2021年2月1日月曜日

良いエッセイ、悪いエッセイ


有名作家のエッセイ集なのにつまらない作品がいっぱい、なぜ?
 

毎日のように作家が書いたエッセイを読んでいます。いや正確には、良いエッセイ作品とそれを書いた作家を探し続けている。と言ったほうがベターかもしれません。 

さらには 

・悪い作品の多いエッセイ群の中から良いエッセイを選んでいる

・玉石混交のエッセイ作品から玉と石を見分けている

・良いエッセイを書く作家を探してる 

などというふうにも言えます。

最近の読書傾向がこんなふうになってしまったのは、今の世の中には悪い(つまらない)エッセイがあまりにも多いせいです。

そうなのです。いま世に出ているエッセイは例え名の通った大手出版社が一流と言われる作家を使って出版した作品集でも、決して良い作品が掲載されているとは言えないのです。

出版社も作者も一流なのに、肝心の中身であるエッセイは読むに値しない駄作がやたら多いのです。

それ故に出版社と作者の名前だけを信じて素直に読んでいるわけにはいかないのです。これが良い作品を探し求めてひたすらエッセイ集を読み続ける理由なのです。 

悪いエッセイに出会うと「ウーン」とため息が出て「何故なのだ?」と考え込んでしまう

前述のように作家のエッセイ集を読んでいて、期待とは裏腹に内容が悪くてつまらない作品に出会うことはよくあります。

こう書けば、良い作品が多く悪い作品が少ないようにも聴こえますが、実際は逆で良い作品がたまにしか無いのです。

それを示す一つの例をご紹介します。光村書店という出版社が「ベストエッセイ」と名付けたエッセイ集を毎年1冊づつ出しています。

その年の年号をつけて、「ベストエッセイ2019」とか「ベストエッセイ2020」というふうなタイトルをつけています。

名前の通りに理解すれば、その年に出たよりすぐりのエッセイ集成ということに 

日本文藝家協会編

編集委員:角田光代、林真理子、藤沢周、町田康、三浦しをん

これだと読者としては「いったいどれほど素晴らしい作品に出会えるだろうか」と、読む前から期待でゾクゾクするに違いありません。

この本には各巻とも約80編のエッセイ作品が載っています。ということは作者も80名余ということになります。

要は80名の有名作家による名エッセイの集大成であるはずなのです。

で、読んだ結果はというと、これが大変な看板倒れで、80編のうち「いいな」と合格点がつけられるのは10編程度しか無く残り70編のうち、「まあまあ」の評価がが20編程度。

では残り50編がどうなのかといえば、これらすべてが「どうでもいい」ようなことを書いているつまらない作品だったのです。

この一冊に限ったことではありません。この2年間ぐらいの間に2013年~2019年までの合計7冊を読みましたが、いずれも大差はなく、同じようなレベルの内容だったのです。

 

毎日エッセイを読み続け良い作品との出会いを待っている

エッセイをよく読むのはエッセイが好きだからです。もちろん読む以上は良い作品ばかりであってほしいと願っています。

でもその願いがいつも叶うとは限りません。いやこう言うより「良い作品よりむしろ悪い作品に出会って失望するほうが多い」と言ったほうが適当かもしれません。

上の「ベストエッセイ2019」の件でも、それがよく御理解いただけるのではないか、と思います。 

作家の名前だけではエッセイの善し悪しはわからない

良いエッセイを読みたいのなら良い作家の作品を読めばいいではないか、という声がどこかから聞こえてコそうですが、

そんなふうに言う人は、たぶん良い作家なら良いエッセイを書くに違いない、と思っているのです。

でもそれは大間違いです。そう思って一流作家ばかり選んで読んだとしても、悪い作品に出会う確率は一向に減らないのです。その理由について書いていきます。

 

