遅ればせながらまた一人エッセイの大家に出会うことができた
山田風太郎と言えば、すぐ思いつくのは忍者小説です。
時ならぬ忍者ブームで忍者ショーが大人気です。でも忍者の数が不足していて各地の活動には支障が出ていると言われています。
そうした事情もあって昨今では地方公共団体までが忍者の求人を出すところもあり、その様子がメディアで紹介されていました。
そうした事情もあって昨今では地方公共団体までが忍者の求人を出すところもあり、その様子がメディアで紹介されていました。
こうした昨今の世相から、もし今も忍者小説の大家山田風太郎氏が存命なら、おそらく引っ張りだこの大人気を博しているのではないでしょうか。
山田風太郎は忍法や忍者の小説を得意としてきた異色作家ですが、2001年に亡くなってすでに17年が経過しています。
小説の世界では忍法といういささかマニアックなテーマを取り扱ってきた著者ですが、その分野以外に、この方が書いたエッセイに秀逸な作品が多いということは知る人ぞ知るところです。
と、ここまで書いてお断わりしなければいけないのは、実はわたしは氏のエッセイを読んだのは今回の2冊が初めてなのです。今回なぜ読んだかと言えば、どなただったかはっきり記憶にないのですが、ある著名な作家が作品中で山田風太郎氏のエッセイを激賞していたことを覚えていたからです。
それがたまたま良いエッセイを探していた時期と重なって、実際に手に取って読んでみよう、ということになり、最初の読んだのがこれら2冊の作品なのです。
その結果、遅ればせながら氏が稀に見るエッセイの大家であるということに気づいたのです。
山田風太郎のエッセイのこの点が素晴らしい
わたしがエッセイの良し悪しの判断の基準にしているのは次の点です。
・感性が合う
・示唆に富み学ぶ点が多い
・機知(ウイット)に富みユーモアがある
控えめに見ても山田風太郎氏のエッセイは上の点をすべて満たしています。
それ故に氏の作品が好ましく思え、良いエッセイ集だと判断できたのです。
山田風太郎のエッセイ五部作とは
著者には五部作と言われる次の5冊のエッセイ集がありますが今回読んだのは比較的晩年に出された4と5です。
1.わが推理小説零年
2.昭和前期の青春
3.秀吉はいつ知ったか
4.風山房風呂焚き唄
5.人間万事嘘ばっかり
著者が読書ノートで推奨する本
著者は「風山風呂焚き唄」の中の読書ノートという作品で、読んだ本の中から特に印象深い作品として次の著者と書名を上げています。
・夏目漱石 「漱石書簡集」
・幸田露伴 「露伴随筆」
・岡本綺堂 「玉藻の前」 「半七捕物帳」
・ビクトルユゴー 「レミゼラブル」
(短編小説ベスト3)
・ポー 「黄金虫」
・アナトールフランス 「聖母の軽業師」
・芥川龍之介 「奉教人の死」
これらの作品の名前を並べてみると、いずれも一度は読んでみたくなるものばかりですが、目下のところわたしの本棚にあるのは「漱石書簡集」だけです。
とは言え、それ以外の作品はネットの青空文庫に収録されているものが多いことがわかり安心しました。
とは言え、それ以外の作品はネットの青空文庫に収録されているものが多いことがわかり安心しました。
山田風太郎が若い頃に読んだ本
一流の作家が普通の人と違う点の一つはは読んだ本の量ではないでしょうか。それも感性が最も豊かな青少年時代の読書の質と量です。そのどちらから見ても、著者の青少年時代の読書履歴はすばらしいものです。
