人は誰でも歳をとると昔のことをよく思い出しますが、私にとってもっとも多いのは家族の思い出です。
中でもことさら愛おしく蘇るのは在りし日の母の姿です。
ここでは壮年期に私が母からもらった数十通の手紙から十数点をご紹介しながら、当時を振り返ってみることにします。
(シリーズ3)
母の手紙(その6)
(文面)
すっかり陽春の候となりました。
先日はいろいろありがとうございました。
長い冬を閉じこもっていましたが、外に出るということはやはりいいことですね。
これからも務めて外に出て歩こうと思って居ります。
健康茶毎日呑んでいますよ。スプーン五杯にカップ五杯沸かしてお茶代わりに呑んでいます。全部飲み終わった時、どの位の効果があったか解りますね。
健康には規則正しい食事が一番のようですよ、あなたも食事には充分気をつけて毎日を過ごしてください。
優子(注)が写真をたくさん撮ってくれました。いい記念になりました。
一年一年歳は取ってゆきますが、健康に暮らしたいといつも思って居ります。
三日前の新聞の切り抜きを入れておきます。この言葉はあなたは共鳴するかも解らないと思いましたが、私にはピンときたものですから。
時候の変わり目ですから、風邪をひかない様元気にお暮しください。
この手紙を受け取ったころ
先日はありがとうございました、とありますが、何のことか思い出せません。
また健康茶のことを書いていますが、こちらの方ははっきり覚えています。
これは姫路市でフランチャイズの児童英語教室を始める前に神戸市でとある経営コンサルタント会社に勤めていました。
比較的勤め先を転々とした私が5番目ぐらいに入った会社だと思います。
その会社の得意先に「タヒボ」というブラジル産の健康茶を扱う会社があり、そこのセールス戦略策定のお手伝いをしたことがあります。
その時試供品としてもらったのがこのお茶で、それをは母に送ったのですが、試飲の様子を書いてきたのです。
今でもその会社はありますが、経営者は代わり、現在は小説のモデルにもなった有名な相場師の方が社長になっているようです。
母の手紙(その8-1)
(文面)
やっと待望の秋が来ましたね。
今日の岡山の気温は26゜です。ほっとした気持ちです。朝から衣類の入れ替えをしました。
先日は私の好きな羊かんとおいしいケーキを送って下さってありがとうございました。
仲良しのお友達にも少し分けて分けてあげて毎日お茶の時間に楽しんでいます。
あなたにも長い間逢っていませんし、電話では余り長い話はできませできませんが、筆不精ばかりしている私も今日は気分につられて一寸ペンを取る気持ちになりました。
さて書き出してみましても何を書いてよいやらペンは進みません。
私の日常は朝六時に起きて先ず一服 そして一日の幸あれとトランプ占いをします(そのトランプはあなたが学校を出て社会に社会に出た時の最初のプレゼントでした)。
この手紙を受け取ったころ
文面に書かれていることはほとんど忘れていますが、私が社会へ出て母への初めてのプレゼントがトランプカードだったとは驚きです。
今となってはもっとましなものはなかったのかと悔やまれます。
プレゼントで覚えているのは二人で能登半島へ旅行したことです。こちらの方は、旅館での様子や輪島朝市めぐりなど、今でもよく覚えています。