40代前半の頃は2日に1冊のペースで読んでいた
このシリーズ(その1)は年齢が30代後半~40代初頭の頃を対象にしましたが、今回はそれより若干後の 昭和56年~58年代(40~43歳)の読書記録をご紹介します。
この頃はどの期間にも増して、数多くの本を読んでいた時期です。それは読了日の間隔の狭さによく現れており、我ながら数の多さに感心しています。
今でこそ読む本の多くを図書館に頼っているのですが、当時は図書館は全く利用せず、すべて本屋で購入していました。
したがって本代はかなりかさんだのですが、何(誰)に感化されたのか、当時の私は本代と飲み代はケチらないことをモット-にしていました。
アフター5の飲み屋での人との交流と本から得る新しい知識は人間形成のために何にも代えがたい必要不可欠なものと考えていたからです。
とにかくよく本を読んだ時代で、数は毎月コンスタントに15冊前後に達していたのではないでしょうか。
【昭和56年(1981)~59年】40~43才
書名 | 著者 | 出版社 | 発行年月 | 価格 | 購入先 | 読了日 |
ニュービジネス新時代 | 野村総研・編 | 野村総研 | 不明 | 未記入 | 未記入 | S58/7/11 |
第4次産業とも呼ばれる分野の情報サービス産業で、現在アメリカで脚光を浴びて成長しつつある新しい産業にスポットを当て、豊富な資料をもとに分析して解説を加えている。不況脱出の兆しが見えてきた現在のアメリカでは、かつてないほどの勢いで新しい企業が誕生しているようだ。独創性にあふれ、しかも膨大な研究開発費を持っているアメリカという国はいつの時代にも世界をリードしていく国であり、高度急成長を遂げて先進国に仲間入りできた日本だが、対アメリカに限り、追いつき、追い越すことは絶対に不可能なのではないだろうか。こんなことは以前から思っていたことだが、この本を読んでさらにその思いを深くした。何から何まで、すべてアメリカを手本として成長してきた日本のこと、この本に取り上げられている新しいビジネスが登場してくるのもそう遠い比ではないだろう。 (特に参考になった点) ※W.W.ホールセールスウェアハウス(新小売形態) ※キャンプ場チェーン ※働く女性を対象としたビジネス専門雑誌、ワーキングウーマン、ヴィギなど5年程前に出版。 |
書名 | 著者 | 出版社 | 発行年月 | 価格 | 購入先 | 読了日 |
サイゴンからきた妻と娘 | 近藤紘一 | 文庫 | 1978/5月 | 未記入 | 未記入 | S58/7/13 |
読後感ズシリ、非常に読みごたえのある一冊であった。大宅壮一ノンフィクション賞はやはり伊達ではなかった。この本を書いたとき、著者はまだ40代前であったのだが、その卓越した文章力はまさに第一級品と言っていいだろう。一流の新聞記者ともなればこれほどに文章もうまいものなのか。ともすれば日本人は先進国ばかりに目を向けて、同色人種のアジアの国々にはあまり目を向けない悪い傾向があるが、著者はベトナム人で、しかも子連れの女性と結婚する。そして妻と娘を通して一生懸命に彼女たちの祖国を理解しようと努めている。しかも戦乱で明け暮れた後進国ベトナムに対して、著者は少しも高慢な態度は示さず、同じ人間として真摯な態度で彼女らのものの考え方、生き方を学ぼうとする姿勢さえ見せており、著者の高邁な人格がひしひしと感じられる非常に価値ある一冊で、人にも薦めたい本である。 |
書名 | 著者 | 出版社 | 発行年月 | 価格 | 購入先 | 読了日 |
中年族の反乱 | 田原総一朗 | 文庫 | ‘83年 | 380円 | 未記入 | S58/7/16 |
いわゆる三面記事の事件レポートである。もとTVディレクターでもある著者にとっては、おそらく最も得意なじゃんるであろう。サラ金破産者、倒産経営者、覚醒剤運び人、スワッピンググループなどなど。今の時代を反映した事件の主人公たちを追跡して、その背景を克明にリポートしている。時間つぶしの軽い読み物としてはよく出来ており、短時間で読み終えた。 |
