でも広告の左下の小さい文字に目をやってみてください。主催は「文芸社」となっており、協催が朝日新聞社とあります。問題はここです。
つまりこの文学賞の主催者はあくまで文芸社であって、朝日新聞社は単なる協賛者に過ぎないのです。
文芸社は自費出版を主業とする出版社で、公募で自費出版作品を募り、それを本にして収益を得ることを営業主体にしている会社です。
今回の「Reライフ文学賞」は文芸社が主催して行うものですが、より多くの応募作品を集めるために信用力が強くネームバリューのある朝日新聞に協賛を仰いでいるものなのです。
文芸社はコンテストで自費出版予備軍を集めている
文芸社は今回のような文芸コンテストを行って作品を集め、1~2点の合格作品以外は次点と称し
作者に「すぐれた作品なので何とか出版したい」ともちかけ、作品に対して美辞麗句を並べ作者に出版を促すのです。
もちろんこの出版費用は作者持ちになります。費用は決して安くなく、数百万円に及ぶことも珍しくありません。
にもかかわらず、文芸社営業スタッフのたくみな営業トークに負けて、ついには大金を投じて出版に及ぶ人も少なくないのです。
広告を見たとたん百田尚樹の小説「夢を売る男」が胸をよぎった
「夢を売る男は」文藝コンテスト商法の仕組みを暴いた小説
輝かしい自分史を残したい団塊世代の男。スティーブ・ジョブズに憧れるフリーター。自慢の教育論を発表したい主婦。
本の出版を夢見る彼らに丸栄社の敏腕編集長・牛河原は「いつもの提案」を持ちかける。
「現代では、夢を見るには金がいるんだ」。
牛河原がそう嘯くビジネスの中身とは。現代人のいびつな欲望を抉り出す、笑いと涙の傑作長編。
(出典:紀伊国屋書店)
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コンテスト商法とはなにか?
「文芸社」でネット検索すると「コンテスト商法」というサジェストが表示されることがあります。
「なんとかかんとか」という名を冠した賞を設けて、原稿を集め、落選者に営業をかける商法です。
新風舎という文芸社の競合他社がコンテスト商法で多数の契約をして倒産したことからか、この商法が叩かれるようになりました。
落選者という言葉を使いましたが、実は落選者はほとんどいません。奨励賞とか、そういう名目でなんらかの賞をくれます。参加賞と同じです。応募者は個人情報と引き換えです。講評もくれると思います。
トップを獲ればコンテスト内容に書いてある「出版」とか「賞金」とか、そういう条件は守られると思います。
さすがにそこで嘘をつくと法的にまずいからでしょう。ですから詐欺ではないですね。ただ、目的は自費出版の営業先を探すことであることは忘れないでください。
営業から連絡が来ると思います。彼ら彼女らは「出版」とか「企画」とか「編成」とか「文化」とか、企画部門であるかのように装って連絡してきます。
入賞者の名前と作品名が架空で、出版社は費用が発生せず、営業先だけ確保するという方法もあります。文芸社グループの日本文学館でそういうことが行なわれていた疑惑があるようですが、断言できません。
コンテストで入賞者に無料出版と賞金というご褒美を与えたとしても、ほかの著者が自費出版(協力出版とか共同出版とか言い方は様々です)をしてくれれば、回収できるんですよ。だから文芸社や自費出版が主たる事業の版元にとっては広告と同じです。
文芸社から無料(著者の費用負担なし)で出版したいなら、コンテストに応募して、文芸社のほうから「無料で出版させてください」と言ってくるまで契約しないことです。
もし、あなたが文芸社のコンテストで入賞して「契約しよう」という気になったら、契約前に弁護士の契約書チェックをおすすめします。
出典:@nifty ココログ