今の作家ならベストセラーの1冊でも出せば、数千万円、あるいは億のつくお金を手にすることができるでしょう。でも昔はたとえ名のしれた作家でもお金に苦労し、普段の生活にも窮した人が珍しくなかったようです。
そうした作家のお金に関する苦労話は、例えば左右社から出ている「お金本」という本などにたくさん載っています。
この本がおもしろいことを証明するのは下の紹介文です。
「キツト、キツト、お返しできます。」
友人に借金し、借りた金で酒を呑み
親の脛を囓り、執筆以外の金儲けを考える。
現実と理想の間でもがきながら、今日を力強く生きるのだ。
貯金は底をついても才能は枯渇しない。
作家、実業家、ミュージシャンまで総勢96人
生きるか死ぬかのお金ばなし100篇。
売れっ子作家 山本周五郎も懐はいつも寂しかった
山本周五郎は今から54年も前に亡くなっていますから決して新しい作家ではありません。でもその人気は今も根強く文庫本などは版を重ね続けブックショップの本棚には作品がズラッと何十冊も並んでいます。
そんな売れっ子作家なのに、太平洋戦争が始まった頃の40才当時はお金に恵まれず、生活に余裕がなかったようです。
それが下の著者の日記によく現れています。
(昭和18年11月8日)
昨夜半十二、半、隣家の妻女死す。午前中雀児来る、散歩
ドストエフスキー全集を譲る
その金にて外套、着物を質より出す、
(出典)山本周五郎戦中日記(54ページ)
(昭和19年10月5日)
数日来秋雨が続く。日吉より悲鳴に似たるハガキ来る
困憊(こんぱい)の状がよく表われている、
すぐ幾干(いくばく)か持って駆けつけたいが思うに任せない
こういう時は金がほしいと思う。
(出典)山本周五郎戦中日記(81ページ)
0 件のコメント:
コメントを投稿