運転手が少し怪訝そうな声で聞いた。

「ええ、海だったらどこでもいいのですけど、とりあえず神戸港へお願いしなす」

進次は頭にチラッと須磨辺りの海岸を思い浮かべながら、そんあふうに運転手に告げた。

「この時間に神戸港にねえ」運転手はさも物好きな連中か、とでも言いたげに、少し皮肉を込めた返事をした後、おもむろに車をスタートさせた。

 車は信号にも引っかからずにスイスイと夜の街を走っていき、五分もたたず港に着いた。

 

  早くその運転手と別れたいと思っていたせいか、降りるとき、進次は値段も聞きもせず「これでお釣はいいですから」と、千円札を渡したが、ちょっともったいない気もして頭の中では、さっきのラーメン屋と併せてこれで二千四百円の出費だと、きっちり足し算をしていた。


 降りた場所から少し歩いて、二人は人っ子一人いない暗い港に立った。

 さすがに先ほどまでいた街中に比べると頬に当たる風は幾分冷たかったが寒いと言うほどのものでもなかった。

 前方の岸壁にフェリーだろうか二隻の船が暗い海をバックにぼおーっと霞んで見えていた。

「わー、なんだか霧が出てきたみたいだ」

「本当だわ。あの船かすんで見えるし、温かいですもの。でも冬の霧って珍しいわ」

女は感慨を込めるように言った。

 「暖かい冬の夜の人気のない港。霧に霞んだフェリー、何かロマンチックですねえ」

 本当は霧に霞んだフェリーの後に「そして暗い港に佇む、あなたとぼくの二人」と入れたかったのだが、それではあまりにもキザ過ぎると、進次はかろうじてそれだけ言った。

 その言葉に女は振り向いたが、今度は何も言わなかった。


 「あそこにベンチがある。行って座りましょうか」斜め前方のその位置を指しながら、進次は思い切って女の手を取った。

女は一瞬その手を内側のほうへ少し引いたが、すぐまたもとの位置に戻して、今度はそっと進次の手の平にふれてきた。


つづく

次回 8月13日(木)


2026年8月2日日曜日

「生涯現役!!日記」をまだご存じない方々へ・生涯現役!!日記 は「おもしろくてためになる」ブログですよ

 


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