刑務所の中庭(ゴッホ作)
文芸春秋6月号の巻頭グラビアを見ていると突然この変わった絵が出てきました。
いかがですか、見た瞬間何かぐっと身に迫ってくるものを感じませんか?いったい何が迫ってくるのでしょうか。
これは多くの囚人たち歩いている絵です。でも歩いているのは外ではなく刑務所の中に設けられた運動をするための場所です。
監獄にある屋内の狭い場所をグルグル回っているだけなのです。囚人たちは窮屈でたまらないのをがまんして黙々と歩いているのです。
そうなのです。そうした囚人たちが感じているどうしようもないような閉塞感がこの絵にいっぱい立ち込めているのです。
それがエネルギーになって見る人に鬼気迫るような迫力を感じさせるのではないでしょうか。
解説はこんなことを伝えている
ここはロンドンでもっとも古く、また最も悪名高き、ニューゲート監獄(取り壊されて今はない)。
設備も衛生環境も囚人の待遇も劣悪の極みというだけでなく、死刑囚の数が多い上に入獄から死刑執行までの期間が極端に短くて恐れられたのだーーーーーーーーーーー。
これはとうてい想像だけで描ける情景ではない。じつはこれは模写なのである。
実際に監獄を案内してもらい、拷問器具や死刑室を見て陰惨な雰囲気を味わい、薄暗い中庭で整列して歩き続ける囚人らの姿を観察しスケッチしたのだ。
(出典・文芸春秋2019年6月号)
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