2010年8月3日火曜日

若者はコンプレックスをトラウマとかん違いしてはいないか?

サイコバブルとか言って、心的な病をなにかとあげつらう風潮のある今の世にあって、若者が好んで使うものの一つに「トラウマ」という言葉がある。

先日も夜のテレビニュースの頭髪治療をテーマにしたトピックスで薄毛に悩む若者がインタビューに応えて言っていた。

「今回の薄毛対策の治療を受けて以来、もうトラウマはなくなりました」

それを聞いた当方は少なからず違和感を覚えた。

以前から思っていたのだが、今の若者はこのトラウマという言葉を安易に使いすぎるきらいがある。

はたした当人たちはこのカタカナ言葉の意味をはっきり理解した上で使っているのであろうか。

いや、その安易な使い方からして決してそうと思えない。

ニュアンスからしてどうやら彼らはこのトラウマをコンプレックスという言葉と同列の意味で使っているのではないだろうか。

コンプレックス、つまり劣等感というような意味なのだが、単にその言葉を使って言い表したいことを、やや新鮮な響きのあるトラウマという言葉に言い換えているだけではないのだろうか。

彼らとしては、ただ流行に乗って使っているだけで、トラウマの言葉としての真の意味などは考えることはないのである。

こうした若者にぜひ知っておいてほしい。

トラウマとはコンプレックスのように、何かと対比して初めて気づかされるような劣等感情を表す言葉ではなく、過去に於いての心を傷つけられるような悪い経験によって押しつけられた精神的外傷のことを指して言うのである。

したがって冒頭の若者のように、「薄毛対策治療を受けてからもうトラウマはなくなりました」というのは、明らかに言葉の誤用であると思われる。

もしそうでなく、真の意味でのトラウマという言葉として使うのなら、この若者は前々からその薄毛について、人からからかわれたり非難されたりしていて、そのために傷ついていた、などというような理由を前もって挙げておき、それがトラウマになっていると説明しておかねばならないのである。

たとえ若者と言え、流行に乗った安易な言葉の誤用は避けたいものである。

それを防ぐ意味でも、英語を置き換えたカタカナ言葉をかっこいいと考えて安易に使う場合に、えてしてこうしたミスが起こり易いということも併せて覚えておいて欲しい。

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