それは8月24日の夜だった
まさかこんなに急に秋の虫が鳴き始めるとは思ってもみなかった。なぜなら前日まで20日間近くも35度以上の猛暑日が続いていて、それに伴って寝苦しい熱帯夜がずっと続いていたからだ。
それがたった一夜後の次の日には一転して涼しくなり、それまでの熱い夜がピタリと止まった。
すると”待ってました”とばかり、まるでそれにあわせたかのように秋の虫が一斉に鳴き始めたのである。
これはまったく思いがけないことであった。
虫が鳴き始めたのは暗くなって間もない8時ごろである。
リーン、リーンと響く思いがけない音に、”虫が鳴いている”とは思ったものの、「あれってひよっとして秋の虫?」と疑ってかかかるほど不思議な思いだった。
それもそうだろう、前の日まではうだるような熱帯夜で、わずか一夜明けただけの次の夜の出来事とはとうてい思えなかったからである。
でも何度聞いても、紛れなく毎年この時期に聞く秋の虫の音に違いなかった。
それは昼間のセミの鳴き声とは対照的な、随分涼しげな音であった。
しかし虫は正直だ。もしかして熱帯夜の昨夜までは、今か今かと鳴き始めるタイミングを測っていたのだろうか。
でもあれだけ暑さは続けば、8月の末とはいえ、なかなか出る幕がなかったのだろう。
それが1日たっただけで一転して涼風が吹いてきて、ここぞとばかり鳴き声を発し始めたのであろうか。
しかしいつ聞いても秋の虫の音色は良いものだ。これこそ秋の訪れをはっきり知らせてくれるものではないか。
でもまだ8月は数日残っている。また熱さがぶり返して鳴くのを止めるかもしれない。
そう思って翌日が訪れるのはを心配したが、次の日曜日の夜も、その次の月曜日の夜も、前の日より長い時間鳴いていた。
これだと間もなく本格的な秋の訪れがあることを期待しても良いのではないだろうか。
とにかく今年の猛暑にはまいってしまった。7月生まれの私としては、どちらかといえば夏は嫌いな方ではないのだが、今年だけはそうとも言えない。
いま夏と冬どちらが好きですか?と問われれば、これまでと違って「冬」と答えるかもしれない。
そうならないためにも、どうか秋の虫が、明日もあさっても鳴いてくれますように。
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