まとめ記事は誰が書いているのか?
ここ数年の間にまとめサイトと呼ばれるウェブサイトが飛ぶ鳥落とすようなすごい勢いで増えてきました。
増えた理由はいろいろあるでしょうが、その最たるものはトレンディーな情報が
コンパクトにまとめられていて使い勝手が良いことではないでしょうか。
それゆえに読者はスピーディー、かつ効率よく価値ある?最新情報を手にすることができるのです。
まとめサイトを一言で言えば「ジャンル別情報早わかり記事集」ということができます。
ではサイト運営者はこうした記事をどこから、どのようにして調達しているのでしょううか。
何しろ毎日の更新に充てる量は半端ではないだけに自社ライターだけで執筆するには無理があることは明らかです。
ではどうしているかといえば、最近ネット業界で活躍が目立ってきたクラウドソーシング系の記事作成代行会社に記事の制作を依頼しているのです。
こうした依頼を受けた会社は早速ネットを通じて記事執筆のライター募集にかかります。
信じられないほど安いライターの報酬
ここまでは良いのですが、問題はその募集条件である執筆料(原稿料)の価格です。
おそらくこれを聞けば原稿料に対して何の知識もない人でさえ驚くのではないでしょうか。
なぜならその額は1文字が0.3円程度のものが多く、1000文字書いても300円にしかならないような低さなのです。
1000文字で300円、これがいかに安いかを知るには、1000文字の原稿を書くのにどれくらい時間がかかるかを知ればすぐわかります。
その時間とは30分ぐらいでしょうか。それとも1時間、あるいはそれ以上?
仮に30分とすると、時間給換算で600円、1時間なら300円となります。
所要時間はタイピングスピードや知識量によって個人差が大きいと思われますので、仮に平均をとって45分にしてみますと、時間給は450円になります。
なんとこれは東京都の最低賃金の半分です。
そうなのです。今をときめくネットビジネスのまとめ記事を書くライターの時間給がわずか450円でしかないのです。これでは、まるでブラック企業顔負けの低賃金ではありませんか。
いま評判のまとめサイトの記事はこれほど低賃金によって生み出されているのです。
この執筆料の安さこそが、記事の品質(クオリティー)に大きく関わってくるのです。
いかにライターの仕事が在宅でできて経費が掛からないとはいえ、少なくとも記事の執筆といえば知的でクリエイティブな仕事です。
書き手にはプライドもあって、できることなら仕事にふさわしいリーズナブルな報酬を期待します。
書き手にはプライドもあって、できることなら仕事にふさわしいリーズナブルな報酬を期待します。
それ故に、たとえ理由あって安いことを承知で仕事を受けたとしても、これほど低い料金では執筆に対するモチベーションが上がりません。
かくしてオリジナル性の乏しいコピペまがいのクオリティーの伴わないリライト記事の粗製乱造となるのです。
おそらく今ネット上に氾濫しているまとめサイトの記事の圧倒的多数がこの種のものではないでしょうか。
つまり、記事作成のプロセスは、まず書籍やネットで関連記事を探してテーマに近いものを選び、それを土台にして文章の順番を替えたり、書き出しや文末の文章の一部を書き換えただけのリライト記事なのです。
これだと記事のネタ選びや文章制作ににそれほど頭を使わなくてもすみますから、たとえ1時間450円程度の低賃金でも「まあいいか」と、妥協するライターも少なくないのです。
一般的に、ライターといえばオリジナル記事を書く人のことを言います。とすれば時間給450円程度で記事を書く人はライターとは呼べません。
そうなのです。これまでのまとめサイトの記事の多くは、ライターと呼べない人たちの手によって書かれたものなのです。
今回のDeNAの問題もそれゆえに起こったことなのです。
要するにライターと呼べない未熟な書き手によって、安かろう悪かろうの大量の記事がまとめサイトに掲載された結果起ったことなのです。
ネットはエセライターをつくりすぎた
そもそも、ものを書くということは知的でクリエーティブなことで、誰でもできることではなく、文才という言葉があるように、ある種の才能を必要とします。
ところがインターネットの出現で膨大な数のウェブサイトが現れ、各々が自分のサイトを埋めるため大量のコンテンツが必要になり、そのためそれを作成するライターを求めるようになったのです。
