古い読書記録を見てわかったこと
読んだ本は記録に残すことをモットーとしてきましたが、長い年月の間には時としてそれを怠る時期がありました。
要するに読後の感想を書くことを怠り読書記録が一定期間途切れるのです。
その期間は長いときは5年もの長期に及ぶこともあります。したがって読書記録だけ見て過去の読書量を正確に測ることはできません。
とはいえ読書そのものが途切れることはなかったと思われますから、どの程度の量を読んだかは常日頃の読書量から類推することはできます。
でもどような本を読んだかについては類推は困難です。なぜなら時代と年齢によって読む本の質は異なってくるからです。
どのように異なってくるかは、なかなか興味深いところです。その一端を知るために、今から30年ぐらい前の読書記録を調べてそのころ読んだ本の傾向を眺めてみることにしました。
30~40年ぐらい前の読書傾向はどうだったのか
いつの間にか平成から令和へと変わってしまいましたが、手元に今から40年ぐらい前の1978~1985年の読書記録があります。年齢でいえば38~45歳に当たります。
この頃の読書量はというと、月によって異なりますが多いときは15冊にも及ぶ月がありますから明らかに今の月平均6~8冊より多いようです。
では内容のほうはどうかというと、小説が極端に少ない今と比べて、全体の3分の1は小説が占めており、明らかに比重は高かったようです。
それに今と異なる点は読書記録を丹念に書いている点です。今のほんの触り程度に対して、内容や作者についてかなり突っ込んで書いているものもあるようです。
ここでそうしたものの中から1点だけ選んでご紹介することにします。
《昭和54年の読書記録》
書 名
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著者名
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出版社名
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発行年月
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価格
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購入先名
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読了日
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くるいきちがい考
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なだいなだ
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筑摩書房
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S53/12月
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980円
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紀伊国屋書店
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S54/1/1
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(感想)いわゆる精神病をテーマとしたこの種の本は、以前の斉藤茂太著「精神科待合室」に続いて2冊目である。こうしたテーマの本が比較的興味深く読めるのはたぶん個人的事情によるものであろう。
読み終えるのに5日も要したが、たまたま時間が取れなかっただけで、別に興味がわかなかったり,読みづらかった訳ではない。それどころか最後まで非常に興味深く読み進めることができ、このジャンルの本をもっと読みたい、という気になった。精神病という病気は、いわゆる「世間一般の常識」から逸脱することから始まるのだが、著者はその世間一般の常識というものに対して鋭い目を向けており、読者に対して「いったい常識とは何か?」「非常識とは何か?」を激しく問いかけている。狂っているのは果たして誰か? マスコミは来るっていないのか? 日本の国そのものは狂っていないのか?などと激しく問題を提起しているのだ。
(この本で学んだこと)
※ 常識のうち、ある部分は時代とともに変わるということ。例えば戦時下のことを考えればそれがよくわかる。
※ ストレスは現代人だけが特に強く持つものではなく、例えば裸に近い姿で野宿を続けた原始人は、外敵に襲われるかもしれないという強いストレスを常に感じていたのではなかろうか。
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本は読んだ後内容を振り返り感想を書いてこそ価値があるのですが、この記録ではさらに「この本で学んだこと」を明確にすることによって、読書の価値をいっそう高めている点に価値があるように思います。
なお、この年代(年台)に読んだものには次のような作品があります。
・「鈍牛待望論・大平正芳の血と涙」大隈秀夫著 白川書院
・「日本亭主図鑑」 井上ひさし著 新潮文庫
・「永田町・・・ 」 柿沢こうじ著 学陽書房
・「人間と金」 デビットクン著 毎日新聞社
・「65万人・在日朝鮮人」 宮田浩人著 すずさわ書店
・「島国と日本人」 篠田雄二郎著 光文社(KB)
・「男の切り札」 政次満幸著 PHP出版
・「人間と肌」 デビッドクン著 毎日出版社
・「国際感覚を豊かにする本」湯澤三郎著 日本実業出版
・「小説電通」 大下英二著 文庫版
・「暗い青春・魔の退屈」 坂口安吾著 文庫版
・「相場師」 清水一行著 文庫版
・「商 戦」 三好徹著 文庫版
・「ニュービジネス新時代」 野村総研 同
・「サイゴンから来た妻と娘」 近藤紘一 文庫版
・「中年族の反乱」 田原総一郎 文庫版
・「午後のヴェランダ」 渡辺淳一 文庫版
・「おもしろ勉強読本」 森 毅 PHP研究所
・「天下りの商法」 藤田 田 ワニ新書
・「おんなの世渡り」 上坂冬子 文庫版
Etc.
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