これほど取材が行き届いた本は滅多にない
高齢化社会が急ピッチで進んでいる今、高齢者問題を扱った書物が多く出回っています。
それもそうかもしれません。何しろ今では65歳以上の人が人口の25%の3000万人以上もいるわけですから、これを扱う本の数が多いのも当然のことと考えられるからです。
こうした高齢者に関する書物の中で、最近特に目立つのは、恵まれない高齢者をテーマとしたものです。
今回ご紹介する本も、タイトルでお分かりのように、そうしたカテゴリーに入る一冊です。
この本のタイトルは「難民化する老人たち」となっていますが、難民と言っても国を追われて、国外を放浪する人々を指すのではなく
恵まれない境遇にいるため、より良い行き場が見つからない高齢者たち、のことを言っています。
つまり、この本は
・住む場所がない
・年金が足りない
・頼る人がいない
・パラサイトの子供がいる
・介護施設が足りない
・住宅ローンがおわらない
など、抱えている問題が多すぎて、高齢になっても理想とする安住にはほど遠い状態に置かれ、日々苦悩と苦闘に明け暮れる高齢者をテーマにしたルポルタージュなのです。
著者の林美保子氏は、自身がDV家庭に育ったことや、母親のための施設探しをしたこともあって、高齢者施設も含めて、福祉問題に精通しています
。
それだけでなく、取材精神旺盛で、上に挙げたようなあらゆる高齢者問題に対して体当たりで取材を試みています。
その結果、読者のかゆいとこまで手が届くような、細かな情報まで提供してくれます。
いま高齢者問題を取り扱った本が多い中、この本ほど確かな指針となる本は多くはないことは確かです。
まさに高齢化社会における、恵まれない老人を扱ったバイブル的な本と言っても決して過言ではないお勧めの一冊です。
この本の目次
1.年金が足りない~底をつく老後資金~
2.自分の時間がない~ケアメンはつらいよ~
3.仕事がない~フリーランスの末路~
4.頼れる人がいない~孤立死の後始末~
5.子どもが自立しない~増える年金パラサイト~
6.住む家がない~ハウジングプアの悲惨~
7.介護施設が足りない~施設不足によって生まれたグレーゾーン~
8.お金が戻ってこない~狙われる老後資金~
9.ローンが終わらない~住み慣れた我が家は砂上の楼閣
10.難民化する老人たち
著者について
林美保子(はやしみほこ)
1955年北海道出身。
1955年北海道出身。
青山学院大学法学部卒。弁護士秘書、OL、編集プロダクション勤務を経て、フリーライターに。
2004年、より社会的な分野にシフトするために一旦仕事を整理。精神保健ボランティアグループ代表や人権擁護委員を務めながら、ライフワークであるDV家庭に育った体験をもとにした作品づくりに取り組む。2012年、フリーライターに復帰
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