読書記録・新14 2019年 9月~10月
書名
| 著者名 | 出版社 | 発行年月 | 価格 | 入手媒体 | 評価&コメント |
泥酔文学読本 | 七北数人 | 春陽堂書店 | 2019年6月 | 2400円+税 | 図書館 | (A)タイトルが気に入った。酒と文学がこの本のテーマだが、酒を泥酔と表現しているところが良い。坂口安吾を中心に、太宰治をはじめとした言わば無頼作家との交流がおもしろい。海外も含め、数十名の作家が登場するのは圧巻。 |
夢のなかの魚屋の地図 | 井上荒野 | 幻戯書房
| 2014年1月 | 2000円+税 | 図書館 | (A)著者は井上光晴の娘だが、大作家の遺伝子を十分すぎるほど引き継いでいて才能豊か。作家は感性が優れているのは当然のことだが、この人の感性の鋭さはピカイチ。これまで読んだ女性作家のエッセイ集の中では五指に入る秀作。 |
暗がりの弁当 | 山本周五郎 | 川出文庫 | 2018年6月 | 660円+税 | 図書館 | (A)国民的作家とも呼ばれる往年の人気作家だが、膨大な小説の量に比較するとエッセイは極めて少ない、いや少ないというより、ないに等しい、といったほうがいいかもしれない。今回の「暗がり弁当」以外の作品は、どの出版社を探しても見つからない。引き続き探していきたい。 |
超一流のマインドフルネス | 千田琢哉 | 徳間書店
| 2018年3月 | 1300円+税 | 図書館 | (B)この作家、驚くかな、これまでに1人で162冊もの作品を出版しているという。ウィキペディアに作品の名前すべて掲載されているが、ほとんどがビジネス書である。それにしても10年強の間にこれだけ書いたとは驚嘆以外の何ものでもない。しかし今回の作品に限ってはお世辞にも良いとはいえない。162冊が粗製乱造でなければいいのだが。 |
江戸時代の暮らし | 福田智弘 | 辰巳出版 | 2019年9月 | 1400円+税 | 図書館 | (B)小説をはじめ時代劇の多くが江戸時代をテーマにしたものだけに、300年~前のこの時代に対する興味はつきない。本の企画としては良いのだが、テーマの間口が広すぎて、個々の取り上げた個々の記事の記述が浅すぎる。したがって読みごたえがなく、残念ながら良い評価は与えられない。物足りない作品になったのは版元がマイナーな出版社ゆえなのだろうか? |
読書記録・新15 2019年 9~10月
著書名 | 著者名 | 出版社 | 発行年月 | 価格 | 入手媒体 | 評価&コメント |
生きる悪智恵
| 西垣理恵子 | 文春文庫 | 2012年 | 800円+税 | 自己購入 | (B)著者は売れっ子の女性漫画家。今回の作品はお悩み相談という興味あるテーマだが、内容はありきたりで特にほめる点はない。読者に受ける点があるとすれば女性には珍しく下ネタを大胆に語っていることぐらいだろうか。 |
嘘(日本の名随筆) | 筒井康孝他 | 作品社 | 1994年 | 全集 | 自己蔵書 | (B)このエッセイ集を読んでいて、ふと以前読んだ「〆切」と言うエッセイ集を思いだした。それは「嘘」というテーマが〆切同様に作家にとっては非常に魅力的なものではないかと思われるからかもしれない。〆切も嘘も、作家とは切っても切り離せないほど密接に結びついている。作家とは嘘の話を書いて、いつも〆切に追っかけられているからだ。それにしても「〆切」は多くの作家が良い作品を書いていたが、今回の「嘘」には目だった作品がないのは何故なのだろう。今から30年も前に出た本であり、この時期はまだ嘘が作品のテーマとしては円熟していなかったのだろうか? |
蒲団 | 田山花袋 | 集英社 | S49年 | 全集 | 自己蔵書 | 発表当時は問題作として、世間を騒がせた作品であるが、今読むといったいどこが問題なのかよくわからない。おそらく最後の方に出てくる、主人公が弟子であった若い女性の使ったふとんに顔を埋めて、むさぼるように匂い(体臭)を嗅ごうとする姿に、主人公の性に対する欲望が強く感じられる点なのであろう。だがこれはあくまで性の問題を厳粛なものと捉えていた明治後期のことであって、現在はまったく通じない。とはいえいまだにこの作品が読み続けられているのは、小説としての出来栄えの良さに違いない。個人的な感想としては、弟子の女性の出身地が、岡山県新見であることにはずいぶん驚かされた。 |
田舎教師 | 田山花袋 | 筑摩書房 |
