大事なタイトルだが小説は例外かもしれない
「本はタイトルで売る」というキャッチフレーズがあるように、確かにハウツー本やノンフィクションはタイトルが大事で、これの良し悪しが売り上げに直結することも珍しくない。
しかし小説もそうなのかといえば、必ずしもそうはいえない。なぜなら小説はストリーが重視され評価されることが多いからである。
つまりストーリーが面白いかどうかが売り上げを伸ばす大きな要因になるのだ。それゆえにタイトルにはそれほどこだわらなくていいのかもしれない。
それをあらわす良い例が文豪夏目漱石だが、彼は作品のタイトルにはいたって無頓着だったということだ。
漱石はタイトルをこうして付けた
明治4「年(1912年)の元日から朝日新聞に掲載された『彼岸過迄』の初回に、漱石はこう記している。
『「彼岸過迄」といふのは元日から始めて、彼岸過迄書く豫定だから單にそう名づけた迄に過ぎない實は空しい標題である』。
これは驚きである。名作が多い漱石が、こんなにイージーな方法でタイトルをつけたとは信じ難いことである。
もしこれが事実だとすると、書き終わるのがお盆近くだったら、タイトルは「お盆過ぎまで」で、年末なら「正月前まで」というふうになっていた可能性もある。
漱石の本はシンプルなタイトルなのに多くがベストセラー
上の「彼岸過迄」に見るように、漱石の作品は全般的にタイトルはいたってシンプルだ。
「吾輩は猫である」のほかは、どれも次数が少ない誰にでもつけられるような単純なものが多い。
にもかかわらず作品のことごとくがベストセラーになっている。
これでわかるように、こと小説に限っては必ずしもタイトルを重視しなくてもいいのかもしれない。
(夏目漱石主要作品売上一覧)
「こころ」 626万部
「坊っちゃん」 394万部
「三四郎」 282万部
「それから」 225万部
「草枕」 217万部
「門」 161万部
「道草」 95万部
「彼岸過迄」 不明
(参考文献)
「ただしい編集」 和田文夫、大西美穂共著 英治出版
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