30代半ば頃のことだが
Kとは30代半ばに職場で知り合った。そのころ働いていた書籍販売会社で、彼は東大阪営業所の所長、わたしは大阪福島営業所所長をしていた。
お互いが30代半ばという比較的若い年齢で「営業所所長」というポストにつけたのは、会社の歴史が浅く人材不足のおかげがあったのかもしれない。
でも、歴史が浅い会社とはいえ、社長が東大卒で優秀だったからなのか、会社は急成長を遂げて、年商350億円を達成したこともあり、成長著しい企業として日本経済新聞で大きく取り上げられることもあったのだ。
この会社は地区に多くの営業所があったため、月1回ブロックの所長会議が開催され、Kとはその場で会っていたのだ。
彼は会議の場でよく目立っていた。というのは15人ぐらいいたメンバーの中で際立ってハンサムで見た目がとても良かったからだ。
それだけに後の雑談の席で彼の口から出た「パンツにまつわる話」には驚かされた。
「ぼくが脱いだパンツを嫁さんが箸でつかんで洗濯機へ」とKは言った
ある日、所長会議後の雑談の席で、何かの拍子で洗濯物の話になったとき、Kが唐突に「うちの嫁さんは僕の脱いだパンツを割りばしでつかんで洗濯機へ入れる」と言ったのだ。
まさかこんなセリフが彼の口から出ることは想像もできなかった。
先に書いたように、彼は同性でも引き付けられるようなハンサムな容姿をしており、誰もが「さぞかし女性にもてるだろう」と、羨望のまなざしで見ていたのだ。
そんな彼なら当然「奥さん」からも愛されていたのでは、と思われるのである。
なのに彼の口からは、そうした推測とは真逆の言葉が出てきたのだから、誰もが驚かないはずはない。
パンツを箸で掴まれるのは嫌われている証拠?
確かに脱いだパンツは、汚らしく不潔に見えるものだ。だがそれが愛する人のものなら別だろう。女性にもてそうなハンサムな彼のこと、きっと奥さんからも愛されていたに違いない。
でもそんな奥さんなら、彼が脱いだパンツを箸でつまんで洗濯機に入れるだろうか。
しかし彼は確かに言ったのだ。「嫁さんが僕のパンツを箸でつかんで・・・」と。
ひょっとして、これは「ぼくと嫁さんは仲が良くない」ということを暗に知らせたかったのだろうか。
仲が良くないを言い換えれば、嫌われているということではないのか。嫌いな相手のパンツなら、汚らしく感じるのは当然で、「箸でつまんで洗濯機へ」が、よく理解できるではないか。
Kの奥さんは小学校の教師だったのだが
聞くところによると、彼の奥さんは小学校の教師だという。
Kや私たちの職場である書籍販売会社の顧客には学校の教師が多かった。多分仕事で訪れた小学校で奥さんと知り合ったに違いない。
ということなら、彼のパンツを箸で掴んで洗濯機に入れたのは小学校の先生ということになるではないか。
「小学校の女性教師、主人のパンツ、箸でつまんで洗濯機へ」3つが関連するこんな構図を思い浮かべると、なんとなくおかしい、とそのとき思ったのは不謹慎であっただろうか。
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