”末は博士か大臣か” は遠い過去のこと
かつては”末は博士か大臣か” などと言われて、世間では非常にもてはやされてきた博士過程を終了した学士ですが、今ではその数が非常の増えたせいか、その価値は随分下がっているようです。
実際のところ就職先すら見つからないほど需要がさっぱりなく、その人気は急降下しているのが現状なのです。
それをよく示すように、最近では非常勤講師というような、フリーターに近い身分の人さえ珍しくないのです。
でもそれでもまだましな方でしょう。信じられないようなことですが、大学院を終了した後の進路がまったく不明の人が少なくないのです。
その中には消息がまったく不明の人や、絶望して自らの命を絶った人さえいるほどなのです。
これではいったい何のために長期間の勉学に耐え、苦労を重ねて博士の資格を取ったのか分かりません。
でも目を少し転じてみますと、いまの世の中、博士に限らず仕事がないのは”士業”と呼ばれる資格を持った人全般に通じることなのではないのでしょうか。
最近では弁護士にしても、公認会計士にしても、なりたての新人にはなかなか仕事が回ってこないと聞きます。
次にご紹介する記事は、最近の博士の事情を詳しく紹介しているブログです。実情がよく書かれていますので、ここで引用させていただくことにしました。
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こんなに多い行方不明の博士
大学院博士課程を修了しても定職に就けない人間が増えています。だがフリーター(非常勤講師)をしているなど,行方が知れているケースは,まだマシなのではないでしょうか。
もっと悲惨なのは,消息不明になったり,絶望のあまり自殺に走ったりするケースです。
2011年度の文科省『学校基本調査』によると,同年3月の博士課程修了者15,893人(単位取得退学者含む)のうち,「進路不詳・死亡」というカテゴリーに該当するのは1,512人となっています。
これは調査時点の5月1日までに死亡が確認された者か,その時点になっても進路(行方)が把握できていない者のことです。
こうした死亡・行方不明者の比率は,1,512/15,893=9.5%となります。およそ10人に1人です。
2011年3月修了者の死亡・行方不明率は,大学は2.5%,大学院修士課程は2.8%,大学院博士課程は9.5%,です。
博士課程になると,比率が急増します。博士課程修了者の死亡・行方不明者1,512人のうち,1.0%の15人が自殺者であると仮定すると,自殺率は,15/15,893=94.4人となります(10万人あたり)。人口全体の自殺率(≒25人)の3倍以上です。
予想されることですが,博士課程修了者の死亡・行方不明者は,年々増えてきています。
1990年では,死亡・行方不明者は611人でした。以降,その数はどんどん増え,2011年の1,512人に至っています。
この期間中に輩(排)出された死亡・行方不明者の数を累積すると,26,143人となります。今後,毎年1,500人の死亡・行方不明者が出ると仮定すると,2030年時点における累積総数は約5万5千人に達します。
この5万5千人の博士たちが,社会にとっての危険因子に転化する可能性は否定できないところです。
ところで,死亡・行方不明者の絶対数は増えていますが,修了者に占める比率は以前と大して変わらないようです。博士課程に行ったら,10分の1(1,000分の1)の確率で行方不明者(自殺者)になるという構造は,前からのものだったのですね。
なお,博士課程修了者の死亡・行方不明者出現率は,大学院の設置主体や専攻によって異なります。設置主体別と専攻別の数字を出してみました。1990年と2011年のものを比較してみます。
まず上段をみると,両年次とも,国<公<私という構造になっています。この20年間で,国公私の差が広がっていることも注目されます。国立の率は下がっていますが,公立と私立のそれは上がっているのです。
下段に目を移すと,2011年では,社会科学系,人文科学系,および芸術系では,死亡・行方不明率は20%を超えています。これらの専攻の博士課程に進んだ者の5人に1人が,悲惨な末路をたどることが知られます。
1990年との違いに注目すると,死亡・行方不明者出現率が上がっている専攻もあれば,その逆の専攻もあります。
理学,農学,工学といった理系の博士課程では,率が軒並み下がっています。文科省のポスドク拡充計画により,とりあえずの「腰かけ」ポストが増やされたためでしょうか。
私は,教育系の博士課程を出ましたが,教育系の修了者の死亡・行方不明率は17.4%です(2011年)。およそ6人に1人。その仲間入りはしたくないものです。
母校からの進路状況調査には,きちんと回答しようと思います。今年もそろそろくるだろうな。
ブログ「データえっせい」より 投稿者 舞田敏彦 2011年10月26日
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