以下は著者が青少年期に読破した本です。これらの書名を指針にして、今後何分の一かでも読めたら良いのですが。
モーム 「人間の絆」全四巻 岩波文庫
モーム 「月と六ペンス」 新潮文庫
ユゴー 「レミゼラブル」 全七巻 岩波文庫
ユゴー 「パリのノートルダム」 潮文庫
デュマ 「モンテクリスト伯」 岩波文庫
パルザック 「知らざれる傑作」 岩波文庫
パルザック 「アデュル(パルザック全集)」 東京創元社
モーパッサン 「女の一生」 集英社文庫
モーパッサン 「脂肪の塊」 講談社文庫
シェンキュビッチ 「クオ・ヴァデス」 岩波文庫
フランス 「神々は渇く」 岩波文庫
フランス「舞姫タイス」角川文庫ー
ドイル 「シャーロックホームズ」新潮文庫
クリスティ 「アクロイド殺し」 ハヤカワ文庫
クリスティ 「そして誰もいなくなった」 ハヤカワ文庫
ポオ 「黄金虫」新潮文庫
ポオ 「アッシャー家の崩壊」 講談社文庫
ドストエフスキー 「罪と罰」全二巻 中公文庫
ドストエフスキー 「カラマーゾフの兄弟」 全五巻 中公文庫
ドストエフスキー 「死の家の記録」 新潮文庫
トルストイ 「戦争と平和」 全四巻 岩波文庫
トルストイ 「復活」 全二巻 岩波文庫
トルストイ 「アンナカレーニナ」 全七巻 岩波文庫
チェーホフ 「六号室」中央公論社
チェーホフ 「谷間」 中央公論社
ミッチェル 「風と共に去りぬ」 全五巻 新潮文庫
ツワイク 「マリーアントワネット」 全二巻 岩波文庫
「水滸伝」 岩波文庫
「聊斎志異」 平凡社
「金瓶梅」 岩波文庫
「平家物語」 講談社学術文庫
鶴屋南北 「東海道四谷怪談」 岩波文庫など
河竹黙阿弥 「白波五人男」 評釈江戸文学叢書(講談社)など
「芭蕉俳句集」 岩波文庫
「蕪村俳句集」 岩波文庫
徳富蘇峰 「近世日本国民史」近世日本国民史刊行会
幸田露伴 「運命」 岩波文庫
森鴎外 「即興詩人」 岩波文庫
森鴎外 「雁」 岩波文庫
森鴎外 「高瀬舟」 岩波文庫
夏目漱石 「坊ちゃん」 岩波文庫
夏目漱石 「こころ」 岩波文庫
夏目漱石 「吾輩は猫である」 岩波文庫
夏目漱石 「漱石書簡集」 岩波文庫
谷崎潤一郎 「春琴抄」 中公文庫
谷崎潤一郎 「盲目物語」 岩波文庫
谷崎潤一郎 「猫と圧造と二人の女」 新潮文庫
正宗白鳥 「或る世の中」 中央公論社
芥川龍之介 「地獄変」 新潮文庫
芥川龍之介 「法教人の死」 新潮文庫
正岡子規 「仰臥漫録」 岩波文庫
泉鏡花 「歌行燈」 新潮文庫
井伏鱒二 「夜ふけと梅の花」 永田書房
太宰治 「斜陽」 新潮文庫
斎藤茂吉 「赤光」 岩波文庫
石川啄木 「一悪の砂」 新潮文庫
永井荷風 「墨東基壇」 新潮文庫
永井荷風 「断腸亭日乗」 岩波文庫
福沢諭吉 「福翁自伝」 岩波文庫
内田百閒 「百鬼園随筆」 旺文社文庫
北原白秋 「邪宗門」 岩波書店
久保田万太郎 「万太郎句集」久保田万太郎全集十四巻 中央公論社
宮沢賢治 「春と修羅」 ちくま文庫
石光真清 「城下の人」 四部作 中公文庫
中里介山 「大菩薩峠」 富士見文庫
岡本綺堂 「半七捕物帳」 光文社文庫
吉川英治 「宮本武蔵」 講談社文庫
江戸川乱乱歩 「二銭銅貨」その他の初期短編 講談社文庫
正宗白鳥 「文壇人評論集」 中央公論社
三田村蔦魚 「大衆文芸評判記」 中公文庫
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