2025年2月20日木曜日

母の手紙(シリーズ1~5)シリーズ5


1か月半続いたこのシリーズも本日が最終回になりました。

母は2010年12月27日に亡くなりました。享年99歳で100歳の一歩手前でした。


その年の10月、姫路夢前温泉のホテルで、親族30名ほどが集まって《大平雪野の白寿をお祝いするパーティ》を催したのですが


亡くなったのはその2か月後のことで、なんというタイミングの良い、見事な人生の締めくくりでしょうか。



シリーズ5


母の手紙(新9)




(文面)


暑厳しいですね。

先日加古川では貴方の元気な顔を見て安心いたしました。

今日(二十七日)書留届きました。

貴方も不如意な処、私への心配りありがとうございました。

何か一寸買物でもして気分転換し様と思います。

暑さももう少しの辛抱と思います。

身体に気をつけて頑張ってください。

朝を制する者は一日を制す。

先ずは御礼まで。



(手紙を受け取ったころ)


高齢の母は一時身体の不調が長引いて自活困難になり、加古川の長女(私の姉)の家に滞在していましたが、その頃くれた葉書です。

「書留受け取りました」と書かれていますが、何だったのか全く覚えていません。

「貴方も不如意な処」と、母は私の懐事情の良くないのを察しており、たいした金額でなかったとは言え、かえって心配をかけたかもしれません。

加古川滞在はそれほど長くはなく、その後体調が回復し、また岡山での一人暮らしに戻ったようです。



母の手紙(新10)



(文面)


入るを計り 出ずるを制す


幾つになっても年齢が体型に出ない人


人より秀でるには個性 セールスポイントを持つことが必要


強がれど晩夏に渡る老の身は   ゆきの


健康に気をつけて 思慮分別をもって毎日を過ごしてください


             庸夫様      雪野 



(手紙を受け取ったころ)


冒頭の「入るを計り出ずるを制す」の言葉がずしッと胸に響きます。

ホテルマンをやめてから、幾つかの職を転々とした時期があった私は、懐事情の悪い時が少なくありませんでした。にもかかわらず金遣いが下手で無駄な出費が多く、一時は少なからず借金を抱えていました。そのことに対して母は気をもんでおり、そうした思いがふと出たのではないでしょうか。



(このシリーズ 終り)