1か月半続いたこのシリーズも本日が最終回になりました。
母は2010年12月27日に亡くなりました。享年99歳で100歳の一歩手前でした。
その年の10月、姫路夢前温泉のホテルで、親族30名ほどが集まって《大平雪野の白寿をお祝いするパーティ》を催したのですが
亡くなったのはその2か月後のことで、なんというタイミングの良い、見事な人生の締めくくりでしょうか。
シリーズ5
母の手紙(新9)
(文面)
残暑厳しいですね。
先日加古川では貴方の元気な顔を見て安心いたしました。
今日(二十七日)書留届きました。
貴方も不如意な処、私への心配りありがとうございました。
何か一寸買物でもして気分転換し様と思います。
暑さももう少しの辛抱と思います。
身体に気をつけて頑張ってください。
朝を制する者は一日を制す。
先ずは御礼まで。
(手紙を受け取ったころ)
高齢の母は一時身体の不調が長引いて自活困難になり、加古川の長女(私の姉)の家に滞在していましたが、その頃くれた葉書です。
「書留受け取りました」と書かれていますが、何だったのか全く覚えていません。
「貴方も不如意な処」と、母は私の懐事情の良くないのを察しており、たいした金額でなかったとは言え、かえって心配をかけたかもしれません。
加古川滞在はそれほど長くはなく、その後体調が回復し、また岡山での一人暮らしに戻ったようです。
母の手紙(新10)
(文面)
入るを計り 出ずるを制す
幾つになっても年齢が体型に出ない人
人より秀でるには個性 セールスポイントを持つことが必要
強がれど晩夏に渡る老の身は ゆきの
健康に気をつけて 思慮分別をもって毎日を過ごしてください
庸夫様 雪野
(手紙を受け取ったころ)
冒頭の「入るを計り出ずるを制す」の言葉がずしッと胸に響きます。
ホテルマンをやめてから、幾つかの職を転々とした時期があった私は、懐事情の悪い時が少なくありませんでした。にもかかわらず金遣いが下手で無駄な出費が多く、一時は少なからず借金を抱えていました。そのことに対して母は気をもんでおり、そうした思いがふと出たのではないでしょうか。
(このシリーズ 終り)