2021年12月7日火曜日

あの頃はこんな本を読んでいた(シリーズ・その4)

 



月に15冊も よく読めたものだ 

このシリーズでは主に40代前半に読んだ本を取り上げているが、我が読書人生を振り返ってみても、この年代bほど数多くの本を読んだ時期は他にないだろうと思う。

読書記録の項目にある読了日の欄を見てもわかるが、日付の間隔がたいてい2~3日になっているのが多く、これだと1ヶ月にするとに10~15冊になり1年続けると120~180冊にもなるのだ。

40代の働き盛りで、仕事が忙しい頃の読書量としては決して少なくはないだろう。

それにしてもよく読めたものだ。いうまでもなく読書は時間がかかる。したがってある程度時間的余裕がある環境にいなければ多読は可能にならない。

でもこの問題についてはうなずけるところがある。この時期の仕事はフランチャイズ英語教室の代表者をしていて、昼間は事務所番をしていることが多く時間的には比較的余裕があったのだ。納得!。 



昭和56年代(40歳~)に読んだ本 


書名

著者

出版社

発行年月

価格

購入先

読了日

超管理列島ニッポン

杉本良夫

光文社

83/

未記入

未記入

S56/10/15

著者は現在オーストラリアのランバート大学教授でアメリカ在住6年、オーストラリア在住10年という超外国通の学者であるが、近年特に目立つ経済大国日本に対する礼賛論、例えばジャパン・アズ・ナンバーワンなどの本もそうだが、第三者的な立場から眺めて、そうした礼賛論を手放しで認めることは出来ないと異議を呈し、その根拠について問題を深く掘り下げて論じている。これまでの日本人論とは一味違う好著である。一見自由に見える今の日本だが、欧米と比べると、あらゆるところに管理の編みが張り巡らされており、民衆がその不自由さに気がついていないのが今の日本の姿なのではないか。著者は日本は「鵜飼型社会」であり、それに対して欧米は「鷹狩型社会」であると結んでいるのが、この本の象徴的なところである。

 

書名

著者

出版社

発行年月

価格

購入先

読了日

人望の研究 

山本七平

祥伝社

83年

未記入

未記入

S56/10/21

本のタイトルと著者のネームバリューに何より惹かれて読み始めたが、なんとも難解な1冊であった。もともとこの著者の作品は比較的学術的要素が強く、テーマにしてもかなり高尚な物が多い。

この本は東洋思想の発想を原点にしているだけに、やたらと漢文の記載が多く、それが難解さに拍車をかけている。普通なら途中で投げ出しているところだが、テーマが魅力的なだけに最後まで読み通した。著者は人望の条件として「中庸」というものを上げて、その重要性を力説しているが、今ひとつこの言葉の真意が理解できない。「中庸とは徳の至れるものなり」「喜怒哀楽いまだに発せずして、これを中庸という」「中庸とは常識なり」などなどと言っているのだが。

 

書名

著者

出版社

発行年月

価格

購入先

読了日

自動車絶望工場

鎌田 慧

講談社文庫

73年

未記入

未記入

S56/10/24

本の巻末の年表によれば、この作家はこれまでかなりの数のルポルタージュを発表しており、そのうち2点がフランスなどで翻訳出版されているぐらいだから、このジャンルでは著名な人なのであろうが、過去にこの人のものを読んだ記憶はない。この作品はいかにもルポルタージュらしいルポであり、文章に形容詞が少なく、それだけに書かれていることの真実味がより効果的に読者にアピールできていると思う。欠かれた年が1972年と、高度急成長のピーク時であり、車は各社が特に製造台数を競っていた時期であるだけに、コンベアーに追われ、非人間的な労働を強いられていたようだ。一見、華やかそうな自動車産業の内幕をえぐることをテーマとしているこの作品にとって作者は最も適した時代を選んでいると思う。読む人としては、工場のコンベアーによる作業雨が単調であることはある程度認識していても、ここに書かれているほどの凄絶さは予想もしていないだろうから、これを読んで驚きを覚える人は多いはずだ。

 

✩10月に読んだこの他の本(タイトルと作者名)

・朝は夜より賢い (邱永漢)

・1分間マネージャー (K.プランチャード他)

・自己経済学 (千尾 将)

 