書名 | 著者 | 出版社 | 発行年月 | 価格 | 購入先 | 読了日 |
午後のヴェランダ | 渡辺淳一 | 文庫 | 1983/5月 | 320円 | 未記入 | S56/7/18 |
エッセイは好きな読み物分野の一つであり、これまでに多くの人のかなりの数の作品を読んできたが、その中でもこの作品は間違いなく5本の指に入る名エッセイである、と言っても過言ではないだろう。自分なりのエッセイの定義ではかれば、いわゆるエッセイらしいエッセイであり、またこれこそエッセイである、とも言える。渡辺淳一は今売れっ子の旬の小説家である。でもブームに乗って売れているという感じではなく、真に実力に裏打ちされた正当な売れ方である。この人の小説は名前こそ知っているが、これまで全然読んだことがないのだが、なんとなくそういう気がする。 このエッセイのテーマは、例えば鉛筆とか消しゴムとか、日常茶飯事どこへでも転がっているいるようなモノゴトなのであるが、こんな平凡なテーマで、これだけ読者をひきつける文章をかける人はそうざらにはいないだろう。しかも全編にユーモアとウィッとが満ち溢れており、読む人の気持は和みっぱなしである。「天下一品」というのは、こういうものを言うのに違いない。 |
書名 | 著者 | 出版社 | 発行年月 | 価格 | 購入先 | 読了日 |
天下取りの商法 | 藤田 田 | KKベストセラーズ | ‘83/2 | 未記入 | 未記入 | S56/7/20 |
著者は日本マクドナルド社長。自分の名前の田を使って「デンとよんでください」というのをキャッチフレーズにするようなユニークでユーモアセンスに満ちた経営者である。かつて、この人は自分の著書の中で、「日本はアメリカの一州になる」という冗談とも本気ともつかないことを唱えていたことがあり、これもまた印象的なことの一つである。なにはともあれ、現在の日本において数少ない「本物のビジネスセンスを持ち合わせた人」であることだけは確かである。 (この本の内容で印象に残ったこと) ※商売のうまい人種・・・①華僑 ②インド人 ③ユダヤ人 ④アルメニア人 ※不景気だから商売がうまくいかないと考えるな。うまくいかないのは経営者が無能だからである |
書名 | 著者 | 出版社 | 発行年月 | 価格 | 購入先 | 読了日 |
おもしろ勉強読本 | 森 毅 | PHP | 82/11 | 未記入 | 新興書房 | S56/7/22 |
文章が難解すぎるのか、こちらの読解力が不足しているのか、とにかくわかりにくい本である。 テーマは親と子の教育論から人生論まで及んでおり、教育者の立場(著者は京大教授)で、かなり広い視野に立って論じているが、ボキャブラリー、文章ともに硬く、しかも専門的であり、どうも一般大衆には受けそうにない本である。著者の言っていることはいかにももっともらしく、なおかつ正当なのではあろうが、説得力という点においては「どうだろうか?」と首をひねる場面が多い。 この作者のこれまでの著書を眺めてみると、中公新書とか新潮選書、朝日選書と硬派のジャンルが圧倒的である。そのことを認識せずにほんのタイトルのみで選んだこちらにも手落ちがあったが、内容に反してこの本に「おもしろ勉強読本」とタイトルをつけたのは明らかにネーミングの失敗である。これに関しては版元のPHPにクレームを付けたい思いである。 |
書名 | 著者 | 出版社 | 発行年月 | 価格 | 購入先 | 読了日 |
訪販組織の内幕 グロリア社の栄光と崩壊への奇跡 | 中西 善一 | ダイヤモンド社 | 83/7 | 未記入 | 新興書房 | S56/7/25 |
