藤沢修平は著書であるエッセイ集「周平独言」で、好きな作家と作品について次ののように書いています。
好きな作家を挙げろと言われると、いつも当惑する。だらしなくとり散らかしている楽屋裏を公開しろと言われているような、気恥ずかしい気分になる。私にとっては大切なものだが、他人からはつまらなく見えるかもしれない。そんな隠し持った玩具を見せろと言われたような気分でもある。
が、この際キザを承知で好きな作家を挙げれば。シュトルム、カロッサ、チェホフであり、水上滝太郎、神西清である。一体に私は一人の作家に傾倒するということが少なく、作品に執する方である。挙げた作家の中でもほとんど全作品を読んだかと思うのはシュトルム、カロッサだけであり、あとはチェホフなら戯曲と中編の「谷間」、水上滝太郎なら「大坂の宿」。神西清なら「恢復期」という離れがたい作品があって、それで好きだということになる。そういう意味では、ウジューヌ・ダビの「北ホテル」も落とすわけには行かないようだ。
(注)水上滝太郎(みながみたきたろう)
神西 清 (じんざいきよし)
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藤沢周平が好きな作家と作品について
・水上滝太郎「大坂の宿」
水上 瀧太郎(みなかみ たきたろう、1887年12月6日 - 1940年3月23日)は日本の小説家、評論家、劇作家、実業家。本名阿部章蔵。「三田文学」発表の「山の手の子」で出発。明治生命保険会社専務、大阪毎日新聞社取締役で長く実業と文学を両立した。強い道義性と文明批評性に特色がある。第2次「三田文学」復刊後は同誌の精神的主幹と呼ばれた。
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大坂の宿【内容情報】(「BOOK」データベースより)
保険会社に勤務する著者は実業家として活躍する一方三田派の中心メンバーとして文筆活動を続けた。大阪勤務時代に材を取った本書は、江戸っ子会社員を主人公に下宿先の旅館酔月の女将、下働きの女たち、新聞記者、芸者お葉…等々の人間模様を織り込み潔癖性で正義感の強い東京山の手育ちの主人公が見聞する大阪の世相、風俗、気質等を巧みに描いた傑作長篇小説。
(注)大坂の宿は青空文庫に収録
・神西清「恢復期 」
神西 清(じんざい きよし、1903年11月15日 - 1957年3月11日)は、日本のロシア文学者、翻訳家、小説家、文芸評論家。 ウィキペディア
(注)恢復期は青空文庫に収録
・チェホフ 「谷間」
アントン・パーヴロヴィチ・チェーホフ(ロシア語:Анто́н Па́влович Че́хов:アントーン・パーヴラヴィチ・チェーハフ/ラテン文字(英文表記)Anton Pavlovich Chekhov、1860年1月29日・タガンログ - 1904年7月15日・バーデンワイラー)は、ロシアを代表する劇作家であり、多くの優れた短編を遺した小説家。
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「谷間」はチェーホフ後期の名作で、私が学生時代読んだとき身震いするような感動を覚えた作品です。その後年とともに感動するようなことが少なくなりましたが、「谷間」はチェーホフの作品でも最も好きな作品です。文庫版の「チェーホフ全集」の訳者の松下裕氏が「チェーホフの光と影」で「谷間」を採りあげておられますので参考にしながら
読み進めたいと思います。 出典:チェーホフ文学の現代的意義
・シュトルム
テオドール・シュトルム(Hans Theodor Woldsen Storm、1817年9月14日-1888年7月4日)は、ドイツの法律家、作家。代表作に『みずうみ』『白馬の騎手』など。ドイツ文学における詩的リアリズム(市民的リアリズム)を代表する作家の一人。 ウィキペディア
・カロッサ
ハンス・カロッサ(Hans Carossa,(1878年12月15日 - 1956年9月12日))はドイツの開業医、小説家、詩人。謙虚でカトリック的な作風であった。ウィキペディア
・ウジェーヌ・ダビ 「北ホテル」
英語から翻訳-ユージーン・ダビットはフランスの社会主義作家でした。 彼はグループ「プロレタリア文学」の一部であり、彼の小説L'Hôteldu Nordで大成功を収めました。これは、1938年にMarcelCarnéによって撮影され、du Prix du roman populisteで優勝しました。 ウィキペディア
北ホテル(きたホテル)
- 北ホテル (小説) - フランスの小説家ウジェーヌ・ダビによる1929年の小説作品。
- 北ホテル (映画) - マルセル・カルネ監督による1938年のフランス映画『Hôtel du Nord』の邦題。上記の小説が原作。
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