| 全集 | 自己蔵書 | (A)文学者として身を立てたい、という思いを抱きながら、いつまでも田舎での教師生活を送る主人公の葛藤、悶々とした悩み多き日常がよく表現されている。登場人物も多彩で、小説としての完成度は高い。100年以上前の明治後期の作品だが、仮名遣いに多少の読みづらさはあるものの、最後まで興味深く読めた。さすがに日本文学の名作と言われるだけのことはある。 |
読書記録・新16 2020年 1月~2月
著書名 | 著者名 | 出版社 | 発行年月 | 価格 | 入手媒体 | 評価&コメント |
貧(日本の名随筆) |
| 作品社 | 1994年 | 全集 | 自己蔵書 | (A)日本の名随筆は全集物では屈指の好著と言えるが巻数が100以上と多すぎて選択が難しい。その中で今回選んだ「貧」は興味深い1冊。なにしろ作家といえば駆け出しの頃は貧乏だった人が多く、作品のテーマにはうってつけであるに違いない。それだけに秀作も多い。今回の作品の中では水木しげると森穎の作品が特に優れていた。 |
破壊 | 島崎藤村 | 集英社 |
| 全集 | 自己蔵書 | (A)夜明け前と並ぶ藤村の代表作。部落民が作品のテーマだが、デリケートな問題にしてはうまく取り上げており、小説として良い作品に仕上がっている。主人公丑松が不屈の意思で部落民という逆境に立ち向かう姿が読む人の心を打つ。 |
希望という名のアナログ日記 | 角田光代 |
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| 1600円 | 図書館 | (B)この人のエッセイは何冊か読んできたが、感銘を受けた作品は少ない。テーマにそれほど魅力を感じなだでけでなく、書き方が観念的過ぎて現実味がない。それに気障(キザ)な文章が多々あるのも気になる。 |
雁 | 森鴎外 | 青空文庫 |
| 0円 | ネット | (B)日本を代表する文豪の一人だが、個人的にはそれほど好みにあった作家ではない。どちらかと言えばとっつきにくい作品が多いのだが、今回の「雁」はそうでもなく、割に読みやすかった。ただ最後の方になってストーリーの脈絡の乱れには少なからず悩まされた。 |
人間失格 | 太宰治 | 青空文庫 |
| 0円 | ネット | (A)未だに若者を中心に根強い人気に支えられて稀有な作家だが、最も人気があるこの作品も突き詰めて考えてみると、なぜこれほど人気があるのかわからない。その「わからなさ」こそがこの作品の人気の秘密なのだろうか。 |
お金本 | 左右社編集部 | 左右社 |
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| 図書館 | (A)前回大ヒットした「〆切本」と同系統にテーマで2匹目のどじょうを狙ったのだろうが、内容的には前回を凌ぐことはない。昔の作家はお金に苦労した人が多く、それだけにテーマとしては申し分ないのだろうが、取り上げられている作品はすでに既知のものが多く新鮮さに乏しい。まだあまり知られていない新しい作家の作品をもっと多く取り上げても良かったのではなかろうか。 |
読書記録・新17 2020年 3月~4月
作品名 | 著者名 | 出版社 | 発行年月 | 価格 | 入手媒体 | 評価&コメント |
日本の名随筆「酒」 |
| 作品社 |
| 全集 | 自己蔵書 | (B)作家にとって作品のテーマにしやすいだけに秀作ばかりとはいかず、半分は駄作と言っていい。 |
斜陽 | 太宰治 |
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| 0円 | あおぞら文庫 | (A)人間失格と並ぶ太宰治の名作と呼ばれている作品であり今も若者を中心に広く読み続けられている。しかしこの作品を1回読んだだけでじゅうぶん理解できる人は少ないのではなかろうか。山田詠美さんのように小学生の時から読み始め、通算で10回も読んだとしても、はたして満足した理解ができるかどうか?それはそうとして、小説としての技巧のうまさと、まれに見るほどの名句、名言が多く散りばめられていることは素直に認めざるを得ない。 |
人生をいじくり回してはいけない | 水木しげる | ちくま文庫 | 2015/2月 | 748円 | 自己購入 | (B)出征した南方の戦地の島で現地の土人に好かれて永住を進められたという話からしても、この人は人を引きつける力が非常に強いのだと思う。文章もユーモアが端々に表れていて味がある。漫画家とは言え、この人のIQは相当なものに違いない。 |
酒と酒場のベストエッセイ | サントリー編 | TBSブリタニカ | 1984/12月 | 750円 | 自己蔵書 | (B)期待した割には良い作品が少なかった。特に印象に残ったのは朝吹登水子氏の作品。文章がとても上手で味わい深い。フランスに深く関わっており、フランソワーズ・サガンながどの交友があったことだけでもすごいことだ。 |