とはいえ、才能ある優秀なライターには数に限りがあり、いつでもすぐに調達することは困難です,
でもサイトの方はアクセスを上げようと思えば待ったなしでコンテンツを増やしたり、古い記事は新しく更新しなければいけません。
それゆえにサイト運営者は無理をするのです。つまり、記事を増やしたり更新したいがために、クオリティを犠牲にしてしまうのです。
かくして登場するのが時間給450円の格安ライターなのです。
DeNAの問題が起こったのは、そうしたライターによるよって作られた記事の低品質が露呈したのです。
かくしてオリジナリティのないリライト記事が蔓延した
DeNAに限らず、ネット上の多くにライター募集広告を見ていると、驚くほど低報酬のものがよく目に入ります。
前述のような時間給450円はおろか、200~300円程度のものさえそれほど珍しくはないのです。
こうした超低賃金を目の当たりにして思うのは、「いったいこの募集者は、これほど安い賃金で、どれほどの記事を期待しているのだろう」ということです。
またそれ以前に、「いったいモノを書く仕事が、どんなことであるのか理解しているのだろうか?」とも感じます。
これほど安い報酬で募集をかけるのは、おそらく、モノを書くことがそれほど難しいことではない、と考えているのに違いありません。
また、今の世の中にライター志願者は多く、いかに報酬が安くても飛びついてくる人はいくらでもいる、と思っているのです。
でもこうした考えはいずれも間違っています。
まず、モノを書くことは難しいことではない、という考えですが、おそらくこの募集者は自分自身がモノを書く経験があまりない人ではないでしょうか。もし書くとしても、オリジナリティの乏しいコピペまがいのリライト記事程度なのだと思われます。
リライト記事の場合はテーマも中身の文章も自分で生み出す必要はなく、既に存在するものを、文脈を入れ替えたり、文頭や文末を少し書き換えるだけのものです。
したがって困難な生みの苦労を伴いませんから、比較的楽にできるのです。それゆえに、モノを書くのは難しいことではない、というような大きな勘違いをしてしまうのです。
雑誌系ライターウェブライターの報酬の格差を縮めないといけない
これまで述べてきたように、まとめ記事サイトなどのウェブサイトの記事の執筆を担当するライターの報酬が異常に安いのは、ネット上のコンテンツにリライトという概念が幅を利かせすようになったからです。
少なくともインターネットのウェブサイトが登場する前まではライターといえば、主に活字媒体である雑誌等が活躍の場でした。
この場合、ライターとしての報酬は、いわゆる物書きとして標準的なもので、ウェブライターのように人に言うのが恥ずかしいような額ではありませんでした。
それゆえにライターと聞けば、人々から尊敬のまなざしで見られたものです。
でも、今から思えば、それが当たり前のことであり、職業的にもそう見られるのがふさわしいのです。
ところが、インターネットの発達とともに、大量のウェブサイトが出現し、ライターの地位はどんどん下がっていき、前述のように今では時間給換算で450円という、人にも言えないような低賃金がさほど珍しくなくなっているのです。
それをよく表しているのは、昨今になって、いわゆる「自称ライター」がゴマンと誕生していることです。
こうした人たちがウェブサイトに劣悪なコンテンツをばらまいているのです。
これはライターという職業を貶めているだけでなく、ウェブサイトそのものの価値をも下げ、強いてはウェブサイトから人々を遠ざけてしまうことにつながるのです。
こうした悪い状況から脱するためには、まずコピペまがいのお粗末なリライト記事しか書けないようなライターを一掃することです。
ではどのようにして一掃するかといえば、ますウェブサイトからリライトという概念を捨ててしまうことです。そしてライター募集に際しては、何が何でもオリジナリティとクオリティを優先して、審査をできるだけ厳しくするのです。
そして厳しい審査を通過したものだけを採用し、それに雑誌ライター並みの報酬を支払うのです。
そうするとライターはプライドを取り戻し、モチベーションが上がりますから生産性も向上します。
それだけでなく、これまで劣悪なウェブライターによってとことんまで落とされたライターの地位を、元のような正常な姿へと戻すことができるのです。
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