2017年、やっと始まった給付型奨学金だが、その枠は極めて小さい
日本の奨学金は欧米諸国などに比べると不備や遅れが目立ち、本来の奨学金の役目をはたしていない、という声が高いようです。
こうした声に応えてか、国はやっと改革に乗り出し2017年度から返済義務のない給付型奨学金を創設しました。
それとともに、これまで貸与枠が少ないと批判の的であった無利子の第1種奨学金の枠を拡大しました。
とはいえ対象になるのは非課税世帯だけで、ターゲットになる当面の人数は最大で2万人程度でしかありません。
これだと、現在大学生の2.6人に1人が利用している奨学金利用者数に比べると微々たる数でしかなく、真の改革とは言えません。
奨学金の何が問題なのか
奨学金はかつては日本育英会という組織が運営しており、無利子のものもあるため、利用する学生が借金というイメージを持ちにくい面があります。
しかし実際には無利子のものの割合は低く,利用者の多くは有利子のものを利用しているのが現状です。
その結果卒業時には数百万円という大きな借金を抱えて社会に出る場合もあります。
ましてや、運営が日本育英からから日本学生支援機構という別の組織が変わった今では、消費者金融などの一般の金融商品の一つとして扱われるようになったため支払いを3ヶ月延滞するとブラックリストに載せられることになります。
その結果上のグラフに見るように、このところ奨学金をめぐる訴訟はjうなぎのぼりで増えています。
でも、奨学金という、いわば聖域と言ってもいい領域になぜ消費者金融まがいのブラックリストが入り込んできたのでしょうか。
ズバリ、それは第2種の奨学金は民間の資金が利用されており、利息で運用する金融商品として扱われるようになったからです。
金融商品である以上、扱いは消費者金融などと同等になるのです。
このようになったのも、もとをただせば奨学金に次のような問題があるからです。
第1種(無利子)奨学金の枠が小さすぎる
奨学金には第1種(無利子)と第2種(有利子)があります。
当然の如く利用希望者の多くは第1種を望みます。ところが申し込み基準が厳しく、申請しても親の所得制限や本人の学業成績などで通るのは4人に1人しかいないと言われています。
なぜこれほど厳しいかと言えば、第1種の予算が限られているからです。
つまり第1種の無利子奨学金は第2種(有利子)に比べて予算枠が極めて小さいからなのです。
窓口になるのが高校の先生ということに無理がある
はっきり言って奨学金は借金です。普通、借金は銀行や消費者金融などの窓口で行います。
ところが奨学金はどうでしょう。同じ借金でも窓口はまったく異なり、通っている高校の良く知っている教師が相談窓口になるのです。
ここに奨学金に対する誤解や申し込みに甘さが生まれる決定的な原因があるのではないでしょうか。
なぜなら、学校の先生が勧めるのだから安心して利用できる、という考えが強く働き、単に学資を融通してもらうだけ、と捉え、借金をする、という認識が生まれないからです。
それも無理からぬことです。教師としては、生徒を進学させたい一心でしょうから、たとえ卒業後に何百万円の負債を抱えるのが現実であっても
そうした負の部分については教師自身がはっきりしたイメージを抱けないため、生徒に説明することは不可能に近いのです。
教師にできるのはせいぜい奨学金の利用限度額と申込手順程度でしかなく、奨学金の危険性などの説明に及ぶことはないのが普通なのです。
奨学金は借金、という認識が足らない
奨学金を受けようとする学生はまだ高校3年生の17~18歳でしかありません。
はっきり言えば社会のことを全く知らない子どもなのです。
そんな子どもに奨学金の現実がわかるわけがありません。
そんな子どもに奨学金の現実がわかるわけがありません。
いかに卒業時に数百万円の負債を抱えることになるとはいえ、社会経験のない彼等にはそうした実感は到底持つことができないのです。
したがって将来奨学金トラブルに陥らないためには、なんとしても「奨学金は借金である」と教え、借金というものがどういうものであるかを認識できるように、教え込まなければいけません。
審査が甘く、延滞が増えるはあたりまえ?
人が金融機関でお金を借りるときのことを考えてみてください。
お金を借りるには、まず審査を当らなければなりません。
審査では、勤務先、勤続年数、年収、住居の種類、借金総額、などを問われます。
それら融資基準にパスしたとき融資が行われ、基準に合わなければ融資は断られます。
ところが奨学金はどいうでしょうか。
卒業時までに数百万という大きな額の借金にもかかわらず、一般人が金融機関で融資を申し込む時のような審査はなく
保証人こそ要求されますが、当然のこととはいえ、本人にについての審査は何もないのです。
融資には返済リスクがj伴いますが、そのの歯止めになる融資前の審査なのですが、学生にはそれが成り立たないからです。
ということは無審査で融資しているのと同じですから、延滞が多くなるのはなんのい不思議もありません。
奨学金だから、という甘えもある
人はともすれば甘えに傾き安いものです。それ故に奨学金という名の審査の甘い借金に対しては、容易に甘え心が生じます。
つまり学業のために厳しい審査もなく融通してもらった奨学金だから、少しぐらい支払いが滞ってもどうってことないだろう、という甘い考えが生じるのです。
奨学金だから、という考えは、お金の問題とはいえ教育に関わることだからビジネス関連の融資のような厳しい取り立てはないだろう、という考えに繋がるのです。
でも以前はともかく、今ではこの考えは通用しません。
例え奨学金とはいえ、利子のつく第2種奨学金は消費者金融などと同じように金融商品と見なされるのです。
ですから扱いも一般の金融と同じになり延滞が続くとブラックリスに載せられることになるのです。
参考文献 : 奨学金地獄
岩重佳治著 小学館新書
0 件のコメント:
コメントを投稿