ショパンが生まれたのは1810年で、同じ年の生まれには「トロイメライ」で有名なシューマンがいる。
1849年までの39年間の短い生涯を通して、数々のピアノの名曲を残してはいるが、その名曲と呼ばれる曲の中には聞き手をなんとなく不可解な気分にさせる旋律の不安定な曲が数多くある。
途中までうっとりと聞いていた美しいメロディが突然旋律を乱し、まるで同じ曲とは思えないほどの変化を来たし、その音調に首尾一貫性を欠いているため聞き手に失望を与えることが多いのもこの作曲家の大きな特徴である。
例えば数少ないピアノ協奏曲の中の、その「第一番」であるが、出だしからしばらくの間はこれほど美しい旋律の曲ががかつてあっただろうか、と思わせるほど実にすばらしいものなのだが、それがその後突如としてそれまでとは関連性が乏しい別種の旋律へと変わっていき「最初の美しさ、すばらしさはいったいどこへ行ってしまったのか」と思わせるほどのまったく異質の、言わば魅力の乏しいメロディに変わっていくのである。
聞き手としては「この突然の変化はいったいどうしたものであろうか」と、とまどってしまうのである。
また、ファンの間でもっとも人気のある「ノクターン」にしても、安心して聞けるのは2番をはじめ、5番、8番、9番ぐらいで、その他の曲は途中まで良くても、たいていは中程以降で突如旋律の「不安定さ」が出てきて、最後まで安心して聞き続けることができないのである。
こうしたことは、ほとんどの曲を安心して最後まで聞くことのできるモーツアルトなどとは大違いで、それがショパン人気がもうひとつ伸びない大きな原因にもなっているのではないだろうか。
でも、一部のファンの間では「その不安定さこそがショパンの曲の最大の特徴で、また大きな魅力でもあるのだ」などという意見もあるが、多分それは自分でピアノを弾いたるする人たちであり、難しい曲の流れで技術を練磨することができるプロの言い分なのではなかろうか。
聞くことを本分とするアマチュアのクラシック音楽ファンにとって大切なのは、なんと言っても安定した旋律によるぶれのない曲の流れではないだろうか。
とはいうものの、このショパンにも安心して聞ける安定した曲も数多くある。
例えば先ほども触れた「ノクターン2番,5番,8番,9番」や「雨だれ」「別れの曲」「スケルツォ第一番」などなど、私の好きな曲も多いのではあるが・・・。
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