【Ⅴ】合格者発表までに次の応募作品を用意する
1回の募集につき1000件以上の応募があり、その中で入賞するのは僅か数件でしかない、ということを知れば、どんな応募者でも1回の応募だけで栄誉がつかめるという虫の良いことは考えてはいないはずで、たいていは数回の応募を覚悟しているのではないでしょうか。
でもそうした覚悟だけでは不十分なのです。なぜなら覚悟だけでは実行が伴わない心配があるからです。
それがなぜかといいますと、たとえ「予選を突破するまで強い決意で望むぞ」と覚悟を決めていても、何ヶ月もかけて苦労して完成させた作品があえなく予選で落選したときのショックは非常に大きいと予想されるからです。
一般的に小説新人賞の予選通過作品の発表は締め切りから半年後ぐらいに応募雑誌誌上で行われます。
つまり半年後ぐらいに発売される何月号かの雑誌誌上に予選通過の作品名、作家名などが掲載されるのです。
発表の日は応募者は朝早くから緊張して落ち着きません。本屋の開店時間になると店へと急ぎ、店頭に並んだ雑誌の発表ページを食い入るように眺めて自分の名前を探します。まるで難関大学の合格発表さながらです。
なにしろ名前が乗るのは10分の1の確率の狭き門です。首尾よく名前が見つかれば万々歳です。しかし90%の人は落選の憂き目を見るのです。目を皿のようにして眺めるのですが、lいくら探しても自分の名前も作品名も載っていないとしたら、このときの落胆は並大抵のものではありません。
応募と言ってもハガキでのクイズの応募とはわけが違います。数ヶ月の月日を苦闘しながら書き上げた400字詰め原稿用紙300枚にも及ぶ作品もあるのです。それに対してなんの応答もないまま無残に捨て去られてしまうのです。
これをショックと言わずに他になんとえで言えるでしょうか。そうなのです。このショックがあまりにも大きいが故に、次の応募への意欲を失ってしまう恐れがあるのです。
前述した「連続応募に対しては気持ち上の覚悟だけでは不十分」というのはこういう理由があるからなのです。
これに対する対策がこの項のタイトルの「合格者発表までに次の応募作品を用意する」ことなのです。
【Ⅵ】審査員と審査のプロセスを熟知する
「彼を知り己を知れば百戦危うからず」は、有名な孫子の兵法の一節です。これは自分のことはもちろん、相手のことをよく知っておけば、戦いで敗れることはないと言っているのです。
「彼を知れば」は応募作品の審査員のことを指します。そして己を知ればは、自分とその作品を知ることです。
要するに相手のことをよく知り、さらに自分のこともよく知っておれば、どんな戦いでも勝利することができる、と言っているのです。
これにつづく第二節は、「彼を知らず己を知らざれば戦うごとに必ず危うし」とあり、前節の重要性を強調しています。
要するに戦いに勝つためには自分のことはもちろん、相手のことを熟知することが必要である、と説いているのです。
ここでは「百戦」というのを小説新人賞応募に例えてみます。「彼を知り」の彼は小説新人賞の審査員ということになります。要するの応募者は審査員のことをよく知らなければいけないのです。
それにはどういう作家が審査員になっているかだけでなく、予備審査はどのような審査員によって、どのような手順で行われるかということを詳しく知ることです。
・最初に審査するのは誰なのか
メジャーな小説新人賞は、たいてい2段階審査になっていて、予備審査は編集者や下読みさんと呼ばれる審査員の手で行われ、その審査を通過した作品だけが本審査にまわり、ここで初めて審査員である作家の目が通されるのです。
したがって大事なのが予選通過のために第一段階の審査なのです。これに当たるのは編集者や下読みさんと呼ばれる審査員ですが、編集者はともかく、下読みさんとは一体どのような人たちなのでしょうか。
下読みさんは出版社と関係があるアマチュア作家やまだ世に名が出ていない小説家予備軍などで構成される小説新人賞のためだけに雇われた臨時の審査員です。
とはいえ、長年修業を積み重ねてきて文章のプロ集団です。こうした審査の目が確かな人たちが厳しい目で予備審査の臨むのです。
まずこの点をじゅうぶん承知しておいてください。これに関してはインターネットに
「下読みの鉄人」https://www.ne.jp/asahi/sky/shitayomi/old/index.html
というサイトがありますから、それを閲覧するなどして、調べておくと良いでしょう。
・審査員の作家が目を通すのは最終候補作品だけ
「下読みの鉄人」を読めば、小説新人賞のプロセスがよく分かります。そのプロセスの中でも、特によく理解しておきたいことがあります。それは、審査員の作家が目を通すのは下読みさんの審査で予備審査を通過した作品だけという点です。
応募者の中には小説新人賞の応募作品はすべて作家の審査員が目を通す、と思っている方がいるかも知れません。でもそれは間違いで、作家が目を通すのは下読みさんによる予備審査を通った作品だけなのです。
この作品こそが新人賞候補作品になり、作家の目に触れるのです。応募された全作品から第一段階の予選を通過作品に絞られ、最終審査に回る10編前後の作品です。仮にその数が10編として、応募作品数を1000件とすれば、わずか1%という厳しい比率なのです。
【Ⅶ】予選通過率が10%程度であることをよく認識しておく
別項にも書いたように、メジャーな小説新人賞の審査は、まず下読みさんによる第一次、第2次審査、その後に作家などの審査員による最終審査の3段階に分かれているのが普通です。
これを理解した上で、次に是非とも心しておきたい大切なことは、10%前後という第一次予選の通過率です。
つまり応募された作品のうち、予選を通過するのは10作品中1作品でしかなく、この段階で応募作品の90%がふるい落とされることです。なぜこれを知ることが重要といえば
第一には、予選通過率10%という厳しい数字を認識することで気を引き締めて応募に当たることができる。
第二は、厳しい挑戦であり、たとえ1回目が失敗しても、2回目以降の挑戦のために心の準備ができる。
・予選通過10%はどんな作品なのか
メジャーな小説新人賞では、予備審査とも呼ばれれる第一次予選を通過する作品は応募総数に対して約10%程度です。つまり応募点数が1000件とすると100件ということになります。
これで分かる通り、メジャーな小説新人賞と第一次の予選の段階でもこれほど厳しいのです。
では、これほど厳しい第一次予選を通過するのは、いったいどのような水準(レベル)に達した作品なのでしょうか。これについては、審査にあたったある下読みさんによれば、
「第一次予選を通過するのは、小説として構成がしっかりしており、文章も一定の水準に達していて、なおかつ面白さという点で読者を引きつける要素ががある」と述べています。
これでわかるように、第一次予選と通過した作品は、小説として体をなした読むに足る作品ということになります。
終わり
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