書名

著者

出版社

発行年月

価格

購入先

読了日

開口閉口

開高健

新潮文庫

79/12

未記入

未記入

S59/1

エッセイ集である。食、酒、釣りなどをテーマにしたものが特に多いが、この人の文章を酒、特にワインに例えるなら、それは熟成に熟成を重ねた、まさに年代物という感じで、とこかく「こく」がある文章である。文章芸術という点では間違いなく一級品、いや特級品であるに違いない。著者自身も、自分の文章には相当気を使っているのようで、読者に対してわかり易い文章とか面白い文章を書こうとせず、ひたすら「こく」のある芸術としての文章を書くことに作家としての使命を感じているようである。それ故にこの人は一般大衆向けとは言えないが、香り高い格調のある文章の書ける数少ない一人ではないだろうか。

 

書名

著者

出版社

発行年月

価格

購入先

読了日

母と子のアメリカ

篠田有子

中公新書

84/

未記入

未記入

S59/2

2人の幼児を連れて渡米した母のアメリカ幼児教育体験記である。著者が幼児教育研究科であることもあって、米国の幼児教育界の現状がかなり克明にとらえられており、大変勉強になった。またこの著者の観察眼もたいへん鋭く、日本との比較においてかなり突っ込んだ考察がなされているのも興味深い。

 

書名

著者

出版社

発行年月

価格

購入先

読了日

ニューヨークの日本人

本田靖春

講談社文庫

84/10

未記入

未記入

S59/2

大変気軽に読めるエッセイであるが少し短い。この作品は現地で生活している日本人にスポットを当てているのだが、その日本人も比較的恵まれていない人々。例えば、日本人レストランの皿洗い、売れない芸術家などを高度急成長を支える現地の日本のビジネスエリートと対比させながら、全体的には、やや批判的な目で眺めながら書いているユニークな読み物である。

 

書名

著者

出版社

発行年月

価格

購入先

読了日

ビバメキシコ

田辺厚子

現代新書

84/

未記入

未記入

S59/2

メキシコ位在住19年という著者が、メキシコ人がいかに大雑把でいい加減な人種であるかを訴えようとしているのだが、決してそれは悪口ではなく、メキシコ人という国民性を読者になんとか理解してほしいと願ってのことだ。メキシコ人はすることなすこと、すべてが「ちゃらんぽらん」。でもそれは日本人として見た場合のことであって、メキシコ人にとってはごく当たり前のことであり、要は価値観とか考え方の相違であるだけで、良し悪しの問題ではない、と著者は結論づけている。文化の違う国どうしの理解がいかに難しいを考えさせる、意義ある本である。

 

書名

著者

出版社

発行年月

価格

購入先

読了日

妻が密かに決意する時

沖藤典子

祥伝社新書

83/12

未記入

未記入

S59/2

この著者は最近良く耳にする人である。この作品はこのところ増えてきた中高年離婚について、女野川に立ったルポルター時である。最近TVでによく取り上げられている新鮮なテーマだけに興味深く読めた。それにしても、この先女性は何処まで強くなるのだろうか。

 

✩2月に読んだその他の本 (タイトルと著者名)

・10代の娘を持つ親の本 ジェル ウェルズ (岩波新書)

・団塊の世代(小説) 堺屋太一 (文庫)

・ルポルタージュの方法 本多勝一 (文庫)

・結婚の遺伝学 田中克己 (講談社現代新書)

・次代思考の座標軸 堺屋太一  (文庫)

・見れば見るほど 加賀乙彦  (文庫)

 

書名

著者

出版社

発行年月

価格

購入先

読了日

天才・創造のパトグラフィー

福島 章

現代新書

84/

未記入

未記入

S59/3

古今東西の天才と言われた芸術家について、超一流の作品を残した彼らのその精神構造は一体どのようなものであったのか。こうしたことをその作品や生まれた背景を中心に、精神病理学的に観察したものがこの本の内容である。天才とは何かを考えたとき、そのほとんどの人達を何らかの精神病と結び付けずには考えられない。しかし、彼らを完全な精神病者と言い切ってしまうことは出来ない。それゆえ「天才ときちがいは紙一重」という言葉があるのであって、明らかに紙一重の差はあり、常人とは違うことは確かなのだ。この本には多くの天才の名が連ねてあるが、そのほとんどの人は何らかの精神障害者であったようだ。石川啄木、宮沢賢治、夏目漱石、芥川龍之介、太宰治、チャイコフスキー、モーツアルト、フロイト、カフカ、ゴッホ、etx. こうした事実を知っておくことは、今後こうした人々の作品を見たり読んだり聞いたりするときの、程よい先入観になり、作品理解のための大きな参考知識に成るのではないかと思う。

 

