2026年7月29日水曜日

今月読んだ本2冊のご紹介

 

男のリズム」池波正太郎 角川書店



エッセイとしては珍しく、記録調(日記風)で書かれている。したがって読んでいて、これまで読んできたこの著者のエッセイ集(10冊程度)のような楽しさ、面白さは感じないが、内容には味があり印象に残ることが多々記されている。

小学校を卒業して上の学校には進まず、早くして社会に出たこの作者にとって、世の中がすべて学びの対象になったことがよく書かれており、中でも十代半ばから頻繁に映画館に通い、その頃上映された映画を見漁ったことで、脚本書きに目覚めたことがよく理解できる。

また同じ頃ロシアの文豪、ドストエフスキーやトルストイの難解な作品も読み下しているところはさすがである。こうした文学の経験を積んで読売新聞主催の脚本コンテストに応募して佳作になったのをきっかけに脚本家の道を目指したのが、作家池波正太郎の原点なのだ。


(内容説明)

東京の下町に生まれ育ち、仕事に旅に、衣食に遊びに、生きてゆくことの喜びを求めてやまぬ池波正太郎の名エッセイ。友人、知人、思い出の人々、生起するさまざまな出来事を温かく、生き生きと描いて興趣つきない滋味たっぷりの一冊!人は変わり、世は移るとも、これだけは絶対に変わらぬ男の生き方を綴った必読の十二章。

(目 次)

劇場

食べる
着る
散歩
映画
最後の目標
26年前のノート
家族
私の一日

著者等紹介

池波正太郎[イケナミショウタロウ]
1923年東京浅草生まれ。下谷西町小学校卒業後、株式仲買店に勤め、海軍入隊。戦後、都職員から長谷川伸門下生となり新国劇の脚本と小説を発表。60年「錯乱」で直木賞受賞。「鬼平犯科帳」「剣客商売」「仕掛人・藤枝梅安」の三シリーズで時代小説の第一人者となる。吉川英治文学賞受賞。90年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

出典:紀伊国屋ウェブ



「愛と忘却の日々」 燃え殻 新潮社




先月読んだ「夢に迷ってタクシー呼んだ」と「これはいつかのあなたと私」に続いて3冊目である。

なにかクセなったようにこの著者の作品を読み続けているが、正直言っていまだにこの作家のことをよく理解できていない。

前にも書いたが、読み始めたきっかけは「ベストエッセイ2024」で紹介された「おっぱい足りてる?」を好印象を持ったからだ。でもあの作品の印象が強烈だっただけに、その後読んだエッセイ集の作品は、2〜3点を除いて、いずれをとってもそれほどすぐれた作品は見当たらない。それどころか、この作家の先行き不安を感じる点が多いのだ。その多くは次の点についてである。


今売れている人気作家だが、今後長続きできる力量はあるのかは、はなはだ疑問である。

こう感じるのはエッセイのテーマに日常で身辺に起った細かいこと(例えば行った店(飲食店)で働く人たちこと、そこで会った人(客)たちの、どうでもいいような細々したことなど、他の作家なら無視するような微細なことまでネタとして取り上げているからだ。

こうした様子から、テーマ探しに相当苦労していることがよくわかるのだ。

にもかかわらず、人気をいいことに安請け合いで次々と仕事を引き受けており、そのため絶えず〆切に苦しめられている。

この作家はいま「編集者におだてられたり、責められたりしながら、無理やりに作品を書かされているのではないか」ということを痛いほど感じる。

この調子では疲弊するのがはやく、人気作家として長続きすることは無理なのではないだろうか。



というふうに思うのだが、もし方向性が間違っているとすれば、新人としての自分の力量を顧みず、安請け合いでひたすら仕事量を増やし続けていることに問題があることが明らかだ。



出版社内容情報

「ロマンチックなことが少なすぎるんだよ」 中毒者、ますます増殖中。六本木の路上で「おっぱい、足りてる?」とキャッチに声をかけられ、「足りてないけど、余裕がないんです」とテンパっていた夜。小学生の頃、ひどいイジメに遭い、「死にたい」と母に泣きつき、包丁を畳みに突き刺して言われたひと言。「ベスト・エッセイ」(日本文藝家協会編)選出作を収録、読者渇望の大人気エッセイ集。

内容説明

「ベスト・エッセイ2024(日本文藝家協会編纂)」収録。週刊新潮、大人気エッセイ集。

目次

余裕がないのだ。夢中なのだ。
頑なに働かない友人
結局、彼女は畳に告白した
「おっぱい、足りてる?」
いやらしくて美しい瞬間
「ラムちゃん、ひと筋でいく」
渋谷路上飲み狂騒曲
「寝るときは、これじゃないと」
「無駄太郎」の時代は終った
「おい、まだ帰らないのか?」
「ああ、帰りたい」
「ねー、もう寝た?」
特殊な経験をしているわたし
「エッチ妄想の交換日記をしませんか?」
相談相手は主にジョン
増し増しな人
「お客さま、ピットイ~ン!!」
「お客さん、TBSの『ラヴィット!』に出てますよね?」
「俺のファンはどう思うかな?」
はにかみながら「ほら、盗聴器!」〔ほか〕

著者等紹介

燃え殻[モエガラ]
1973年生まれ。2017年『ボクたちはみんな大人になれなかった』で小説家デビュー。同作はNetflixで映画化(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

出典:紀伊国屋ウェブ