衝撃的な本である。著者は無名ではあるが、ドキュメンタリーとしてまさに迫力満点の読み物であらる。日本に進出して25年、外資系訪販組織であるグロリア社の発展から転落の過程を内部から眺めてきた著者ゆえにここまで克明に描き出せたのであろう。世の中の企業にはいわゆる実業というものに対して、もう一方には虚業と呼ばれるものがあるのだが、訪販組織と呼ばれる業態には比較的これにあたるものが多いようだ。そうした中で、グロリア社などはその最たるものではなかろうか。いかに高度成長下の日本であったにせよ、このようなインチキ会社がよくもまあ25年間もの長期にわたり利益を上げて持ちこたえてきたものだと思う。それだけこれまでの消費者は無知でお人好しであったのであろうか。現在、訪販業界に従事する人たちにとっては、この本は必読の書であると思う。この会社の転落の過程をよく眺め、これをもって「他山の石」とせねばならないからである。 |
書名 | 著者 | 出版社 | 発行年月 | 価格 | 購入先 | 読了日 |
おんなの世渡り | 上坂冬子 | 文春文庫 | 83/10 | 未記入 | 未記入 | S56/7/26 |
気楽な気持ちで読み始めたには深みのあるエッセイ集である。女性評論家としてあまりにも有名な著者ではあるが、この人が高卒ということは知らなかった。巻末の解説に作家の佐藤愛子さんがこう書いている「上坂さんは確か私より8~9歳若い。したがって私は上坂さんをわが身内の妹分のような気持ちで見守っていたのだが、今回「おんなの世渡り」を読むにいたって、妹分どころかこれは到底私には及ばぬ師として仰ぐべきお方であるということがよくわかった」年上の一流作家である彼女にこうまでいわせているのである。この人の文章にはフィーリングがぴったりと合って、読んでいて心地いい。本屋でまたこの人の書いた本に出会うことがあれば、そのときは躊躇なく購入するに違いない。ファンになり、「がんばってください」と声援を送りたい。そんな気持ちにさせてくれた一冊であった。 |
書名 | 著者 | 出版社 | 発行年月 | 価格 | 購入先 | 読了日 |
自分の構造 | 加藤諦三 | 大和書房 | 81/11 | 未記入 | 未記入 | S56/7/28 |
いわゆる悪い面で自分に思い当たることが多く書かれており、読み続けていくのは辛い本である。 著者は哲学者で現役の早大教授である。これまでにも数々の本を出しているが、そのうちの大半は青年向けの人生論や精神論を綴ったもので、読者は圧倒的に10代後半から20代前半が占めているようだが、この本に限り、対象年齢は限定されないだろう。硬いイメージの哲学者の割には文章が平易でありわかりやすい。でも読者としては、自分の心の内面を容赦なく覗かれている気がして、思い当たる節がある人ほど、かえって神経質になったり、自己嫌悪に陥ったりすることがあるかもしれない。自分もその中のひとりではないだろうか。また機会がああれば、この著者の別の作品を読んでみたい。 |
書名 | 著者 | 出版社 | 発行年月 | 価格 | 購入先 | 読了日 |
夢見る頃を過ぎても | 林真理子 | 角川文庫 | 83/1 | 未記入 | 未記入 | S56/7/30 |
当代売れっ子にコピーライターらしいが、この本を読む少し前まではこの人の名前は知らなかった。なぜこの本を読むことになったのかと言うと、彼女が最近出した「花より結婚きびだんご」という本があまりにもあちこちの書評で絶賛を浴びているので、では読んでみようと本屋へ行ったのだが、肝心のその本は売り切れで、かわりにこの本を購入して読んでみた次第である。この人は大変ユニークな人のようだ。29歳の押しも押されぬキャリアウーマン。しかもとりわけ才能が物を言うコピーライターの世界で一流の仲間入りをしているのだからたいしたものである。とにかく面白い本である。何が面白いかと言えば、若い女性である著者が見栄も外聞もなく言いにくいことをズバズバ言っている点が最高で、それにコピーライターとして、持ち前の鋭利な感性で自分の周りに群がる人々を鋭く見抜いている。その観察眼にも感心する。なによりコンプレックスの強い人のようだが、そのコンプレックスを良い方向へ利用して成功できた賢いひとでもある。この人は努力というよりむしろ才能で売り出したに違いない。若い人に大変受けているそうだが、中年層にもそれ以上に受けるのではないかと思う。 |
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