津軽 | 太宰治 | 青空文庫 |
| 0円 | 青空文庫 | (B)この作家のものには珍しく、他の作品と比べても小説と呼ぶには文章が堅苦しくて、まるで 風土記か学術論文のような趣である。ストーリー性が乏しいので非常に読みづらくく目下のところ386ページ中一80ページまで進んだが、この先も読み続けられるかどうかは不明。 |
紙の月 | 角田光代 | ハルキ文庫 | 2014/9月 | 649円 | 自己購入 | (B)はっきり言ってこの作家とは相性が極めて悪い。どういうわけか、読んだ作品に対して良いことを書くことがほとんどない。今回の作品についても苦言ばかり書かなければならない。はっきり言ってこの作品は駄作としか言いようがない。良いところなどまったく無し。こんな作品を堂々と出す出版社も問題だ。しかも映画化までするとは。小説としての内容も悪いが、そもそも前後と辻褄の合わない文章が多すぎる。それにストーリー展開も幼稚で雑だ。 |
読書記録・新18 2020年 8~ 9月
作品名 | 著者名 | 出版社 | 発行年月 | 価格 | 入手媒体 | 評価&コメント |
ベストエッセイ2019 | 日本文藝家協会 | 光村図書 | 2019/7月 | 1800円 | 図書館 | (A)このシリーズ6冊めだが、相変わらず秀作は少なく合格点をつけられるのは僅か6~7編程度だろうか。その僅かな数の秀作の中に、なんと今年で98歳になる瀬戸内寂聴の作品がある。「創造と老年」というタイトルの作品。文章に衰えなど少しも見えず、新鮮な言葉遣いに満ちている。それになんと言ってもスバラシイのは、文章のみずみずしさだ。これが読む人をグイグイ引きつける力なのだ。 |
ベストエッセイ2019 | 日本文藝家協会 | 光村図書 | 2018/7月 | 1800円 | 図書館 | (A)藤崎彩織(世界の終わり)などミュージシャンの作品。森下典子、池内紀、大竹聡などエッセイストに秀逸な作品が目立つ。エッセイストの作品は良くて当然だが、ミュージシャンに良い作品が多いのは、考えさせられる。 |
羅生門 | 芥川龍之介 |
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| 青空文庫 | (B)読者人気ランキング3位(26,770人)と、この作品が青空文庫人気ランキング第3位になっているのは単に文豪による話題作という理由だけでなく短編小説ゆえの読みやすさがあるからかもしれない。 |
悪妻論 | 坂口安吾 |
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| 青空文庫 | (A)ある人にとっての悪妻は他の人だとそうでないかもしれない。それは悪妻かどうかは相対的な問題であるからだ。往々にして良妻と呼ばれる人は知性の乏しい人が多いらしい。それは知性が乏しければ批判精神がなく夫に従順なため、それ故に良妻とみなされるのだ。と著者は言う。 |
小川洋子と読む内田百閒 | 内田百閒 | ちくま文庫 | 2020/2月
| 880円 | 自己購入 | (B)短編1作ごとに小川洋子さんの解説がついているが、こちらも本文同様難解である。内田百閒氏は夏目漱石の弟子であるが、作風はかなり違っていて、親しみを感じる漱石の作品に比べて難解で近寄りがたい。純文学系の作品が多いからだろうか。名作と言われている「冥途」も理解不可能。いずにしても今後は積極的にこの作家に近づくことは少ないだろう。 |
韓国社会に現在 | 春木育美 | 中公新書 | 2010/8月 | 880円 | 自己購入 | (A)著者は韓国の大学に留学しただけあって、多方面で韓国事情に精通している。このところ発展が目覚ましい韓国は、もはや日本に追いつけの時代は終わり、むしろ日本をリードしている分野ですら見受けられる。電子政府しかり、医療サービスしかりである。ただ高齢者福祉に目を向ければ、年金制度の遅れから、高齢になってもなんらかの仕事に従事しなければ生活が維持できない人も珍しくなく、この点が今後の大きなネックになることは否めない。 |
読書記録・新19 2020年 11月~ 12 月
作品名 | 著者名 | 出版社 | 発行年月 | 価格 | 入手媒体 | 評価&コメント |
女の奥義 | 阿川佐和子 大石 静
