8月18日のその日はちょうどその開催日に当たっており、帰り道にすぐ側を通ることもあって、興味半分でさっそく寄ってみることにした。
午後3時過ぎ、そのデパートに着き、8階の催し場に行って最初に目にしたのは、仰々しく仕切り幕が張られ、進行順路が指定された特設会場の入り口に列をつくった驚くほど多くの人の群れであった。
以前からある程度人気のある催しものではあるとは思っていたが、ことさら目新しいものでもなく、いまだにこれほどの人を集める魅力ある催しだとは思っていなかったので、その人込みには少なからず驚かされた。
しかしもっと驚いたのは特設会場の中に入ってからであった。
はっきり言って会場に入る前まで頭にあったのは、今時の忘れ物市とは、いったいどんな魅力的な商品がどれほどのお買得な値段で陳列されているのだろうという興味と期待感であった。
しかしそれは見事裏切られたのだ。
まず会場に入って一番手前の売り場は、かなり広い面積で「雨傘」の売り場が占めていた。
今時、百円ショップでさえ、かなり良い品物を取り揃えている「雨傘」なのに、なにゆえ一流デパートが、中古の雨傘にこれだけ広いスペースを割かなければいけないのだろうかと大いに疑問を抱きながらもそこは素通りして進んでいった。
その先にある売り場を確かめる為に上に掲げたプラカードに目をやってみた。
すると「毛皮」「宝石」「時計」「ゲーム機」等の文字が目に入ったきたが、当方が期待していたパソコンとカメラなどの売り場を示すプラカードはどこにも無かった。
一般的にカメラは忘れ物の中では多いものだし、それにいまや車内でパソコンを操っている人も珍しくない時代で、この忘れものもあっておかしくないと思ったのだが、しかしどこにもそれらの商品の売り場を見つけることはできなかったのである。
もっともカメラについては、デジタルカメラだけが時計売り場の近くに陳列されていたのだが、その値段はほとんどが1万円以上のモノばかりで、側を通る女性客が「なんなのよこの値段、ぜんぜん安くないじゃない、これ本当に忘れ物なの?」と呟いていたように、その価格は忘れ物ゆえの低価格とはとうてい言えず、値段的になんら客をひきつける要素は無いのである。
そんな疑問と同時にさらに湧いてきた別の疑問は、時計売り場の近くにあった毛皮売場とか宝石売場がどうしてこんなに広いのかということであった。
はたしてこの売場に陳列されたこれらの品物は本当に忘れ物であるのであろうか。
高級品である毛皮のコートとか、宝石類の忘れ物がこんなにたくさんあるものだろうか。
ひょっとして、これは忘れ物に名をかりた便乗商法なのではないのだろうか。
でも便乗商法ならそれはそれでいいとしても、売場をちゃんと区切っておき、それとわかる標識もきっちりつけておかなければならない。
もしそうしていないのなら、単に「忘れ物市」の名を語った一種の「かたり商法」であると言ってもいいのではないだろうか。
年々売上の落ち込む先細りのデパート業界だが、その失地回復のため、いまやなりふり構わず、客を欺くこうした商法を堂々と繰り広げているとしたら、これは大きな問題であるのではなかろうか。
以上が「忘れ物市」に出向いときに抱いた素朴な疑問である。
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