書名

著者

出版社

発行年月

価格

購入先

読了日

スコットランドの小さな学校

野村省吾

岩波新書

84/

未記入

未記入

S59/3

この本は先月読んだ篠田有子著「母と子のアメリカ」とテーマとしての共通点が多いだけに、つい比較になってしまいがちだが、両者とも外国の教育現場レポートで、かたやアメリカ、もう一方がスコットランドと舞台こそ違うが、その国の文明時評や社会時評など、いずれの内容を比較してもどうしても「母と子のアメリカ」に軍配を上げてしまう。だからと言ってこの本が劣っているというのでもなく、感銘を受けることも多かったが、その中で最も共鳴した部分は128ページ。

(以下、その内容の抜粋)

『社会の仕組みとか心のあり方を反映して「ことば」がきまってくるのか、逆に言葉によって社会や心のありようが規定されてくるのかという議論が古くから心理学にありますが・・・・。ファーストネーム呼び方を親しさだけでなく、裸の個人としての対等な関係を示すものだとすれば、私達が○○先生とお互いを呼び合っているのは、一体私達の何をはんえいしているのでしょうか』

これはスコットランドの教育現場の先生たちがお互いにファーストネームで気軽に呼び合ってイルのに対して、日本では先生、先生とお互いを呼び合っていることへの痛烈な批判である。

 

書名

著者

出版社

発行年月

価格

購入先

読了日

フロイトその思想と生涯

ラッシェル・ベイカー

現代新書

75/

未記入

未記入

S59/3

医学社、心理学者、哲学者としてのフロイトの一生をえがいた伝記である。原著名が「SIGMUND FREUD FOR EVRYBODY」とあるように、難解になりがちなこのジャンルの書物を大変解りやすく平易にまとめているのがこの本の特色であろう。明らかにこれは専門家向けではなく一般大衆をターゲットにしたものに違いない。フロイトは少し前に読んだ「天才その創造のパトグラフィー」という本にも取り上がられていたし、内容的のもその本と大いに関連性があり、大変興味深く読めた。

ただ、この著者の学説の一つである「日常生活の精神病理」に関することについては、過去において一度も同じような説を読んだり聞いたりしたことがないせいか、興味は持つが、やや納得しがたいところもある。今度この問題に触れた書物があればぜひ読んでみた。

 

 

✩3月に読んだその他の本 (タイトルと著者名)

・創造型人間の頭脳戦略 (ルイス・グリーン、渡部茂(訳)) 三笠書房

・日本統治下の朝鮮 (山辺健太郎) 岩波新書

・暗い青春・魔の退屈 (坂口安吾)  文庫

・場外乱闘はこれからだ (椎名誠)  文庫

・県民性・文化人類学的考察 (祖父江孝男) 中公新書

・知能指数 (滝沢武久)  中公新書

・無気力の心理学 (波多野誼余夫、稲垣佳世子) 中公新書

 

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✩昭和59年(84)11月~60年3月に読んだ本 (書名と作者名、他)

・女性のための小さな会社のつくり方 (著者名未記入)

・ああダンプ街道 (佐久間 充)岩波新書

・良い仕事のできるやつ (和田 勉)

・フューチャカンパニー (上野 明)

・打算 (渡辺一夫) 文庫

・実録・悪の錬金術 (杉山治夫)

・人を見抜く (杉本 順) 文庫

・会社後寿命 (日本経済新聞社編)

・いいたい放題 三ピン鼎談 (堺屋太一、渡部昇一、竹村健一)

・頭取室 (島田一行) 文庫

・ミドルエイジ症候群 (稲村 博) 現代新書

・重役室 (島田一行) 文庫

・相場師 (島田一行) 文庫

・投機 (島田一行) 文庫 

・相場師 (島田一行) 文庫

・虚業集団 (島田一行) 文庫

・諸説総会屋 (清水一行) 文庫

・商戦 (三好 徹) 文庫

・小説電通 (大下英二) 文庫

・マーケティング戦略の実際 (水口健二) 日経文庫

・経営革命 (御厨文雄) PHP

・コンセプトノート84 (博報堂編) PHP

・電通のイベント戦略 (塩沢 茂) PHP

・企業と戦略 (土屋守章) リクルート

・完了の構造 (藤原弘達) 現代新書

・昭和60年感覚  (日本経済新聞社編)

・私の小説教室 (駒田信二) 文庫

・片翼だけの天使 (生島治郎)

・テレフォンマーケティング成功事例集 (ムレイ・ローマン)

・消費の記号論 (星野克己) 現代新書

・男たちの経営 (城山三郎) 文庫

・小説銀行管理 (作者未記名) 文庫

                      以上31冊

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