酒井順子は勇気がある
酒井順子のエッセイが大好きで、これまで数十点ある作品の3分の1くらいは読んでいます。好きな理由は取り上げるテーマの選択が上手で、文章が洗練されていて、その上内容が示唆に富んでおり、学ぶ点が多いからです。
それに男性だと読んでいて気がつくはずですが、性についての話題がしばしば登場するのです。これはおそらく彼女自身が性に対する興味が強くて深いからに違いありません。
それ故に今回のような全編性問題ずくしの作品を書くことができたのではないでしょうか。
目次を見るだけでドキドキする
下にあるこの本の目次を見てみてください。おそらく普通のエッセイ集の目次のように冷静な気持ちで読めないのではないでしょうか。わたしなどは二十数項目にも及ぶ目次テーマを見終わるまでずっとドキドキし通しでした。
これだけ危うさに満ちた内容の本を、よく女性エッセイストが書いたものだと感心してしまいました。
それにしてもこれだけの内容を書き上げた酒井順子さんは勇気ある見上げた女性作家ではありませんか。
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出版社内容情報
時代と共に移り変わる「処女の価値」を追うことで、日本女性の地位、性意識のみならず、社会構造の変遷をもあぶり出す、革新的女性論
内容説明
処女と貞操。1200年の歴史から女性の地位、モラル、社会の空気の変遷までもあぶり出す刺激的な「性のクロニクル」!
もくじ
・性の解放、行き着く果ては
・平安の貞操事
・女の欲求」が見えていた頃
・「女大学」で処女は守れるか?
・肉交あって情交無き時代
・クリスチャンが愛した「純潔」
・与謝野晶子vs平塚らいてう
・貞操論争と童貞ブーム
・処女膜を超越せよ
・丸ビルに処女なし?
・貞操意識の二極化、そして「エス」
・「男の貞操」と「永遠の処女」
「する自由」と「しない自由」の消滅
・肉体コンシャスに生きる
・女の情欲への恐れと制御
・性の黒船、「ペッティング」と「オリンピック」
・フリーセックスの荒波に揉まれ
・モテてからするか、してからモテるか
・「ツッパリ」の純情、「アンアン」の多情
・処女の価値、ストップ安の時代
・そして誰もしなくなるのか
著者等紹介
酒井順子[サカイジュンコ]
1966年東京生まれ。高校時代より雑誌「オリーブ」に寄稿し、大学卒業後、広告会社勤務を経てエッセイ執筆に専念。一貫して、日本の女の生き方・考え方をテーマにし、2003年に刊行した『負け犬の遠吠え』はベストセラーとなり、講談社エッセイ賞、婦人公論文芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
出典:紀伊国屋書店
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
九曜紋
「日本女性の処女性の意味」について編年体で綴っていくとこういう形にならざるを得ないのだろう。しかし上手く纏めることに労力を費やすあまり提言力はほぼ無い。性交渉をしようとしまいと、自己決定権に基づき個人の責任において決めればよい。しかし性交渉の自由度が高まるほどリスクを負うのは女性だということに無自覚すぎるのではないか。(妊娠、最悪の場合中絶)。男性に対するルサンチマンの発散も結構だが、そんなことで女性を守れるのか?著者の初体験も未体験では恥ずかしいから急いで済ませたらしい。主体性すらもない人だと思う。
2023/09/06
チサエ
昔々、紫式部や与謝野晶子らの時代から現代までの男女(主に女性)における性意識の変遷を書いたエッセイ。長らく男性の影に隠れるように生き、純潔や貞操などを当たり前とされ、「し」ない自由も「する」自由もないに等しかった女性たち。それでもそんな時代に抗ってきたからこその今。いやこれかなりおもしろかったです。オススメ。
2023/11/23
むう
タイトルからするに(「ショジョのドーテイ」だからね)もう少しユルイ内容かと思っていたが、歴史の中で「純潔」がどのようにとらえられてきたかを、資料を基にまじめに考えていくものだった。そして、それはそれで非常に面白かった。最終章「そして誰もしなくなるのか」は、本当に現実的な問題(問題ではないという考え方もあるが)だと感じる。しかしこの本を読むとそうなっていくのが歴史の必然にように思えてくるのである。
2023/10/27
moimoi
「処女」にどのような印象を持つかは世代によって変わりそうだ。確かに2000年代に学生時代を過ごした中では、なぜか性体験をしている方が「イケてる」「偉い」という風潮があり、処女のままの友人や知り合いを下に見る人が多かった気がする。今は「処女だから何?」「処女のままでいる理由って何?」など価値付けは多岐にわたる。しかし「処女の価値付けは自分自身が行っていいんだ」と言われれば困る。個人的には社会の雰囲気に流された方が、「一般的にはそうだから」と自分の価値付けに納得ができそうな気がする。
2024/02/12
Decoy
あまりにも赤裸々で、通勤電車で読んでいてドキドキしてしまったが、ここまで面白おかしく(あるいは露悪的に)書かないと、日本人(の特に男性)のいびつな処女観・セックス観にあてられてしまうのかな…と感じた。内容も文体も好悪が分かれそうであるが、個人的には面白く読めたし、文献調査も含めて、酒井順子しか書けない本だと思った。
2023/10/17