トップに選んだのは無名作家の素人ブログから生まれた作品
この2か月の間に読んだエッセイの評価とランキングです。
意外にも1位と2位はいずれも女性の作品ですが、トップに選んだのは、なんと無名の素人作家によるものです。
最下位にした2作品がいずれも売れっ子人気作家ISさんの著書であるのはもっと意外です。
なお今回の対象は7冊だけですが、たとえ50冊ぐらいの幅に広げても、第1位は変わらないのではないか、と思っています。
第1位(90点)・「イギリス毒舌日記」 ウィルトモ著 ワニブックス
とにかく面白い本で読んでいる間じゅう顔の筋肉がが緩みぱなしでした。
なにが面白いと言えば当意即妙なパンチのきいた大阪弁です。大阪弁に含まれる独特なユーモアをこれほどよく表しているのも他に例がありません。
それに慣れないイギリス生活でのカルチャーショックと闘いながら日々成長していく著者のたくましさは感動ものです。
こんな人が海外へ出れば日本人のステータスが上がること請け合いです。
分厚い本ですが、ページをめくるのが楽しみで、愉快なだけでなく、イギリス人のものの考え方と文化を知るうえでとてもためになる一冊でした。
第2位(70点)・「バブルノタシナミ」 阿川佐和子著
世界文化社
著者は現在63歳だが、この年齢で「好かれキャラ」の人も珍しい。
なかなかの美人だが冷たさがなく、あたたかくて明るい感じがするところが好かれるのでしょうか。
また父親阿川弘之氏ゆずりの知性も大変なもので著書も多く、そちらの方でもファンも少なくないようです。
今回のバブルノタシナミというエッセイ集は、タイトルに難があり、その点がマイナスだが、エッセイ集としては合格点をあげることができます。
今月読んだエッセイ集は、嵐山孝三郎、吉田修一、荒川洋一のものなど併せて4冊ですが、この本がいちばん良かった。
とはいえ特に優れているとは言えず、駄作と言ってもいいような作品もいくつかありました。
読んでいて気づいたのですが、幾星霜という言葉が特に好きなのか、何度も何度も使っていました。
また接続詞として 「でね」 という言葉を使っていましたが、これはユニークで、かわいらしい感じ。
余談ですが、この方、知性的な外見に似ず、Hな話題がお好きなようです。
第3位(65点)・「老いてますます明るい不良」 嵐山孝三郎著 新潮社
エッセイで数々の賞を受賞している著者の作品にしてはやや物足りなさを感じる。
週刊朝日の連載作品だけに、すべて長さが同じで読みやすい。
作家や文学に関するネタでは、内外を問わずその造詣の深さには脱帽するが、総じてエッセイ集としては題材に新鮮味が乏しい。
週刊誌の連載物は締め切りに追われることもあって、執筆時の条件が作品のクオリティに影響し、時としては駄作も生まれるのは仕方ないことなのか?
第4位(50点)・「過去を持つ人」 荒川洋治著 みす ず書房
詩を含めた現代文学の作家と作品論。著者が詩人だからなのか難解な文章が多いが、自らもそれを自覚している。
周りの人から分り難さを指摘されて修正に応じることもあるが、あまりにも修正箇所が多いので最終的に自分の文章がなくなってしまう、と嘆いている。
それにしても難解な文章が多く、読んでいて立ち止まることがしばしば。
詩や純文学は文章が難解で分り難いのがあたりまえ、と割り切って接するのが良いのだろうか。
どのようなわかりにくい文章があるのか、ここでその一例をご紹介します。
誰も通らない道を男に人が歩いてきた。村のおじいさんらしく、「こんばんは」と僕に声をかけてくれた。明治の中ごろから届くようなはっきりした、あたたかい声だった。
第5位(45点)・「作家と一日」 吉田修一著 木楽舎
作家のエッセイはいつも期待して読むが、必ずしも期待通りとはいきません。
著者は数々の賞をとった人気作家で、「パレード」「悪人」など映画化された作品も多い。
しかし、エッセイの方ではまだ名人と呼ぶところまではいっていないようです。
この作品は全日空の機内誌に載せたものをまとめたモノだけに、旅をテーマにした作品が多く
旅行記としては良いかもしれないが、旅先で逢った人物のことについてはあまり書かれていない点が不満。
第6位(35点)「追いかけるな (大人の流儀5)」 伊集院静著 講談社
過去には夏目雅子、現在は篠ひろ子と有名女優を奥さんにしており、この人は持てる男としても名を馳せています。
作家としても人気があり数々の賞も受賞して実力派として認められています。
こんなに名実ともに著名な作家の作品だけに読み手の期待が大きいのは仕方ありません。
しかし期待とは裏腹にこのエッセイ集は魅力に乏しい内容のない作品です。
エッセイの個々のテーマにしてもありふれたものが多く、人を惹きつける要素がありません。
取り上げたテーマがこれまでに書き尽くされたものばかりで新鮮味が乏しいからです。
それもそうかもしれません。著者はこれまでになんと50冊以上ものエッセイ集を出しています。
よく書けたものですが、これだけの量を出せばネタ切れになり内容が乏しくなるのは自明の理です。
要は書きすぎているのです。人気作家としてのステータスを守るためにも「もうこれ以上内容の薄いエッセイ集は出さない方が良いですよ」と、声を大にして言いたい思いです。
第7位(30点)「大人の男の遊び方」 伊集院静著 双葉 社
著者は遊び人と言ってもいいいほどよく遊んでいる人です。
ゴルフ、競馬、競輪、競艇などのあらゆるギャンブル、それに麻雀と、遊びにかけては何でもこい、と言えます。
遊びの楽しさをよく知っている作家が書いたものなら面白いはずです。
しかしこの本には、ゲームのルールとかやり方について書いている部分が多く、堅苦しくて興味をそそられません。
読者が期待するのは遊びの中で展開される人間模様なのですが、それについて書かれている部分があまりありません。
全体的に見てもエッセイとしての面白味のない作品が多く期待外れもいいとこです。
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