看板に偽りあり、と怒るなかれ!面白くて楽しいだけでなくホッと心温まる本
ひょっとしてこの本のタイトルを見て、男性が興味を持つあちら方面のエッチな内容を期待して読み始めた方がいるのではないでしょうか。
そういう私もそうした期待がまったくなかったとは言えません。何しろタイトルがタイトルです。これを見ると男性なら誰でもオッと心穏やかではいられないのではないでしょうか。
しかしです。はっきり言ってこの本は看板に偽りがあります。とは言え、この本はエッセイ集ですからたくさんの作品が載っています。
下の目次にあるように、収録された多くのエッセイの中に一つだけ「オッパイ入門」というタイトルがあるのです。そのタイトルをそのまま本の題名に持ってきているだけで、何も全体がオッパイに関する内容ではないのです。
それに「オッパイ入門」という作品にしても、漫画家らしくユーモラスに描かれていますから読み手が期待するようないわゆるエッチでいやらしい表現はなく、極めて健康的で道徳的なのです。
したがって読者としては、まったく期待外れと言ってもいいかもしれません。とはいえ読者がこの本に対する期待はそちら方面だけではないはずです。東海林さだおという漫画作家の専門分野である漫画に対する期待も大きいはずです。
それに対しては十分すぎるほど応えてくれており、面白く楽しいだけでなく、読んでいて気持ちがホッと温かくなり、滅多に得ることのできないような癒しの気分を得ることができます。
これだけで読んだ価値は十分あり、看板に偽りあり、と怒るなど、とんでもないことです。
これが東海林さだおワールドだ、最初から終わりまで全編にユーモア満載
東海林さだおと言えば、すぐ思いつくのは「タンマ君」や「アサッテ君」などの連載漫画です。
かつては漫画は子どものものと考えられていましたが、その常識を破って大人向けの漫画が認められるようになったのはこの方の功績も大きいのではないでしょうか。
氏の漫画を読みたいばかりに連載が掲載された週刊誌を買う人も少なくないはずで、それが週刊誌の売上に大きく寄与しているとも言われています。
でも東海林さだおの本を求める人には、漫画だけでなくエッセイという、もう一つ目的があるのです。
東海林さだおは漫画だけでなくエッセイの達人でもある
東海林さだおは類まれな漫画家です。でも読者がこの著者に期待するのが漫画だけかと言えばそうではありません。
氏は優れた漫画家であるのと同時に、知る人ぞ知るエッセイの達人でもあるのです。その証拠にエッセイ作品でも菊池寛賞や講談社エッセイ賞などメジャーな賞を多く受賞しています。
東海林さだおは漫画家であると同時に才能あふれるエッセイイストでもあるのです。
この作品も著者の力量がいかんなく発揮された秀逸なエッセイ集です。
こう言えば硬くなりますが、とにかく抜群に面白いエッセイ集で、初めから終わりまで頬が緩みっぱなしです。
以下は版元によるこの本の紹介と目次です。
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(この本の紹介から)
これなくして人類はいきられない!
・「おっぱい」には謙虚であらねばならない――。浮世絵からマリリン・モンローまで「入門編」「実技編」「応用編」を論じたショージ的「おっぱい入門」。
・タオルのやわらかさと安らぎ感が好きすぎて、タオルを目にするたびにタオルに向かって小さく「好き!」と呟いてしまう、皮膚感覚についてのエッセイ「タオルっていいな」。
・「カラマーゾフの兄弟」に挑戦しようとするもたった15行でノックダウン……なのになぜ、宇野鴻一郎のエロ小説はスラスラッと読めるのか!? ショージくんの読書論「読書の秋、ガスコン兵の夜」など――。
爆笑必至のショージ節エッセイに加え、中野翠さんとの豪華対談「恥ずかしい、都の西北」も収録!
〈目次〉
・オッパイ入門
・欠伸のすすめ
・タオルっていいな
・サバイバルナイフを買う
・アリに学ぼう、サラリーマン
・遠ざかる青春
・「せこい」の研究
・寂しいのはお好き?
・辞書をいじめる
・読書の秋、ガスコン兵の夜
・俳句入門、目刺し篇
・寿司ってるぞ、ニッポン
・挨拶は必要か
・忖度がいっぱい
・豪華列車のビンボー感?
・恥ずかしい、都の西北
(特別対談 東海林さだお×中野翠)
- オッパイ入門
- 著者:東海林さだお
- 発売日:2018年01月
- 発行所:文藝春秋
- 価格:1,458円(税込)