2018年3月3日土曜日

犯罪のカモになりやすい日本人ツアー客 ・ 懐かしのニューヨーク職場日誌(5)


日本人客をめぐるトラブル処理も仕事のうち


私の勤めていたNYのホテルには日本人ツアー客がよく泊まります。

日によって違いますが、平均しても全宿泊客の5%程度は下らなかったようです。

5%と言えば全体の20分の1でしかありませんが、部屋数が2,000もありますから数に直せは100室を日本人が利用していることになります。

これが毎日となると10日で1,000室、1ヶ月だと3,000室になり、これだけの数だと外国人宿泊客としても上位にランクされます。

連日これほどの数の日本人客が訪れてくると、予期しない問題やトラブルが起きることも間々あります。

そうしたトラブルの処理に当たるのもわたしの職務の一つです。なぜなら日本人客のために、言葉が分かるスタッフとして雇われていたからです。

いろいろあるトラブルの中で、今回はある日本人ツアー客が、コールガールに騙されたことについて書いてみることにします。

日本人ツアー客がコールガールに騙された


ある日、ホテルの副支配人マッコイさんから突然電話連絡が入りました。要件は、昨夜日本人男性ツアー客の一人が、コールガールの被害に遭ったので、部屋へ行って事情を聞いてほしい、というものでした。

それを聞いて、私は一瞬、またか!と思いました。なぜならつい2ヶ月ほど前にも同じようなことが立て続けに2件あったからです。

何はともあれ、私は部屋へ出向いて被害者の話を聞くことにしました。

NYのコールガールはカモを求めてホテルのドアをノックする


日本の中部地方から「ニューヨークとナイアガラを巡るツアー」に参加してやってきたという50年配の男性の話によると、コールガールの手口は前回2件のケースとまったく同じでした。

夜の12時ごろ、部屋でウィスキーの水割りを飲んで気分が良くなっていた時、ドアをノックする音が聞こえたそうです。

ニューヨークは事件の多い物騒な街だと聞いていましたから、普通なら不用意にドアを開けたりはしないのですが、なにぶんウィスキーがまわって凄く気分が良かったので、ついドアを開けてしまったのです。

ドアの外には胸を大きく肌けた背の高い30年配の白人女性が「ハーイ」と言いながら満面の笑顔で立っていました。

酔っていた男性はハーイと機嫌よく応えながら理由がよくわからないまま、その女性を部屋に招き入れてしまったのです。


酔った勢いでコールガールを部屋へ入れてしまったが


コールガールと知ってか知らずか、酔った勢いで女性を部屋に入れてしまった男性は、その後のことはうろ覚えでよく覚えていません。

思いがけず目の前に魅力的な白人女性が現れたことに有頂天になっていたのです。

それからは女性にもウィスキーを勧め、自分もジャンジャン飲んでいまいたが、しばらくすると睡魔が押し寄せてきて、いつの間にか寝てしまっていたのです。

ウィスキーに睡眠薬を混ぜられ、気がついてみると


数時間後、男性が目を覚ました時には部屋に女性はいませんでした。

うろ覚えの記憶をたどってみると、女性と飲みはじめてから、しばらくして途中でトイレに立って、その後も女性に勧められるまま飲んでいたのですが

急に強い眠気に襲われ、ベッドに行く暇もなくソファに座ったまま眠ってしまったのです。

ここまで聴いたところで私はすべて事情が分かりました。急に眠たくなったのは、トイレに行った隙にコールガールがお酒の中に睡眠薬を混ぜたのです。

前回のケースとまったく同じです。

男性は目覚めた後、何気なく部屋を見渡しました。

すると閉まっていたはずのワードローブのドアが開いており、中から半開きのスーツケースがはみ出していました。

不思議に思って近づいて見てみると、スーツケースの中はぐちゃぐちゃになっており、誰かにかき回されたようでした。

コールガールは財布とカメラを盗んで去っていた


さらに中を調べてみると、入れていたお金やトラベラーズチェックの入った財布、パスポート、それに高級カメラがありません。

ここへきて男性は初めて気が付きました。あの女が盗んだのだと。

言うまでもありません。部屋に入ったコールガールは男性がトイレに立った隙にウィスキーに睡眠薬を入れ、男性を眠らせた後、それらを盗んで逃げたのです。

被害額は財布の中身とカメラだけで4000ドル近くにのぼります。

盗まれたもののうちパスポートについては領事館に再発行を手配してあげました。

残りについては警察署へ被害届を出すしかありませんでした。

ポリスの話ではNYにはコールガールが数千人もいて、犯人を捜すのはまず困難ということでした。

被害に遭った男性はすっかり肩を落とし、他のツアー客とは離れて早めに日本に帰っていきました。









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