「炎上する社会」 吉野ヒロ子 弘文堂
インターネットは人々にはかりしれない恩恵をもたらせた一方、個人に対する誹謗中傷やネットリンチとも呼ばれすサイト炎上などの重大な社会問題も引き起こしています。
その炎上に鋭く迫ったのが本書ですが、全編エキサイティングな内容の中、個人的には「第4章 炎上に参加する人々」に特に興味を引かれました。
(内容説明)
2005年、日本で初めて炎上という表現が使用されて以降、SNSの普及もあいまって、炎上事例は増え続けている。そうした事例のなかには逮捕者が出たり、誹謗中傷に悩み自殺にいたるケースもあるなど、見過ごせない状況になっている。
本書では、東芝クレーマー事件、UCC上島珈琲、PCデポ、ラーメン二郎仙台店、ローチケHMVチケットキャンセル騒動、大戸屋バイトテロ…など実際に起きた企業の炎上事例を題材に、主にTwitterの投稿内容から炎上参加者の特徴や、炎上が及ぼす企業の評判への影響など、その構造を解析。
炎上は誰が、なんのために起こし、なぜ飛び火するのか? 炎上前の予備知識として、そして、炎上後の適切な謝罪にも役立つネット時代の広報必携書。
出典:紀伊國屋書店
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目次
第1章 炎上とはなにか
・炎上の定義と特徴
・炎上のパターン
・炎上の典型的なプロセス
・炎上の2つの側面――「祭り」と「制裁」
・本書で考えたいこと
◎コラム1:炎上とソーシャルメディア
第2章 炎上の歴史と社会の変化
・間メディア社会における炎上
・炎上の変遷
・炎上の発生/拡大に関わるメディアの特徴
・炎上の認知経路は炎上への態度に影響するのか
・炎上は、ネットだけで起きているわけではない
◎コラム2:J-CASTニュースから見た炎上
第3章 Twitterでは炎上についてなにが投稿されているのか
・炎上ではなにが起こっているのか
・事例1――PCデポ炎上(2016年)
・事例2――ラーメン二郎仙台店炎上(2017年)
・攻撃的な投稿/批判的な投稿はリツイートされやすいのか?
・炎上の時にTwitterで起きていること
◎コラム3:PCデポに関する2ちゃんねるのスレッド
第4章 炎上に参加する人々
・どのような人が炎上に参加しているのか?
・炎上について投稿した人としていない人の違い
・批判的な投稿をした人と批判以外の投稿をした人の違い
・炎上の対象を批判した動機
・炎上参加者はたくさんの「普通」の人たち
◎コラム4:誹謗中傷する人はどんな人か
第5章 炎上は企業の評判にどう影響するのか
・レピュテーションの低下から予想されることとは?
・2020年調査の概要と主な結果
・個別事例への反応
・炎上と企業への評価
◎コラム5:Z世代と炎上
第6章 危機管理広報から見た炎上
・炎上社会における企業広報の役割
・危機管理広報とはなにか
・ネットユーザーとの関係構築
・どう対応するか――3つの軸から
・どう備えるか
・企業の炎上対応に必要なこと
◎コラム6:炎上〇×クイズ
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(書評)
「炎上」という現象については「あっしには関わりのないことでござんす」と思ってはいるが、編集後記で不適切なことを書いて、デスクから注意を受け、速攻で書き直すのは、いつものことだ。そういう意味では、わたしはガンコ者ではなく、とても柔軟で温厚な人物であろう(?)。我ながら軽率であるのは確か。
ネットで批判が殺到する「炎上」と呼ばれる現象が頻繁に起きるようになって、10年以上経つらしい。よく考えると妙な現象で、本来関係のない多くの人が、なぜか関係あることになって感情を動かされる、というのが特徴である。関係ないのに前のめりに反応してしまう。
炎上については、たとえば荻上チキ『ウェブ炎上』、安田浩一『ネット私刑』、スマイリーキクチ『突然、僕は殺人犯にされた』など、既に多くの論考が出版されている。本書の著者は、帝京大学准教授、内外切抜通信社特別研究員。専門は広報論、ネットコミュニケーション論。
この本では、炎上という現象をネットだけの問題としてではなく、ネットの登場によって生じた、社会全体の変化のあらわれではないかという視点から、主に企業の炎上事例を考察している。
読者としてはレポートや卒論などで、ネットコミュニケーションのあり方を取り上げたい学生や、今のネット社会はどうなっているのか考えてみたい人、ネット炎上の対策を知りたい企業広報の担当者を想定しているようだ。
構成は以下の通り。炎上という現象はどのように変化してきたか、Twitterでは炎上について実際にどのような投稿があったのか、炎上に参加している人の傾向、炎上は企業の評判にどう影響するか、企業広報は炎上にどう対応すべきか、そして、ネットは社会をどう変えたのか。
著者は2015年からこの研究を始め、講演やテレビ出演などで炎上の話をしているが、そういう機会に思うことは「炎上の怖さを知らない人はまだまだ多い」ということだった。裁判沙汰になったら、被告のスマホやパソコンは押収され、任意取調べで拘束が発生する。取り調べ自体が精神的にきつい。
出典:MAG2NEWS
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(著者紹介)
吉野ヒロ子
帝京大学准教授・内外切抜通信社特別研究員。1970年生まれ。「ネット炎上を生み出すメディア環境と炎上参加者の特徴の研究」にて博士号取得(社会情報学・中央大学大学院文学研究科)。専門は広報論、ネットコミュニケーション論。主要論文:「ネット『炎上』における情報・感情拡散の特徴―Twitterへの投稿データの内容分析から」(共著、2018年度日本広報学会賞研究奨励賞)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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