一流作家が悪い(つまらない)エッセイを書く理由はこの5つ 

・いつも締め切りギリギリにならないと書かない

作家に作品執筆の依頼をした出版社などのクライアントは、作品の完成をいつまでも待ってくれるわけではなく締切日を設定しているのが普通です。

もちろん出版社だけの都合でなく、作家が余裕を持って執筆に当たれる余裕を持った設定になっているはずです。

ところが作家というのは往々にして横着な人が多く、つい怠惰な気持ちに負けてしまい、時間に余裕があってもなかなか早めに仕事につかないのです。

そして気がついてみれば締め切りギリギリになっていて、あわてて執筆に取りかかるのです。そのため時間不足が生じて中途半端な作品にお終わってしまうのです。 

・エッセイのネタ収集努力を怠っている

ネタの良い寿司が美味しいように、読者が満足する優れたエッセイを書くためにはネタになるテーマ選びが大切です。

とはいえ良いテーマがどこにでも転がっているわけではありません。努力して見つけないといけないのです。

作家たる者、日頃から観察眼を駆使してエッセイのための良いテーマ探しに励まないといけないのです。

それを怠るとネタ切れに陥り、つい間に合せのテーマを使ってしまうため、結果としてはつまらないエッセイになってしまい読者の失望を買うのです。 

・適当なテーマで書くため内容が伴わない

エッセイのテーマが見つからず、つい適当な題材を使って書くと、往々にして読者を満足させる良い作品ができません。

間に合わせのテーマだと、思慮不足から理屈や辻褄が合わなかったりすることが多いのです。

これを今流の言葉で言えばエビデンスが十分でないのです。

その結果説得力の乏しいい内容の薄いものになり、読者の支持を得られないのです。 

・やっつけ仕事を自覚していない

やっつけ仕事とは急場の用に間に合わせるために急いでする仕事のことを言います。ではその結果どうかというと、その場限りの仕事。いい加減な仕事、雑な仕事などと評価され、決して良い仕事とは認められないのです。もちろん作家はやっつけ仕事が良くない事は知っています。でも〆切に迫られて時間がないときや、良いテーマが見つからないときは、知らず識らずのうちにこれに手を染めてしまうのです。 

・仕事を引き受け過ぎているい

言うまでもありませんが作家は一人でする仕事です。人を雇って代わりに書いてもらうわけには行きません。したがって仕事の量にはおのずと制限がかかります。ということは注文を受ける量もそれに見合ったものでなければいけまえん。ところが時としてこれを忘れて原稿の依頼があるままどんどん注文を受けてしまいます。その結果、受けたものは仕方ないと、注文を消化するため質を気にせずどんどん書き進めます。その結果粗製乱造になり、つまらない作品ばかりが出来上がるという構図になるのです。

 

作家のエッセイ集・価格は同程度なのにクオリティには天と地ほど差 

最近読んだ2冊のエッセイ集があります。作者は一方がH.Mさん。もう一方がA.Sさんで両方とも有名なベテラン女性作家です。

出版社は文藝春秋と中央公論新社で、作品は両社の発行する週刊誌と月刊誌にシリーズで掲載されたエッセイがをにまとめたものです。

お二人の作家とも過去にはベストセラー作品を出した実力は作家ですから読む前から期待していました。ちなみに2冊の本の価格は1300円と1200円で同程度です。

で、結果はというと、満足したのはASさんの方だけで、HMさんの作品には期待を大きく裏切られました。

はっきり言えば2作品にはクオリティの点で天と地ほどの差があったのです。要するにHMさんの方は、悪い(つまらない)作品だったのです。

 

良いエッセイ、悪いエッセイの最後に

これまで書いてきたことを読んだ方には、わたしがまるで悪いエッセイしか読んでいないように思われるかもしれません。でもけっしてそんなことでもなく、けっこう良い作品も読んでいるのです。それを証明するために、最後に最近読んだ5作品についての評価表を付しておくことにします。これにはとびきり優れたエッセイ集2冊が含まれています。

 

作家

作品

評価

五木寛之

エッセイ集「生きることは面白い」

林真理子

エッセイ集「マリコ炎上」

小川洋子

エッセイ集「妄想気分」

藤沢周平

帰省・未刊行エッセイ集

阿川佐和子

エッセイ集「老人初心者の覚悟」

吉本ばなな

エッセイ集「小さな幸せ46コ」

4段階評価  ◎、○、△、☓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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