【Ⅰ】なにがなんでも魅力ある面白い作品を書くことを決意する
・誰もが興味を抱くような魅力あるテーマを選ぶ
小説にはジャンルがあり、大きく分けて一方に純文学系、他方に大衆文学系がありますが、今回の「新人賞突破シリーズ」はターゲットを後者の大衆文学系に当てています。
大衆文学の目的はなんと言っても読者を楽しませることにあります。したがって最も大事なのは面白い作品でなければいけません。
面白い作品を書くためには良いテーマが必要です。俗に「誰にでも小説一作は書ける」と言われますが誰にでもあるような平凡な体験がテーマだと読者にとっては退屈なものに終わってしまい、決して満足してもらえるような面白い作品は書けません。
読者を「面白い!」と満足させるためには何が何でも誰もがハッとしたり、「うーん」とうめき声を出すようなユニークかつ話題性のあるテーマの設定が不可欠です。
・出だし(書き出し)で引きつけないと審査員は先を読んでくれない
ひょっとして応募した作品は審査員の作家が初めから終わりまですべて読む、と思ってはいないでしょうか。もしそうなら大きな間違いです。
考えてもみてください。一般にメジャーと呼ばれる小説新人賞には1回の募集につき1000件余の応募があるのです。これを「1000件か」と軽く考えないでください。
なにしろ応募されるのは小説ですからその原稿の量たるや大変なものです。仮に1編の平均が400字詰原稿用紙換算で100枚~150枚としましょう。すると応募総数1000件だと合計で10万枚、150枚だと15万枚にもなるのです。
では文字数がどうかと言えば、総文字数は実に4千万文字~6千万文字にまでなるのです。これは単に量的な多さだけを言っているのではありません。この大量の応募原稿を読んで審査しなければいけない審査員の大変さを言わんとしているのです。
審査員はまず出だしの2~3ページだけをチェックする
ここでこの項のいちばん最初の見出しを見てください「出だしで引きつけないと審査員は先を読んでくれない」と書いているはずです。
そうなのです。応募された膨大な量の原稿を、審査員がはじめから終わりまですべて目を通すのは到底不可能です。ではどうするのかといえば、審査員には決まった読み方があるのです。それは応募作品が予選を通過するだけの価値がある作品であるかどうかを見分けるために、まず作品の書き出しの部分(最初の2~3ページ)をチェックするのです。
この部分を読んで「この作品おもしろそう」と引きつける要素があれば、次に中程を少しと結末の部分に目を通すのです。これで分かるように、審査員がまず目を通すのは書き出しの2~3ページです。したがってここで審査員を引き付けなければ中程も結末の部分も目を通してもらえないのです。そうなればいうまでもありません。第一次審査の段階であえなく撃沈ということになるのです。
・出だし、クライマックス、結末の3箇所にに最大の注意を払おう
前項で書いたように、小説新人賞の審査員が力を入れて読むのは、主に出だしの2~3ページ、真ん中あたりのクライマックスシーン、そして終わりの結末部分、の3箇所になります。
ということは、応募者が留意すべきは、読ませる文章を書くための起承転結(注1)やPREP法(注2)などの要諦に沿った文章作りを心がけければいけません。
これらにしたがって、出だしの最初の部分で読者をぐっとひきつけ、中盤のクライマックスシーンをこの上なく盛り上げ、結末部分をを読者の胸に焼きつくような印象深いシーンで終わらせるのです。
(注1)起承転結
漢詩の四句からなる絶句における構成法の一つ。八句からなる律詩においても二句ずつまとめて絶句に準じる。第一句(起句)でうたい起こし、第二句(承句)でこれを受けて発展させ、第三句(転句)で場面や視点を転じ、第四句(結句)でこれらを受けつつ全体をしめくくる。また、文章や話などで全体を秩序正しくまとめる構成の意として用いられる。さらに広く物事の順序、展開のしかた、構想にも用いられる。 出典:goo辞書
(注2)prep法
PREP法とは「Point(結論)」、「Reason(理由)」、「Example(実例・具体例)」、「Point(結論)」の順で書く文章作成術のことです。
PREP法では最初に結論を述べ、最後にまとめとしてもう一度結論を述べる構成となっているため、話をすっと理解しやすいのが特徴です。
【Ⅱ】プロ作家に繋がりやすいメジャーな新人賞だけに応募する
・インターネットの小説サイトが加わって新人賞の数は増えたが
いったい今の世の中に小説新人賞と名がつく小説家の登竜門はどれくらいあるのでしょうか。いうまでもなく今はインターネット全盛時代です。ということは「従来からの出版社の雑誌によるものに加えてインターネットの小説サイトでもいろいろな文学賞を作っているのです。したがって単純に考えても、その数は従来に比べ2倍程度に増えているのではないでしょうか
・小説家へつながる新人賞は限られている
とはいえ、これを喜んでいてはいけません。なぜなら数が増えたからと言って決して作家への登竜門が広くなったわけではないからです。
それは数ある小説新人賞の中で小説家へつながる賞は限られていて、賞の数が増えたからといってそれに比例して増えてはいないからです。
つまり、昔も今も小説家に繋がる確かな新人賞は、わが国を代表する大手出版社の主催する3つの文学賞、すなわちオール読物新人賞(文藝春秋)、小説現代新人賞(講談社)、小説すばる新人賞(集英社)に変わりないのです。
(注)芥川賞や直木賞はどうかと考えられる読者もいると思われますが、これら2つの賞は新人が対象になるとはいえ、すでに文芸雑誌などでデビューを果たしている作家の中から選出される賞なのです。
【Ⅲ】 失敗にくじけず応募を続ける強い決意
前の章でで小説家へ繋がるメジャーな小説新人賞は1回の応募につき、たいてい1000件以上の応募がある、と書きました。
そうした多数の応募作品の中から新人賞に選ばれるのは僅か数編の作品だけでしかなく、その他の応募作品はすべて落選として葬られてしまうのです。応募者が長い間汗水たらしながら苦労して書いた1000編に及ぶ作品のほとんどが、全く日の目を見ることなく無残に捨て去られるのです。
小説新人賞とはかくも狭き門そのものの極めて厳しい世界なのです。応募者はこの現実をはっきり認識した上で心して臨まなければいけません。でなければ最初の一次予選の落選だけで落胆から戦意喪失し、あえなく戦線離脱ということにもなりかねません。
これだと早晩小説家への道は閉ざされてしまいます。そうならないためには、最初は落選するのは当たり前と考えて、失敗に懲りず「何度でも挑戦するぞ」という強い決意を固めることが大事です。
【Ⅳ】異なる新人賞に複数回応募する
メジャーな小説新人賞3つについてはすでにご理解いただいたとは思いますが、この3つは出版社が違うだけでなく、特色にも相違点があります。
それは審査員になっている作家を見てもわかります。新人賞ごとに審査員の作家は異なっており、その結果作風も3誌3様の特色を持っています。
ということは応募作品もそうした特色に沿うことが期待されます。平たくいえば、文学性、エンターテイメント性、ストリー性など重視する点が異なることがあるのです。
したがって当然のごとく審査傾向もそれに沿った方向で進むはずです。応募者はこれを察知して、新人賞ごとに特色に沿った作品を応募することが肝要です。
「前編」終わり
「後編」は8月8日(日)掲載予定
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