| 文藝春秋 | 2018/1月 | 1300円 | 図書館 | (A)お二人とも歯に衣を着せずズバリものを言うタイプなので読んでいて心地よい。それにしても二人とも超売れっ子で稼ぎがすごく良いようだ。中でも大石静さんは実弟が背負った2億数千万の借金を肩代わりし、たった数年で完済したというからすごい。(ブログ・書評) |
悪い恋人 | 井上荒野 | 朝日新聞出版 | 2014/12月 | 1600円 | 図書館 | (B)前回読んだエッセイ集ほど良くはなかったが、小説としてまずまずの完成度。同世代の角田光代の作品より数段good。 |
小説をめぐって | 井上ひさし | 岩波書店 | 2010/7月 | 2000円 | 図書館 | (SA)いわゆる知の巨人と言われる人としてよく挙げられるのは現存者では佐藤優、立花隆などがいるが、故人となったとはいえこの井上ひさしは紛れもなく昭和の時代を代表する知の巨人の1人であることは間違いない。明治にくらべて昭和は、その名を将来末永く残したいと思われる作家が少ないが、井上ひさしは紛れもなく、日本の文学史上で長く語り継がれることは疑う余地はない。(ブログ・書評) |
本のリストの本 | 南陀楼綾繁、他 | 創元社 | 2020/7月 | 2300円 | 図書館 | (A)ユニークな本と言っていいだろう。おそらく企画が相当練られた結果できて本であるに違いない。5人の本マニアのエッセイという形で本の題名が紹介されているが、エッセイそのものは悪くないのだが問題は選ばれた本である。どちらかといえば珍本、稀覯本などの類が多く紹介されているが、はたしてウーンと唸り声の出るような見事な本はあるか? |
妄想気分 | 小川洋子 | 集英社 | 2011/1月 | 1300円 | 図書館 | (B)期待して読んだがそれほどでもなかった。ただ純文学系でやや難解な小説に比べるとエッセイの方は平易な文章で読みやすい。作品は良いものと悪いものが半々。悪い作品はきっと締切に追われた作品に違いない。 |
生きる事は面白い | 五木寛之 | 東京書籍 | 2013/9月 | 1200円 | 図書館 | (B)わが国を代表する名作家のエッセイ集のB評価をつけるのは忍びない。この作家は明らかに書きている。そのためテーマ切からか晩年の作品に駄作が多くなっているのではなかろうか。 |
読書記録・新20
2020年12月~21年 1月
書名 | 著者名 | 出版社 | 発行年月 | 価格 | 入手媒体 | 評価&コメント |
老人初心者の覚悟 | 阿川佐和子 | 中央公論新社 | 2019/12月 | 1300円 | 図書館 | (SA)この人のエッセイはたいてい面白くて読み甲斐があるがこの作品も例外ではく非常に優れている。ひょっとしてこの方はエッセイの達人なのではないだろうか。女性とは言え、父親阿川弘之の確かなDNAを受け継いだ才能豊かな作家なのだ。 |
マリコ炎上 | 林真理子 | 文藝春秋 | 2016/3月 | 1200円 | 図書館 | (B)ひとことで言って、つまらないエッセイ集である。テーマが日常茶飯事というか身辺雑事に関わるようなことばかりで、作家らしい深遠で趣のある題材など一つもない。過去にはベストセラー小説も出していて、世間ではベテラン大作家として認められているが、はっきり言ってこれほどエッセイが下手な人も珍しい。ある読者が「この人のエッセイを読んでいると、なぜだか無性に腹が立ってくる」と書いていたが、全く同感である。名のある作家なのにつまらないことばかり書いているので腹が立つのである。 |
小さな幸せ46コ | 吉本ばなな | 中央公論新社 | 2015/3月 | 1300円 | 図書館 | (SA)文章が非常に上手で、作家としての確かな才能を感じる。哲学者で作家である父親吉本 のたしかなDNAを引き継いた天才的な作家と言ってもいいのではないだろうか。翻訳作品が多く海外にも熱烈ファンが多いことがうなずける。 |
帰省・未刊行エッセイ集 | 藤沢周平 | 文藝春秋 | 2008/8月 | 1524円 | 図書館 | (A)これほど多くの未刊行作品が残っていたということからも、この作家の多作ぶりがじゅうぶん伺える。未刊行とはいえ、収録作品には秀逸なものが多く、一冊にまとめあげた文藝春秋の努力を讃えたい。 |
半生の記 | 藤沢周平 | 文春文庫 | 1997/6月 | 600円 | 自己購入 |
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JR上野駅公園口 | 柳美里 | 河出文庫 | 2017/2月 | 600円 | 自己購入 |
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